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自由大学メールマガジン Vol.566|心のブレーキはいつ外れるのか

自由大学 学長 深井次郎(自分の本をつくる方法教授)

「変わりたいのに、変われない」

このジレンマから簡単に抜けだせたら、何も苦労しないんです。よし、健康のために運動しようと思っても、面倒だな、疲れるのは嫌だな。現状にとどまるメリットに負けて、なかなか前に進めないんですよね。

やる気を出してアクセルを踏んでも、同時にブレーキも強く踏んでいるので進まない。ウンウンうなっているだけで、心が疲れてしまって現状維持。

出版でもそうですが、起業や自給自足の講義など、人生を変える系の講義では、この力学が働くことがあります。コンフォートゾーンから抜け出せるかで、成果が決まるんですね。アクセルの踏みかたばかり教えるのではなく、まずはブレーキをかけないようにする必要があります。

ベストセラー本がなぜ売れたのかを研究すると、読者のブレーキを外すのが上手なんですね。

『可愛いままで年収1000万円』という本があります。収入を上げようと思えば、残業もいとわず身を粉にしてボロボロにならないといけない。忙しいのは嫌だな。あなたにも、そんな心理的ブレーキがありませんか。

もっと稼ぎたいけど、忙しいのは嫌。この綱引きがあるから、多くの人は現状を変えられないんです。変えたいと言いながら、現状にそれを上回るメリットがあるから現状を維持している。

そういう読者のブレーキを理解して、新しい提案ができたから、受け入れられたんです。

「実は、プライベートを捨てずに可愛いままで稼げる方法だってあるんですよ」

人生を変える。そう意気込んで「勇気」「モチベーション」「忍耐力」を高めているけど、重要なのは自分の中にある心のブレーキの存在を理解すること。何が自分を止めているのか。「パートナーが欲しい」と言いながら、今の自由な生活も失いたくない。失うものを考えると、腰が重くなるんですね。

「パートナー=不自由な生活」という思い込みが、自分にはあることに気づきます。もしかしたら、パートナーがいることでできることの幅が広がり、むしろ自由度が上がるかもしれません。デメリットだと思っているものを、本当にデメリットなのか見つめて、溶かしてあげるプロセスが必要なんです。

面白い実験があって、アメリカで警察官グループと主婦グループに分かれて、射的の勝負をした話があるんです。

警察官は、日頃から拳銃を扱う訓練を受けています。同時に、拳銃の危険さも身にしみている。たくさんの知識があるので、失敗した時のリスクも考えてしまうんです。

・もし犯人の急所に当たってしまったら、命を奪うことになる

・外した流れ弾で被害が出たらいけないので、周囲を確認

・正当防衛になるように、撃ってもいい状況かギリギリまで見極める

それらに加えて、今回はゲームとはいえ「プロとして外せない。一般の主婦になんて負けたら面目まるつぶれ」というリスクもある。

心のブレーキがたくさん働いて、なんと警察官グループが負けてしまったんです。主婦たちは、基本的な銃の使い方だけを習って、素直に動く的を狙って撃った。

「きゃー、当たったー、すごーい」

ハイタッチして喜び合っている。シンプルに、的しか見てないんですね。的に向かって撃つ、それだけ。周囲のことは見えていない。余計なブレーキがないぶん、スッと進むのです。

やりたいことを次々に叶えている人たちを観察していると、この主婦感覚なんですね。それ私もやりたい→どうやればいいの?→わかった、やってみる→できた! それだけ。シンプルなんです。

メンタルお化けというか、多動力というか、ブレーキなしの無双モードになっている起業家っていますよね。彼らにインタビューしてて感じる共通点は、死にかけた体験。病気だったり事故だったりもありますし、失敗続きのどん底でもう人生を自ら閉じてしまおうとギリギリの淵に立った人。破産し一家離散して引きこもり、精神的な死を経験した人もいます。

こういった臨死体験が、ブレーキを外すんですね。失敗したら恥ずかしいとか、お金や信用を失ったらとか、批判されたら、誰かを悲しませたらとか、本当にどうでもいい。どう転んだって今よりはマシだと悟って、「行動の鬼」と化すのです。

どんなにブレーキが強い人でも、どん底まで落ちると悟ります。居心地の良い時には変われないのに、どん底でこそイノベーションが起こる理由のひとつはこれです。

もうタイタニックが沈むとなったら、面倒だとか海が冷たいとか可愛いままでいたいとか、ブレーキは外れるんです。「ばかやろう、死ぬぞ」と。火事場の馬鹿力が出る。

「こんな現状、もういやだ! 二度とくり返してなるものか」

感情が爆発するくらいの底を味わえば、強いブレーキも外れます。

バスケ界のレジェンド、コービー・ブライアントも言っています。

「海に沈み、息ができない。水面からなんとしても顔を出したい。常時そのくらい渇望しないとNBA選手にはなれないよ」

もちろん主婦感覚で無邪気にブレーキなしで夢を叶える人もいるし、ブレーキが強めの人はブレーキを外す技術を身につけること。その技術がない場合、一度どん底まで落ちないと変われない、ということです。

なんて今日はハードな話をしてきましたが、できるならどん底は避けたいのが人情ですよね。ですから、やりたいことを思いついたら、5秒以内に小さな行動をせよ。「5秒ルール」を唱えているセルフマネジメントの専門家もいます。

「ピンときたらゴー」

自由大学でも、そう勧めてます。余計なブレーキがかかる前に、一歩踏み出してしまう。車と同じで、ブレーキを踏まないだけでいい。勝手に進むのが人間なのです。

 

TEXT:自由大学 学長  深井次郎 (自分の本をつくる方法教授)

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