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自由大学メールマガジン Vol.545|コラム「探しものは、けもの道の先に」

自由大学 学長 深井次郎 (自分の本をつくる方法教授)

深井次郎コラム

探しものは、けもの道の先に
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「継続は力なり」

何かを成し遂げたい人にとって、継続なしに成功がままならないことは百も承知です。その点で芸術家の大竹伸朗さんは、もっと力を抜くように薦めます。無理に続けようとしたって、無理なんですから。

「続いてしまうことを続けるだけでいいんだよ」

新年の誓いのように発奮するのではなく、何も決めない。未来に目を向けるのではなく、逆に今まで自然と続けてきてしまっていること、なんとなく辞めないでいることを見つめるんです。意外と、そこに宝が眠っているかもしれません。

漫画やロック音楽など好きなものはたくさんあったけど、大竹さんがずっと続けてきたものは「雑誌などの切り抜き」でした。気に入った絵や写真、模様などを閉じたスクラップブックは70冊を超えます。絵描きになるために努力して集めはじめたわけではなく、なんとなく続けてきた。

何年か中断する期間があっても、ふと思いついたように再開して、気づいたらずっと続いていた。あなたにもそんな「続いてしまうもの」がありませんか? 自然体がその人の個性であり、その人らしさとして表出するんですね。

「Desire path = けもの道」という言葉を知っていますか? 建築やUXデザイン分野で使われる概念です。たとえば大学のキャンパスなど新しい施設をつくるときにどうするか。最初から道を舗装してつくりこまずに、1年くらい芝生にしておいて放置しておくんです。すると、自然に人々がよく歩くルートの芝が禿げてきて、けもの道になっていくでしょう。

最短距離を目指したり、登り坂を嫌って迂回したり、夏は日陰を歩いたり、とにかく人が無意識にたどった跡が浮き出てくる。けもの道の線が見えてきた頃合いで、はじめて正式な道として舗装したほうが、設計と現実のズレが起きないんですね。

最初から建築家が机上で設計しても、人々は勝手に近道したりして思ったルートを歩いてくれません。だったら、しばらく人々を自由に泳がせてから、後出しジャンケンでその動線を正式な道としたほうが合理的。お互いにストレスがありません。

人生にも「けもの道アプローチ」は有効です。先に夢や目標を定めて努力するのではなく、自由に動きたいように動いてみて結果として残ったものを自覚的に極めていく方法です。接客業は続かなかったけど、毎月30冊の読書は無理なく続いてるとか。だとしたら、発想を活かした仕事やコンテンツ制作に関わる仕事をしていこうかと意識してみる。「好き」や「得意」を伸ばそうとしても、続かないのでは生業になりませんから。

最初に道を設計する前に、真っさらな芝生で自由に歩ける期間が必要です。それが多くの人にとっては学生時代だったり、20代だったりするかもしれません。けもの道が浮かび上がる前に、急いで道を舗装すると、あとで苦しくなる。

周りからの期待もあるし、他者の欲望を模倣してしまうこともあるし、最初はとかく見た目重視の「かっこいい道」を設計しがちです。そういう引力をなるべく受けない状態で、自分だけのけもの道をつくる時間を確保したいものです。40代50代になっても、可能な限りニュートラルな無職期間を設けられるといいですね。今の自分の心体に合うけもの道が見えてくるはずです。

TEXT:自由大学 学長  深井次郎 (自分の本をつくる方法教授)

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