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「けもの道をゆく2016」<後編>

自由大学クリエイティブチーム座談会<後編>

「けもの道をゆく」座談会前編では、ポートランドと北欧、そして自由大学が大切にしている共通点についてそれぞれが語りました。ひきつづき後編では今年の各自の取り組みと、来年の展望へ話題が移ります。

 

チームとしての成長があった一年。「はじめの一歩を応援するだけでなく、もっと社会性のある講義を」

けもの道をゆく

岡島
全体としての話は、ポートランドキャンプとメルマガを頻回にしたことをきっかけにまとまりが出てきたことですね。岩井くんは参加できなかったけれど、他のみんなで一緒にポートランドに行けたことは大きかったですね。特にビールの講義を立ち上げたり、大智くん(佐藤)は刺激を受けて成長したんだなと思いました。

岩井
一緒にいる時間もすごく長くなった。

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表参道らしさや學びのコミュニティーづくりをやっていきます。

岡島
定期的にやろうとしたメディア会議は定着しなかったけれど(笑)、メルマガの編集会議は定着してきましたね。みんながそれぞれの考えをアウトプットすることによって、チーム力が高まることを実感した一年でした。

岩井
「会わないと合わなくなる」って言いますよね。顔を合わせないと伝わらない。リアルに会うのは大事だなと実感しました。

岡島
今年は新講義を16つくったね。開講延期になったものを入れるともっとあるけど。LGBTの講義「多様な愛を学ぼう」はチャレンジングだったし、今年は特に毎月開催するレクチャープランニングコンテスト出場者のサポートや講義化に向けてのフォローに力を入れました。池尻のIIDを飛び出したけれど「表参道らしい講義を作れていない」という反省があったんですよね。自己表現からもう一歩先に進めたかった。個人が社会に対して何ができるかを追求するような、自由大学の社会的貢献度を上げたいと思って動きました。表参道らしさっていうのは、「都市×◎◎」みたいなことかな。「ファーマーズマーケットをつくろう」とか「実践!アーバンパーマカルチャー」「未来を耕すダブルローカルライフ」などは、そういう意味で次のアクションに踏み出した感じがしました。自己実現しながら社会にブリッジをかけるようなものになったと思っています。

岩井
講義を企画するときに、自分たちがやる意味を考えなくてはと思っていました。LGBTは、各種団体ががんばっているけれど、それを敢えて自由大学がやることの意味ってなんだろうなとかね。

花村
ここは、いろんな立場の人がフラットに集えたり、語り合える場だから。

岡島
本当にいろんなバックグラウンドの人がいるから、LGBTも一つの人の属性にすぎず、違いを認め合って尊重できる空気がもっと脹らめばいいと思うんだけどね。大智くんは今年何を頑張りましたか、「僕らのビール学」?

佐藤
ビールの講義もがんばりましたが、「アーバンパーマカルチャー」は今まで座学だけだったのが、みどり荘2の屋上で野菜を栽培したりする実践に展開しました。僕は実家の畑で育ったものを食べて育ったので、食との関係が密接だったけれど、食と生活がかい離している都会でも、それが身近になれば面白いんじゃないかと思ってやっていました。

新講義「ファーマーズマーケットをつくろう」ではメディアサーフと協力して、「農と都市生活がもっと近くなるには?」とか、都内でも増えているファーマーズマーケットの魅力の本質、これからのあり方を集まった受講生と都市を考えていきたいと思って開講しました。

やってみると、受講生からお母さん目線で意見が上がってきて、運営メンバーが男性で、男性的な志向が強かったので、それは大事だなと。都会では、電車の中など子どもが居づらい環境がありがちですけど、自分たちの提供している場もママ目線がなかったことに気づきました。普段は別の仕事をしているのに、ファーマーズマーケットについて一緒に考えたいという人が集まったことが価値だったと思います。

僕が担当したのは大人数の講義が多く、20人超の人たちを相手にする機会が何回かあって、運営としてはその人たちを活性化するのがエネルギーを使いました。大変だけど楽しかった。対話と観察、どうしたらその人が生きるかを考えること。やはり僕らがやっていることって教育なんですよね。

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コミュニティーは時と場合で変化する。だから対話と観察が大事です。

岡島
エデュケーションの語義は「引き出すこと」だものね。その人の特性をどうやって引き出そうかと試行錯誤するのはクリエイティブな行為だと思う。実践するとなると忍耐強くならないといけないから大変だけど、その人に本来備わっている善さを伸ばしていけば良い市民となり、国家もよくなるはずだ、とギリシャの哲人は言っている。

