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他者と共創し豊かに生きていくには

FLY_ 76|『 共生のシャーマニズム学』教授SUGEEさん

自由大学『 共生のシャーマニズム学』教授のSUGEEさん

自由大学『共生のシャーマニズム学』教授のSUGEEさん。音楽や植物の栽培をおこないながら、自身もシャーマンとして活動されています。


自由大学との出会いを教えてください

2010年頃に、自由大学創設者の黒崎輝男さんと知り合ったのがはじまりです。同じく黒崎さんが立ち上げられたファーマーズマーケットで、僕はサボテンを売っていたんです。今は毎週末国連大学で開催されているファーマーズマーケットですが、当時は表参道のGYRE(ジャイル)の地下で開かれていて、5〜6店舗ほどのこぢんまりした規模でした。

黒崎さんとは同じ早稲田大学出身ということで親しくなり、2011年には自由大学で『旅学』を開講することになりました。紹介で講義化したわけではなく、レクチャープランニングコンテストに出て、票をもらって立ち上げる正攻法です。「旅するように生きる」をテーマに、ミステリーハンターの末吉里花さんや、著名な水中カメラマン中村征夫さんなどをゲスト講師に招いて講義をおこないました。

自由大学『 共生のシャーマニズム学』教授のSUGEEさん

 

どうして旅をテーマにしたのでしょうか?

アジア、カリブ、インド、アフリカなどを旅した経験があったことが大きいです。早稲田を出たあとは一橋大学大学院に通っていて、フランスの思想や文学研究の第一人者である鵜飼哲先生に師事し研究をしながら、世界各地を旅して現地の人と交流していました。僕の場合、バックパッカーのように旅すること、放浪することが目的ではありませんでした。伝統的な文化やコミュニティが残っている場所を訪ねる旅です。

1990年代後半のことで、インターネットはそれほど普及していませんし、情報も海外との連絡手段も限られています。当時キューバレストランで働いていて、ラテンのコミュニティと繋がりがあったので、その伝手で現地へ向かいました。西アフリカのマリにはグリオという世襲制のミュージシャンがいるのですが、彼らに会いに行ったんです。彼らはただの演奏家ではなく、司祭としての役割を担っています。そうやって海外のコミュニティに混じり、音楽を学んだり一緒に演奏したりしていました。


見えない世界、シャーマニズムに興味を持ち、探究しはじめたきっかけは?

旅の中で自然にシャーマンのコミュニティに導かれていきました。もともと伝統的でディープなものが好きだったので、西アフリカもキューバも祭礼を司るシャーマンに会いに行ったんですね。

 

現在はシャーマンとしてどんな活動をされていますか?

シャーマンとは、自分の内面深くにアクセスして癒しやメッセージを引き出し、引き出すだけでなくそれをコミュニティの仲間に芸能や言葉によって伝えられる人のこと。僕の場合は植物と音楽がその入り口であり、伝えるメソッドでもあります。植物と音楽を通して癒しや喜び、時にはメッセージを人とシェアしていく、それが僕の仕事です。


特別な能力のない私たちでも、内面にアクセスできるようになりますか?

そうですね、内面にアクセスするポイントは瞑想や祈り、人によってはウォーキングなどさまざまあって、その人に合ったものが必ずあると思ってます。伝えるメソッドは磨いていかなければいけませんが、これは毎日の生活で少しずつ習慣づける中から身につけていくものだと経験から感じてます。

自由大学『 共生のシャーマニズム学』教授のSUGEEさん


SUGEEさんは会社勤めの経験はありますか? これまでどんなお仕事をされてきたのでしょうか。

僕は一度も就職したことはありません。でも働くのが嫌というわけではなく、自分の好きなことで身を立てたいと思って生きてきました。

今は音楽活動や、サボテン栽培・販売、空間コーディネート、自由大学やアフリカの旅行会社主催の講座で教えたり。インディペンデントな働き方しかしたことがないですね。平日は植物の世話をしたり体を動かしたり、太鼓や歌のトレーニングをして過ごします。週末はライブを行っていましたが、昨年はコロナもあって今までとは違った毎日でした。


音楽活動はコロナにより大きく制限を受けた分野の一つだと思いますが、どんな1年でしたか?

