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「けもの道をゆく2016」<前編>

自由大学クリエイティブチーム座談会<前編>

「けもの道をゆく」座談会は、自由大学を運営するクリエイティブチームが、自分たちで道を切り拓いていこうという思いで毎年続けてきた年末恒例コンテンツです。今年も2016年のスローガン“READY STUDY GO”の旗の元、メンバーそれぞれが一年を振り返りました。

けもの道をゆく2016

座談会メンバー: 写真左から 岡島悦代 岩井謙介 花村えみ 佐藤大智 増田早希子

 

ポートランドと北欧、注目すべき共通点とは?

岡島
一年お疲れさまでした。キャンパスが表参道に移動して、都市テーマの講義が増えてきた気がします。また、今年はアジアからの視察も多く、シンガポールや台湾、中国でも関心をもって下さる方があり、東京のクールな観光スポットリストに入っているとか。国内の行政や企業からのアプローチも増えて、自由大学が内外から動向を注目されているという実感がありました。我々が参考にしているのは、ポートランドや北欧のあり方ですが、双方に共通するポイントってなんでしょう。

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クリエイティブチームの”個”を伸ばすことに取り組んだ一年でした。

増田
ポートランドのいいところって、普通に暮している市民が「街づくりを自分たちで」という気風があるところ。自由にいろんなやりたいことをやり、幸せを追求することを大事にしていて、気持ちに余裕があるからこそ、人にも親切ですよね。みんなが気分よくすごしていることでGood Vibesが表に出てる、伝わってくるんです。

花村
すごく人間らしく生きている。ある意味とても高度なんだけど、原始的でもある。

増田
何をするにしても、「幸せに生きるのがゴールだ」ということを忘れてない。

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秋ごろから始まったコラム「Lady Study Go」では自分らしくいきているヒトに話を聞いて触発されてました。

花村
例えば環境に良いアクションも、それはひとつのプロセスであってゴールじゃない。頭でっかちじゃないんですよね。

佐藤
無理している感がないからかな。

花村
無理してもサスティナブルじゃないからね。例えば、環境にいいから畑を作っているんじゃなくて、畑を作って作物を育てて、人が集えば楽しい時間をすごせるとか、おいしくて安全なものをシェアできるとか、そういう精神だから。

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ポートランドのクリエイティブキャンプも回を重ねる毎にチャレンジしました。今年は海外から日本を考えてみる新たな視点も得られました。

佐藤
サイドヤードファームとか、地元の人も菜園に協力して、それでナリワイも立てているシステムができている。レストランの店員も、フレンドリーでお仕事っぽくない。日本では仕事に就くって、ある種自分の人格を捨てるってことだから、それが違うんだね。

岩井
居心地のいいカフェをやりますって言っても、バイトは回転率を上げるのに注力して、隣の椅子に荷物を置かせない正義が発動したりするじゃない? 居心地が焦点なら荷物と回転率のことなんて考えないよね。それが悪いわけじゃないけど、コンセプトがずれちゃったまま、実際の現場運営とかい離してしまっていることが多いよね。

ポートランドは「それぞれが人間としてどうありたいのか」を追求しているけれど、北欧では政府が主導で、「みんなが幸せになるために、社会福祉を重視する」方針。方法論は違っているけど、周囲の人のことを考えている点では共通しているよね。自分の周りの半径5メートルの人たちを大切にするというか、身の回りにいてお互いの気持ちを確かめ合える範囲のコミュニティを大事にするんだよね。そういうことが大事だと考えているから、国税を使って高福祉のセーフティネットを成立させている。

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今年、会社員を辞めて北欧を中心に旅をしながら學んでいきました。

岡島
より個が確立しているから制度が成り立っているのね。

岩井
高福祉の制度はあるけど、誰も悪用しようとかしない。お互いにもたれかからず、高め合うような関係性を維持しているのが印象的です。

岡島
ポートランドにもそういう半径5メートルみたいなところを感じていました。

花村
一人勝ちしない、みんなで楽しむ、お互いを認めあう精神もあるよね、機会均等というか。

増田
家族も重視しているよね。勤務時間でもプライベートを優先する制度がある企業もあるし。

岡島
日本人って昆虫っぽいのかな?その人が特化している能力に最大限コミットしようとするから、家族よりもミッションを優先して極限まで全うしようとする。置かれた環境に特化した適応能力が高いゆえに自分を殺してしまいがち 自分は世界の中心じゃなくて、何かの部品として扱う、器用だからできちゃうし。

