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DX時代に急成長するキャリアデザイン戦略とは

FLY_78 森山大朗さん/SmartNewsテクニカルプロダクトマネージャー

森山大朗さん

「テック×キャリア」の論客として人気を集め、2022年1月にWork in Tech! ユニコーン企業への招待』(扶桑社)を出版した森山大朗さんが永田町キャンパスに来校。森山さんは自由大学創設まもない2009年、キャンパスが池尻のIID世田谷ものづくり学校にあった頃に「自分の本をつくる方法」第2期に通われました。出会いから13年、満を持しての出版に、学長で同講義の教授・深井次郎さんの喜びもひとしお。 初出版の背景や転職先で高パフォーマンスを発揮し組織に貢献する考え方など、書籍の内容を軸に「キャリアの再構築」について対談しました。

<プロフィール>
森山大朗(もりやま・たいろう)
スマートニュース株式会社テクニカルプロダクトマネージャー。ブログやSNSでは「たいろー」名義で活動。早稲田大学を卒業後、株式会社リクルートに就職し3年後、新興のIT企業に転職。同社にてデジタルマーケティングに携わるも、業務のマンネリ化から退職。しばしニート生活に。その後飲食店アルバイトを経て、知人の誘いで新規事業の立ち上げ等に携わる。以後2013年に株式会社ビズリーチ、2016年に株式会社メルカリ、2020年からスマートニュース株式会社とユニコーン企業を渡り歩く。現在、副業でメルカリグループの株式会社ソウゾウも支援中。

[twitter] @tairo https://twitter.com/tairo
[note] たいろー https://note.com/tairosan
[ブログ] ユニコーン転職日記 https://unicorn-tenshoku.com/
[Voicy] Work in Tech!  https://voicy.jp/channel/1232

 

森山大朗さん
転職の秘密が隠された「禁断の書」?

深井:この度はご出版おめでとうございます! 初の著書『Work in Tech! ユニコーン企業への招待』は「テクノロジーが仕事を飲み込む時代に、どうキャリアを積んでいくか?」がテーマでしたね。

森山:今までなかった情報テクノロジーが次々登場し、当然のように世界を変えています。変化のスピードが加速していくことに、誰もが「ひとりの働き手」として漠然とした不安を抱えていますよね。テクノロジーが変えていく世界の中で、そのテクノロジーを取り込みながら、いかにして自分のキャリアを再構築していくのかという提案を僕なりに著しました。

深井:読むと転職したくなってしまう「禁断の書」と評判です(笑)

森山:転職を勧める本として書いたわけではないんですよ(笑)。自分自身が安易な転職をして、痛い目を見た過去があるので。

深井:新卒で最初に就職したのは、転職エージェント業界ですね。

森山:就職氷河期時代に名のある企業に就職できたのに、当時は何か違和感をもって外に飛び出してしまった。バイトもせずに家でダラダラ過ごしていた無職期間もあるし、自分でいろいろ試し「現時点でこんなことがわかりました」と報告している本でもありますね。これまでに8社での就業経験がありますが、前半4社で自分が活躍できていたとは思っていません。それも踏まえて、より大きな価値を会社に提供できる人材になっていくために「何をすればいいか?」について書いています。

深井:実体験をもとに考察されているところが新しいですね。

森山:事業家の成功本や、転職を支援してきたエージェントのノウハウ本は世にたくさんありますが、転職者自身が実験台となり、失敗と成功の実体験を語った本は見かけないないし、自分にしか書けないかなと。

深井:どんな経緯で出版に?

森山:SNSやVoicyで僕を知って下さった編集者の方からアプローチを複数いただきました。リモートワークで空いた時間、Twitterでの発信を多くしたところ反響があって。また、ちょうどその頃、音声市場がどう伸びてくるかに興味があったので、これは良いタイミングだと思ってVoicyにパーソナリティとして応募。活動を始めることにしたんです。配信が出版につながりましたね。

深井:いざ出版した感想は?