リアルイベントや講義は実施できない状況でしたが、僕自身としてはそれほどネガティブな期間ではありませんでした。創作に時間をかけ、自分の内面を磨く機会をえることができたと思います。

それに、この時間が今年や来年の活動に活きてくるのではないかと考えているんです。体験したり人と触れ合ったり、アウトプットすることは重要ですが、自分が経験したものや感じたものを消化する時間も不可欠です。自分自身を耕す時間が必要だと思っていて。僕は植物を栽培していますが、人間も自分を植物のように育ていかなくてはならないんです。昨年は自分を育てる時間をしっかり取れたと思っています。


自由大学での講義『 共生のシャーマニズム学』もオンライン化のチャレンジをおこないました。オフラインとオンライン、両方の講義をされてみてどんな感想を持ちましたか?

5回連続の本科講義をオンライン化したもの、入門編として1回完結のものをおこないました。実際にやってみて感じたことは、オンラインは対面の授業に来る生徒より気持ちの強い方が多い、ということです。特に入門編から入り、本科講義に参加した方。参加するモチベーションがとても高いと感じます。その理由としては、コロナ禍の中で自由に活動できないこと、人と会えないことがあり、繋がりに飢えている部分もあるかと思います。

僕自身の学びとしては、対面は3次元的な繋がりを感じられるけれど、オンラインは精神的な繋がりをより強く意識しました。「遠くにいても繋がれるんだ」といった確信というのでしょうか。会ったことはないけれど繋がれるというよりも、遠くにいるからこそ繋がろうとする。対面で話せないからこそ相手を理解しよう、学ぼうとするのではないかと思いました。


『共生のシャーマニズム学』ではどんなものを受講生と分かち合いたいと考えていますか?

今考えていることは、いいコミュニティに育てることです。受講生には内面豊かに幸せに生きて欲しいと思っていて、講義で学んだことを実践したり、交流できる仲間として繋がっていきたいですね。

僕は人との比較ではなく、自分自身がどうより豊かに生きていくかが大切だと考えています。生存競争や他者との比較が社会の闇を生むと思っていて。競争があると敗者を生んでしまうんです。特にこれからの時代、競い合うより共に協力し、共有して高め合うことが必要不可欠だと思います。良い循環をつくりみんなで豊かになる。自分だけがハッピーになるのではなく、他者と繋がっていき、自分も幸せで相手も幸せ、みんなハッピーであるのが理想で、そんな社会を目指していきたいです。卒業生コミュニティもそんな取り組みの一つになると思います。


講義を進める中で、難しいと思うことはありますか?

感覚など共有できないことを、どう言葉で伝えていくべきかは考えています。感覚ではない部分で補う、具体的にしていくことが必要だと。僕と相手は考え方もバックグラウンドも違います。その人の経験などを想像してフォローしていくことが大切だと考えています。

受講生とのコミュニケーションで意識していることは、やり方を教えすぎないことです。

講義では自分の内面に入っていく方法を学びますが、トリガーが何かは人それぞれなんです。ある人は瞑想、他の人はウォーキングなど。なので、あくまで方法やサンプルとして提案し、自分に合ったものを見つけてもらうことが理想です。


今後の展望を教えてください。

自由大学の講義としては、シャーマニズム学をしっかり育てていきたいです。ブラッシュアップして、コミュニティを作っていきたいと思っています。

内面の繋がりだけでなく、直接、人とコミュニケーションをして3次元のコミュニケーションをしていく。それぞれが自己探求している時代なので、その学びやアウトプットのお手伝いをしたいですね。アウトプットをするのが難しい、苦しいと感じている人が多いように思います。それを手助けしたいです。自分自身の内面の声を聞くこと、それを人に共有すること。発信したいけれどさまざまな課題で一歩が踏み出せない人が多いと感じるので。


最後の質問です。SUGEEさんにとって自由とは?

僕は自由ではない自分をイメージしたことがないんです。自由じゃないことがなかったので。常に自分らしく生きている。強いて言えば、心の声に正直に進むということでしょうか。自由になる自分を妨げる状況はよく見られますが、人間は基本的に自由だと思っています。

SUGEEさん


編集後記
不確実性の高い現代だからこそ、自分の内側からの声に耳を澄ませて、より自分らしく、よりよく生きることが大切ではないかと感じました。

(取材:むらかみみさと

 


FLY(フライ)は、自由大学の卒業生が登場するインタビューコーナー。自由大学に通い、新しく見つけた自分の姿。卒業して、踏み出した一歩は小さくても確かな手応えをもって、新しい日常の扉を押し広げます。卒業生が体験した、自分らしい転換期の話をお届けします。



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