増田
First Wednesday は、やって良かったと思います。興味はあっても講義に来るまでいかない人たちのために敷居が低い入口を作れたのがよかった。最近の私の個人的なテーマは「いい女になること」なのですが、メルマガで連載をもったのは大きかったですね。大変ですが自分を表現するっていうのは大事だなと気づけました。自分がやりたいことや得意なこと何か、少しずつ見えてきました。人の話を聞いたり、誰かのいいことを引き出して、他の人に伝えるとか。連載「Lady Study Go!」ではステキな女性にインタビューしているんですが、参考になります。これからも自分を磨き、個を立てようとがんばっています。無理はしない、背伸びしない、等身大で知りたいことを表現して、誰かの役に立てればいいな。

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無理はしないで、誰かのためになることを探します。

岡島
さきちゃん(増田)にはあの手この手で仕掛けてます。新宿の2丁目連れていって置き去りにするとか、荒療治も(笑)写真投稿を任せたり、First Wednesday の担当とか、自信が付いたら嬉しいなと思っています。等身大は大事だけれど、外から刺激を与える役割も必要なんです。見ていて外からちょっと引っ張り上げるというか、ちょっと無理して見える世界もあるよ、と思うから。えみちゃん(花村)はどう?

花村
この一年は着物とか茶道など長年関わってきた伝統的なことの新しい形を楽しんでみたいと思っていました。着物好きなんですけど、着物って「なんとか流」とか「なんとか派」とかの師匠筋があって、ルールにのっとらないと白い眼でみられる。そういうルールから自由になれないかと思って、TOKYO着物学では、しきたりの起源を調べてみました。風習とか季節とかの理由があって決まりがある、ルールは提言だったんだなと気づくことがあって、そうなると崩し方もわかってきたり、逆にしきたりにのっとったほうがやりやすいことがあったり、ルールとの距離の取り方がわかりました。

古い世界に向き合ってみて思うことは、ぶち壊すよりも、新しい価値観や、かっこいいスタイルを提示して、それいいねと振りかえってもらうことで変わるんだなと、それが自由大学らしい気がします。来年もそんな風にちょっとした自分の問題意識から、新しいところに飛ばす講義をどんどんつくりたい。疑問に思ったことを取り上げて、本質がなんなのかを掘り進めたい、改善するには何があればいいのか、じっくり考えてみたら面白そうだと思います。

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新しい価値観をもっと提示していきたいです。

岩井
僕の場合、今年は北欧学ですね。毎期いろんなテーマを決めてやっていますが、北欧関係のゲストを呼んで、デザインやアートなど多岐に渡りすぎて、受講生もいろんな人がいすぎてややまとまりがない。もっとうまくいく方法はないかと考えて、コミュニティで起業していて世界を広げているゲストを呼んでみたら、スモールビジネスに視点が定まった人が集まりました。卒業生たちが同行して北欧に行ったのもよかったと思います。

今後は北欧の学校とコラボして、今僕が感じているコミュニティのあり方を現地に出かけて五感で感じてもらえるような講義が持てるといいなと。北欧学の卒業生をノルディックスタイルマーケットのスタッフとして動いてもらうことも考えています。仕事になる一歩手前、ボランティアよりもレベルが高い感じで出店者のみなさんが集うパーティの企画をやってもらったり。情報提供だけじゃなくて、受講生がその後に関われるマーケットの構築も考えていきたい。

マガジンも好調ですし、いろいろ忙しくさせてもらっているけれど、なんでもひと山越えておしまいじゃない、ひとつ越えると次にはさらに大きい山があって、安定期がない。フリーランスになったら終わりなく山が続いている感じがしている。業務量とかの大変さで比較すると大変だけど、やりがいはあるし、環境には恵まれていると思います。マーケットは評価してくれますから、いい仕事をすると。

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北欧の学校とコラボも?

佐藤
もっと面白い人が集まるといいですね。興味とか関心が際立っている受講生が集まるような、そういう人達が集合して、クリエイティブチームと化学変化がおこるといいな。

花村
海外からも視察がいらしたり、台湾で(自由大学創立者の)黒崎さんが講演をしたり、海外にキャンパスが飛び出していく流れもあるので、日本在住の外国人向けの講義も作りたいね。

岡島
自分の軸を探すような講義は自由大学に求められていることの一つだけれど、プロのクリエーターも惹きつけるような講義も作っていきたい。はじめの一歩を応援する自由大学だけではなく、もっと社会性のある講義があってもいいと思う。運営スポンサーにしても、これからは講義単体で、いいパートナーシップがもてれば、企業や行政とも仕事ができたらいいですね。今までにない新しい展開がおこり、来年はみんなで新しい景色が見れるといいなと思っています。

題字:花村えみ 撮影、取材、構成:ORDINARY



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