花村
そう、それに家族は自分の一部だと思いがち。家族は自分じゃない、それぞれが個なのに。

岡島
個が個として確立していない、人との距離感を上手にとることが難しいんだね。社会から自立した自分が明確にはなくて、組織に対して滅私奉公みたいなことになってしまう。それと、北欧もポートランドも冬が寒くて自然環境が厳しいのと、自然を楽しもうとするのも共通点ね。

岩井
積雪40センチとかしょっちゅうで、雪が降ると街の音が消えて、交通もマヒしちゃう、北国ですから。自然は厳しいけど、付き合い方を知っているというか。

岡島
自然との付き合い方が上手で、夏を楽しもうとする意欲とか、キャンプが盛んとか、映画屋外上映があったり、人生を謳歌している感じがいいなと思うんですよ。

花村
日本にも元々あった四季のお祭りとか、もっとフォーカスされるといいと思う。ハロウィンが流行るのを見て、たまたま本場に行くと、日本の状況は異常な気がしました。本場で本質に触れるのは大切ですよね。お祭りみたいなものも、本来は地域とか歴史に根差したものが盛んになれば、お祭りとして機能すると思う。

佐藤
僕は今年初めてポートランドに行ったんですけど、本やネットで知っていることも、行って見るとお店の雰囲気とか、店員さんとか、印象が違いました。何事も自分で体験しないとわからないなと思いました。町の人がどういう行動をしているんだろうとか資料ではわからないことですね。

岡島
資料ではわからない、国の匂いってあるもんね、空港降りた瞬間その国の匂いって違いますよね。

花村
動かなくてもメールでやりとりできちゃうからこそ、行くって価値があるよね。まさにスタディ・エクスペリエンスです。

 

ひとりひとりの個を確立するための学びとは

岡島
メルマガ発信など、みんなの考えがアウトプットされたり、話し合う機会が増えたことで、最近特にクリエイティブチームはお互いに高め合っている感があるんですよ。みんなが自由について真剣に考えているし、自分の経験と自由大学のこれからがどうリンクしているかということを考えている気がする。

岩井
会社を辞めて自由だねって言われるけど、独立した後の方が実は働いている時間がずっと長い、毎日がオーディションみたいな感じで、挑戦が続く。会社にいたときとは違うレベルにいますね。組織を代表しなくていいから、本音で仕事をしている分自由で楽しいけど、楽じゃない。

花村
そもそも、物事の本音と建て前をわけるという社会常識もくずれてきていますよね。みんなが嘘を見破る力が高まっているからこそ、本質的に必要なものが残り、そうじゃないものが淘汰されていく。これからは価値観が変わってくるから。世の中で取り沙汰される社会的な問題でも本当の問題はなんなのか考えようとか、人間らしく生きていくためにどうするか考えようというような講義が増えていくんじゃないかな。

岩井
世の中的にもメッキがはげているんじゃないかと思うので、本質はなんなのかを考える時代がきていると感じています。

花村
だんだん建前と本音が一致していって建前は通用しなくなっていく。より本質的で人間らしい生き方とか、経験から学んだ価値観が重要視されるようになると思うんです。本質っていうのは、生きている土地の特性とか歴史の文脈に向き合った生き方というか。ポートランドにあるような気風なんじゃないかと。

岡島
つまり、本質的な生き方は自分という個を確立して生きる事ですね。自分の系譜や由来、自分が生まれてきた環境や受けてきた影響に フォーカスして、自分がどういう人間かという理解に根差して行動すること。

佐藤
ニーズもあるみたいだし、これからの自由大学では、講義を受講してより人が主体的になるといこともやっていきたい。

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「學び」という熱の渦から生まれるコミュニティーを継続していくために試行錯誤をたくさんした気がします。

岡島
自分がもっている資質を社会に反映する方法を見つけるための学びを提供したいね。

増田
教育関係の人と話すと、日本は集団意識が強いから、子ども時代に学校で個人として何ができるかについて学ぶ機会が少ないということを聞きます。だったらここで構築できたらいいのかな。

岡島
これからは、メンバーそれぞれの資質が立っていて、個がしっかりしている集団に可能性が感じられる時代です。

岩井
個が立っていないと、変な集まりになってしまう。

岡島
制度を改革しても社会は変わらない。構成している個を変えなければ、社会は変わらないので、世の中の個の意識をあげたいと思っています。そのためにクリエイティブチームは、自分は何ができるのかを問い続ける。

花村
社会を変えるにはまず自分の意識を変えることですね。

後編に続く

題字:花村えみ 撮影、取材、構成:ORDINARY

 



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