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スモールスタートを積み重ね、世界が広がった

FLY_53|ナナエさん/グラフィックデザイナー

グラフィックデザイナーのナナエさんは、2013年に受講した「社内起業学」を皮切りに、自由大学で数々の講義を受け、自分の世界を広げてきました。現在は、個人活動としてZINEを作成したり、LINEスタンプの販売をはじめたりと、自分自身を表現するさまざまなことにチャレンジ中です。ナナエさんが思う自由大学の魅力を語っていただきました。


― 自由大学ではどの講義を受けられましたか

「社内起業学」をきっかけに、「東京・日帰り登山ライフ」「神社学」「自分の本をつくる方法」「今こそ知りたいイスラーム」「インドに学ぶスパイス学」……結構、たくさん受けていますね(笑)

1つめに受講した「社内起業学」が実践的なビジネス系の講義だったので、趣味に近い内容も受講してみたいと思い、次に「登山ライフ」を選びました。その講義で、山岳信仰を学び、神話などに興味が沸いてきたところで、登山ライフの教授である大内征さんのススメで「神社学」を受講しました。

 

― ナナエさんにとって、自由大学への入口となった「社内起業学」を受講したきっかけは?

6年ほど勤めていた会社を辞めて、転職をしたときのことです。デザイナーとして自分なりにスキルをつけ、キャリアを重ねてきたつもりだったのに、会社が変わっただけで通用しなくなりました。そのことがとてもショックで、それ以来ずっと「わたしにはどういう仕事ができるんだろう」「自分が社会に通用するためには何が必要なんだろう」と悩んでしまうようになりました。そのとき、友人から自由大学について教えてもらい、ホームページで「自分のいる環境を活かしてやりたいことを実現する」という言葉を見つけたんです。それが「社内起業学」の講義紹介でした。

 

― そこでさっそく受講を決めたのですね

いえいえ。「社会に通用しなかった」とまで悩んでいたときのことでしたので、ビジネスを実践的に学ぶ場に通う勇気が出ませんでした。それに人前で話すことが苦手なので、こんなわたしでもやっていけるのかなど躊躇してしまい、なかなか一歩を踏み出すことができなくて……。「受講をしよう」と決めることができたのは、教授の望月暢彦さんの動画を拝見したからです。ビジネス系の教授なのに、とってもやさしそう(笑)で、この方の講義なら「ビジネスの学びの場でも、怖くないにちがいない」と、ようやく受講を決断することができました。

 

― 実際の講義の雰囲気はいかがでしたか

まず、望月さんは動画の印象どおりのやさしい教授でした(笑)。講義はもちろん面白いのですが、ついついオドオドしてしまうわたしを決して否定せず「じゃあ、どうしたいかな」と導いてくださいました。講義の最終日には、自分の環境を活かしてやってみたいビジネスをプレゼンテーションするのですが、そこでもつい、声がうわずってしまうわたしを「深呼吸~」って励ましてくださいました(笑)。望月さんの「最初からすべてをやろうとするのではなく、スモールスタートが大事」という言葉が、とてもしっくりきて。わたしでも小さいことから始めたら、何か形になっていくのかもしれないと思えたんです。

 

― どんなビジネスをプレゼンテーションされたのですか

キャラクターが描かれたファンシー文具が子供の頃から好きで、デザイン会社に勤めていたこともあり、イラストと雑貨を絡めたビジネスを提案しました。望月さんからの講評で「ナナエさんのようなタイプの人ならZINEからはじめたらどうかな」と言われたことが頭に残っていたときに、ちょうど友人からも「ナナエちゃんはZINEが向いていると思う」と言われ、シンパシーを感じまして(笑)。ZINE、そうか本だ! と、「自分の本をつくる方法」を受講してみることにしました。

※ZINE(ジン)は、出版社や街の本屋とは関係なく個人がつくる自主制作物。テーマや体裁が自由で、クリエイターの発想によりさまざまな作品が生まれている。

 

― 実際にZINEを2冊発表されているそうですが、「自分の本をつくる方法」の受講がZINEをつくるきっかけですか。

「自分の本をつくる方法」でも、「社内起業学」のように、最終日には自分が考えた本の企画をプレゼンテーションするのですが、わたしはそこで「絵本をつくる」と宣言しました。この講義を通じ、わたしは、ストーリーを考えるよりも、絵で表現したいんだなと、あらためて自分の方向性の確認が出来ました。仕事で以前に、少女マンガの雑誌の付録を企画したことがあったのですが、その仕事はわたしにとって、とてもワクワクできるものでしたので、プレゼンをした絵本よりも、イラストやZINEで何か表現方法をするのが自分には合っているかなと思ったんです。「自分の本」の教授、深井次郎さんは、「それならここは」とZINEの専門店を教えてくださいました。


ナナエさんの1冊目のZINEは、切り抜いて工作することで、手紙などのコミュニケーションツールに変わる

― 講義を受ける以外にも、何かスモールスタートをされましたか

自分のイラストを公開するホームページを作成しました。次に、ZINEの専門店で開催されたワークショップに参加し、実践的にZINEをつくる方法を学びました。そのときの経緯は「自分の本」から生まれたWEBマガジンORDINARYにも掲載しています。そのZINEを、お声がけいただいて自由大学の文化祭で販売したときに、封筒やカードなどの紙雑貨をつくるZINEを買ってくれた小学生の子が、さっそくその場で雑貨づくりに挑戦してくれたのですが、ZINE自体が小さいものなので、切り抜くのがむずかしかったようでしたね。手に取ってくださる方の反応が見られると、また新しい発想につながります。

 

― チャレンジすると発見がありますね。そのほかの講義についてもお聞かせ下さい。最初は「不」を埋めるための自由大学でしたが、今はどうでしょうか。

自由大学で学ぶことは、世界を広げてくれます。たとえば、宗教によって世界でさまざまな問題が起きているときに受けたのが「今こそ知りたいイスラーム」の講義でした。戒律の厳しい宗教のイメージがあると思いますが、この講義で知ったイスラム教は、とてもおおらかで自由なものでした。最近では料理に興味が沸いてきたので「スパイス学」に通いました。

 

― 自由大学の学びを上手にライフスタイルに取り入れられていますね

そうですね。自由大学で学ぶことは「間違いがない」と信頼していますので。自分の世界を広げてくれる、面白い内容を学べる。そして、本当にいつも素晴らしい人たちとの出会いがあります。「日帰り登山」の教授の大内さんは人をつなげて、人を呼ぶ方だと思います。わたしのような内気な人間は、集団でいると壁の花になってしまう(笑)のですが、自然と前へと引っ張り出してくださって、人の輪をつないでくださるんです。

 

― これから先にやってみたいことはありますか

自分は、つくること以外できないし、好きなことしか続かないと思うんです。でも苦手なことに向き合うのはとても大切なんですよね。わたしにとっては「社内起業学」を受講したことが、それだったように思うのですが、苦手に向き合うことで得られるもの、学ぶことは本当に多いと実感しています。これからも自分が好きなことで、自分を表現できるものに少しずつ、挑戦していきたいです。

 

― 次のスモールスタートも応援しています。本日はどうもありがとうございました


 

受講した講義:「社内起業学」「東京・日帰り登山ライフ」「神社学」「自分の本をつくる方法」「今こそ知りたいイスラーム」「インドに学ぶスパイス学

取材と文: 川口裕子
写真と編集: ORDINARY



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