森山:思った以上に大変でした。何を書くかをまとめる作業は、以前に深井さんの講義で学んだ「自然石構築法」で進めましたね。

深井:『ワインバーグの文章読本』ですね。まずは小さな「石」をご自身のTwitterやVoicyで発信していき、それを約10万字の書籍に積み上げていく感じでしょうか。

森山:はい。ただ、スマートニュースでの本業のほかにも支援している会社があって、そこに本の執筆も重なり、久しぶりに徹夜しました。執筆しながらも「パフォーマンスを落とさず会社に貢献できているか」は常々、気になりましたね。ただ、やはりプロダクトマネージャーとしては自分が納得いかない書籍を出すわけにもいかず、妥協はできませんでした。『Work in Tech! ユニコーン企業への招待』は本の装丁にまでこだわってしまいました。

森山大朗さん Work in Tech! ユニコーン企業への招待

森山大朗さん Work in Tech! ユニコーン企業への招待

 

急成長企業と出会い、組織に貢献するには?

深井:本のテーマでもある「テクノロジーの加速」に絡めて。A Iに代替され自分の仕事がなくなるかも……と不安に感じる人から「たいろーさんのように、自分も急成長企業に転職したい」と相談されたら、どんなアドバイスをしますか。

森山:面倒な部分はテクノロジーに任せて「人間にしか」「ご自身にしか」できない仕事にスライドしていくことですね。もし今ピンポイントで「この仕事だけ」と「点」にこだわって働いているのなら、少し俯瞰し、貢献領域をひろげていくよう勧めます。

深井:文系で一般事務しか経験がない非エンジニアでも、テック系で働くチャンスはあるのでしょうか。

森山:文章が得意なら、テック系企業のオウンドメディアの人材募集は狙い目でしょう。デスクワークがメインなら、業務にすでにテックが浸透してきているはずなので、新しく導入されたツールに「いの一番」に詳しくなるのが近道です。加えて、そのツールを開発した企業の求人が出たらそこに応募を。誰よりもそのツールに詳しく、顧客目線で的を得た改善案が出せるヘビーユーザーが応募してきたら、その会社にとっても有益な人材に映るはずです。

深井:たいろーさんのキャリアが激変したのは「急成長企業に飛び込んだことがきっかけ」と著書にありますが、将来ユニコーン企業になる可能性の高い会社の見つけ方ってあるものですか?

森山:まずはプロダクトやサービスが、圧倒的に素晴らしいかどうかですね。情報収集という観点では転職エージェントからの情報も役に立ちます。優秀なエージェントであれば「今は無名だけど、優秀な人材が集まり始めている」という情報を察知していますので、市場の動向を知る先行指標になるでしょう。

森山大朗さん Work in Tech! ユニコーン企業への招待

深井:転職で環境が変わると、前職のパフォーマンスが発揮できず期待はずれに終わった人の話も聞きます。これがサッカーの日本代表監督みたいな要職であれば、移籍時に右腕左腕、つまりコーチングスタッフや通訳まで気心知れた自分のチームを引き連れていけますが、一般的には一人きりで新天地へ臨むわけです。慣れない職場で高パフォーマンスを出すためにすべきことは?

森山:転職前に希望先企業が苦手としている部分を任せてもらえるよう、自分の得意を高めておくのが定石です。選考の過程で直接、先方に今抱えてる課題やどの部分を補うための人材募集か確認するのもアリでしょう。転職した後は、今度は直属の上司が苦手としていることを自分が担えるようにアジャストする。そうすることで、確実に事業貢献できるのではないでしょうか。

深井:環境に合わせて、新しい分野を学ぶ必要も出てきますよね。たいろーさんの学び方は?

森山:完成形から逆算するのが、効率よく学ぶコツです。とりあえず、最初になんとか新しいことを学びながら具体的にプロダクトを作ってしまうタイプです。足りないスキルは後から補っていけばいいですから。

深井:まず、やりたいことを明確にするのが重要ですね。では「そろそろ次のステージに行くべき」という転職タイミングを知るサインはありますか?

