講義レポート

会社員でも、自由に生きるための術を手にしよう

FLY_ 73|望月暢彦さん/『社内起業学』教授

望月暢彦
2021年2月に15期を迎えた『社内起業学』。この講義が4月に初めてオンラインで開講されます。この度、教授の望月暢彦さんに、どんな講義が行われるのか、オンライン開講に期待することなどを伺いました。

 

望月暢彦

 

社内起業学」にはどんな受講生が集まってきますか。

スタートした当初は、練り上げた企画を持ち込んでくる受講生が多かったのですが、最近は「なにかやりたいけど、ヒントが欲しい」「やりたいことはあるけれど、実現方法がわからない」「組織を変えたい、そのための交渉方法を知りたい」等、広い視点で社内起業を学びたいという人が増えています。受講生の「現状を変えたい」という問題意識は、いつも共通です。また集まる皆さんがユニークでいつも楽しい講義ができていますね。

 

社内に起業制度がない会社に勤めている人にも役立ちますか。

はい、役立ちます。どんな組織でも既存のサービスを新しくしたり、新規分野を開拓することはあります。その意思決定プロセスは必ず存在し、そこに自分の提案をのせていくことで可能性は広がります。この社会情勢だからこそ組織は、将来に繋がる事業モデルを求めています。

一方、個人としては、組織の資産を使って、自分のやりたいことを実現できる。そこに「組織に縛られたくない個人」と会社との共存の可能性があります。

望月暢彦

コロナ禍で企業を取り巻く状況は大きく変化しました。この社会情勢で「社内起業」について学ぶ意味はどんなものでしょうか。

テレワークが当たり前になり副業が認められつつあり、多様な働き方ができるようになりました。一方、会社側からは個人の成果が見えにくくなり、企業内・組織内でどれだけアピールできるのかが、自身の評価を大きく左右していきます。講義では企画を立ち上げるだけでなく、組織での交渉方法も学べるようにしています。

 

チャンスをつかむポジティブな姿勢とは?

例えばご自身が「今は英語に自信がない。でもいつか海外を飛び回りたい」と思っているとしましょう。そんなあなたに上司から突然、海外出張の打診がありました。でも今は英語力に自信がない。「……で君、英語は大丈夫?」と上司に尋ねられた時、なんて答えますか?

「すみません、英語はできません」と正直に答えれば、海外出張は別の人が行くことになるでしょうね(笑)。では英語力が不足しているあなたが海外出張に行くためには、何と答えたらチャンスをつかめるでしょうか。

講義でも話す内容なので、答えはここでは言いません(笑)。ヒントは「ポジティブに物事を考えること」です。語学力がないというネガティブな現実を、どうやってポジティブに表現しチャンスに変えるのか。交渉術は自分を魅力的に見せる手法にもなります。

 

社内起業学」初のオンライン開催が始まりますが、どんな皆さんに集まって欲しいですか?

日本全国からの参加です。以前から地方講義のリクエストはあったので、ようやくそれが実現できると楽しみにしています。オンラインでもリアルでも講義内容に違いはありませんので、安心して参加して欲しいです。

「社内起業学」は多彩な職業経験を持った人が集い、1人の企画を各自の目線で真剣に議論し合います。同じ社内でも、部門を超えてひとつの事柄をディスカッションする機会はあまりないと思うのですが「社内起業学」はそれが基本です。いろんな経験を持った人が集まってくるので、議論が本当に面白い。営業、広報、法務、経理……立場が違えば見えるものは違います。組織も、民間企業だったり公務員だったり。

さらにオンラインになれば、地域を超えた仲間ができます。

所属している企業や組織を、またはその中にいる自分自身を「変えたい」という前向きな思い持つ人だけで、真剣にディスカッションできる場は、なかなかないと思います。自分にはない視点を持つ人の力を借り、議論を重ねたことで行き詰った企画が前に進んだという例は講義で何度も見ています。全国の皆さんとこのような体験を共有できたらと思います。

特に、漠然とでも温めている企画があれば、それを携えて受講していただくと、ご本人にも仲間にも実りある時間になります。自由大学の魅力は、人と人とのつながりにありますので、そこにもぜひ期待していただきたいです。

 

望月暢彦

望月さんについて教えてください。

自由大学の受講生から教授になられたのでしたね。

もう10年以上前の話です。何気なくネットサーフィンをしていたときに「自分の本をつくる方法」の講義の紹介文に出合いました。そこには「どんな人にでもドラマはある。それを棚卸して自分の本を書いてみましょう」という趣旨のことが丁寧な文章で綴られていました。それに心をつかまれて講義を受け、棚卸をした自分の強みが「社内起業」だったのです。

自由大学には不思議と面白い人が集まってきて、誰とでも友達になれる。大人になってから男女年齢問わず、たくさんの友人ができたのは自由大学のおかげです。

 

望月さんは一度、独立されてからまた会社員に戻られているのですね。

就職をして、ある程度の力が付いたと思った20代後半で独立起業しました。

数年、自分で会社を経営していましたが、会社経営というのは、本当に大変です(笑)。それに、今まで所属していた会社の看板がなくなると、独立したばかりの自分には「信用というもの」がないのだと、打ちのめされもしました。

いつしか「何も一から十まで自分で背負い込まずとも、組織に貢献しながら、自分も成長できるようなやり方があるのではないか」と思い至ったのです。そこで会社をクローズし、IT系企業に再就職しました。

おかげさまで独立していた経験も評価され「社内にはなかったようなビジネスを、新しい発想でどんどん作り上げてくれ」と。会社の後ろ盾があって、自分で好きなことができる。そんな「社内起業」をしないのはもったいないと思うくらいです。


望月さんにとって「自由」とはなんですか。

行きたい場所に、行きたい時に行ける経済力と時間があること。夢を叶えて海外赴任した受講生のいるタイへ行ったり、行きつけのカフェのスタッフさんが、ワーホリでニュージーランドに行くと聞いたら、差し入れを持って出かけたり(笑)。社交辞令でなく、すぐに実行してしまいます。世界中のどこへでも、行きたいときに行ける今の自分は、まあ「自由」かなと思っています。

 

<編集後記>

組織にいて「息苦しい」と悩む人は「自分のやりたい仕事ができたら」と口にします。「社内起業学」はそんな人に向いていそうです。また優れた企画を「この人に任せたい」と思わせる人間力も必要だと思いますが、それは教授の人柄からも学べそうです。望月さんの印象は「部下の話をしっかり聞いてくれる優しい上司」。職場では「部下に甘い」と苦言を呈されることもあるとか。ちなみに目下の人に優しいのは、自由大学で出会った若い友人たちをリスペクトしているからだとのこと。

 

取材と文:川口裕子



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