森山:仕事が「仕上がったな」という感覚や、ずっと自分がやってきた仕事でも「あの人の方が適任なのでは?」と任せられるようになった時でしょうか。
僕が転職時に大切にしているのは「会社に対して恩返しが終わった」という感覚です。これは「次の会社に移った自分に、今の会社が仕事を発注してくれるだろうか」を基準にしています。

深井:独立した時に僕も同じことを感じました。古巣から独立後にも仕事を頼まれると、ちゃんと貢献できていたんだなと自信に繋がります。

森山:一方で転職を考える時は、疲弊してしまって勤め先との信頼関係なんて意識できないケースもありますよね。僕も以前、といってもだいぶ前ですが、逃げるように退職したこともありますから。

深井:順風満帆に見えるたいろーさんも、出会った13年前はまだ急成長前。無職の時期もあり紆余曲折があるからこそ、誰もがある人間の弱さにも寄り添えるのかもしれません。成功談ってたいてい鼻につくんですけど、たいろーさんの話には嫌味がなく、自分も変われるんだと勇気づけられるんです。

森山:ニート期間を経て、飲食店でアルバイトをした時は28歳、月給十数万円で暮らしてましたよ。

深井:人生には「ギャップイヤー」が必要です。ときどき自分を見つめるニュートラルな余白がないと、同じループにはまってしまいますから。

 

境界線上に自分をポジショニングする

深井:人生を通じて、たいろーさんの中にある「問い」は何ですか?

森山:「それに名前はついているか」「それは言語化されているか」です。
僕はいつも、「マージナルマン」であることを心掛けています。マージナルマンとは「異なる考え方や文化の境界にいる存在」。自分は「〇〇屋だから」という職種にこだわらず、仕事と仕事、部門と部門の境界でまだ名前のついていない場に身を置く。そこで言語化できていない領域の仕事をします。プロダクト組織とセールス組織の間に立ち、組織間をつなぐ仕事などがこれにあたりますね。

何かぼやっと輪郭が見えているものを言語化できた時、僕は幸せを感じるんです。書籍のタイトルの「Work in Tech!」も、まさに言語化できたものでした。望むと望まざるとにかかわらず、今やみんながTechnolgyの中で働いているんだよと。

森山大朗さん Work in Tech! ユニコーン企業への招待

 

深井:「ユニコーン転職」という新しいコンセプトを見出したのにも感心しました。連続起業家ならぬ、「連続ユニコーン転職者」の体験談は、現状たいろーさんだけが語れるポジションではないかなと。

森山:自分だけのポジションといえば、講義で学んだ「著者の4つのフロータイプ」は参考になりました。当時のテキストは13年経った今も見返しています。

深井:うれしい! 自由大学には、自らを再創造していくことに積極的な社会人が多く訪れます。たいろーさんの本は、受講生のみなさんにも響く内容だと思いました。さて最後に。たいろーさんにとって「自由」とは?

森山:自由には……怖さを感じます。大学時代も、ニートになった時も、自分で何でも決められる環境には、辛さしか感じませんでした。自由によってスポイルされていくようで「今の自分では、まだ自由をうまく扱えない」と。その想いが今なお自分を律し、急成長せざるを得ない環境へ身を置くよう仕向けているのかもしれません。

深井:人生100年時代には、誰もが何度かのキャリアシフトに向き合います。そんな時代に、たいろーさんが常に学び、自分を変え続けてきた実体験を著した『Work in Tech!  ユニコーン企業への招待』は、多くの人の行動指針になりそうですね。次回作もありますよね? 期待しています!

聞き手:深井次郎  文と構成:川口裕子

 

<新刊紹介>
『Work in Tech!(ワーク・イン・テック!) ユニコーン企業への招待』
 森山大朗著(扶桑社)

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書店での様子

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