講義レポート


こんにちは、高橋龍征です。自由大学でコミュニティづくりの一歩をふみ出す実践講義「場の主催学」を、ライフワークとして開講しています。私自身、ひょんなことから立ち上げたコミュニティを通じて得た様々なご縁により、人生の幅が広がったので、その方法論をより多くの人に伝え、実践してもらいたいとの思いからです。

今回は、具体的に、コミュニティがどのような転機をもたらしたのか、私の実例をもとにお伝えします。


偶然のご縁から、未経験の「講座づくり」へ

2016年、共同創業した会社を去ろうとしていたとき、ご縁のあった、早稲田大学の先生と偶然再会しました。すると、以前、私が彼のつぶやきを拾って手際よく実現させた印象があったからか、彼が担当することになった新しい社会人スクールの立ち上げに、ちょっと知恵を貸してくれないかと言われたのです。

興味ある内容なのでノリノリで議論に付き合っていたら、思いがけず、仕事として1講座の企画をお願いされました。さらに、企画した講座を成功させるために、著名人とのつながりを活かして様々なコラボを形にしたり、ライターやメディアの知り合いに提案してセミナーを記事化しました。

こうして、知恵を絞り、手数をかけたら、1つと言わず複数つくってほしいと、年間契約を結ぶことになったのです。未経験の講座づくりではありましたが、コミュニティ活動を通じて幅広い人とのつながりがあり、手早く企画を実現するノウハウがあったので、思いのほかうまくできました。

 

公開セミナーから企業研修を取るように

最初の講座は、全4回・約10万円の設定で、講師は優秀なもののまだ若いため、実績のない初回は、案内文だけで申し込ませるのは少し難しいと考えました。そこで、入門セミナーや説明会など、講師の力量を直接見てもらう機会をつくり、申し込みに誘導することにします。

より幅広い層にリーチするために、外部や自主開催でも入門セミナーを実施したところ、「うちの会社でも話してもらいたい」と何人かに言われ、これもビジネスになると気づきました。企業の仕事は、大学よりもいい対価をもらえるため、セミナーづくりが仕事として成り立つようになったのです。

コロナもコミュニティで乗り切る

しかし、新型コロナ感染拡大により状況は一変します。オンラインセミナーでは対面のような関係構築が難しいため、対面セミナーが出来なくなると、仕事が取れなくなります。そのことが直感的に分かっていたので、いち早く、2月の段階からオンライン化に着手しました。

この時に役立ったのもコミュニティです。自分と同じく、オンライン対応に困っている人々が、互いに知見をシェアし、課題を解決し合うFacebookグループを立ち上げました。やり方を学べた以外の効果もありました。「オンラインの人」として認知されたのです。

そうして登壇に呼ばれるようになり、さらに自ら企画を通して『オンライン・セミナーのうまいやり方』も出版しました。本は信用を高め、新しい仕事につながります。コミュニティにより、新型コロナによる環境激変に対応することが出来たのです。

 

コミュニティづくりも仕事になる

私はたまたま、母校の大学のアルムナイ(OBOG会)の運営にも携わっており、ビジネスパーソンが、ビジネスやキャリアに役立てる目的でアルムナイ・コミュニティに参加することも知っていました。私が働いていたソニーは、多様な人材を輩出していながら、現役世代向けのアルムナイ・コミュニティがなく、もったいないので自分でつくることにしました。

会社の支援も取り付け、短期間で500人規模にして活性化させたところ、一年で「ジャパン・アルムナイ・アワード」を受賞できたのです。アルムナイの運営はボランティアですが、結果として、その実績やご縁から、新しいお仕事につながりました。

全ての転機は、コミュニティから

どれも、狙って仕事にしたのではなく、結果としてそうなっただけです。コミュニティでご縁のできた、多様な人との気軽なコラボを試し続けてきた中で、自分なりの「好きで得意」にたどり着いたのです。

自然と体が動くことなので、手間や対価など気にせず「量稽古」ができます。性に合ったことを、楽しく突き詰めていれば、自ずと「好きこそものの上手」となるでしょう。好きなことが仕事になると、ストレスもなくなります。

たまたま、意図せず、コミュニティを立ち上げた

このようにかいつまんで書くと、スムーズにやってきたように聞こえるかもしれませんが、実際は全く逆です。そもそも社交的な性格ではなく、大学時代は独り陸路でユーラシア大陸を横断したり、離島で1月近く野宿したり、社会人になっても、幹事なんてやるタイプではありませんでした。

ご近所会を始めることになったのは、たまたま寿司屋で隣り合った人間と意気投合したからです。コミュニティを立ち上げたという意識すらなく、ただその場に相応しい人を集め、参加した人が安心して満足できる場づくりを、自分も楽しみながら、続けるようにしてきたら、人が人を呼び、新たな企画が次々と生まれたのです。

 

人に伝えるため、学びの場をつくる

色々なことを試し、失敗もたくさんしましたが、改善を重ね、無理なくできるやり方をつくりあげてきました。そうして、15年以上、複数のコミュニティの立ち上げや運営に携わり、800以上のイベントを形にしてきたのです。

さらに、培ったノウハウを言語化・体系化して、より多くの人が実践できるようにしたいと考え、200本近くの記事や本に落とし込み、100回近くの登壇で伝え続けてきました。さらに一歩ふみ込んで、実践まで後押しする場として「場の主催学」をつくり上げたのです。

 

誰もが自分のコミュニティをつくれるように

よって、コミュニティは、誰でも立ち上げられると考えます。但しその方法は、「誰でもこうすれば必ず上手くいく」というハウツーではありません。自分ならではの「あり方」や「やり方」に辿り着くための、基本となる考え方とやり方です。

特に、参加者の立場に立つことと、小さく試すことは、誰でもでき、いつまでも役に立つ、基本中の基本です。そして、大事なのは、自分で一歩踏み出すこと。実際に、体を動かせば何に心躍るかが分かりますし、人を集めれば参加者や求めることも見えてきます。「場の主催学」は、その一歩目の後押しとなります。


「実践」を確実にする、さまざまな工夫

「場の主催学」の特徴として、講座開始から約1ヶ月で、コミュニティ化を見据えたイベントを試行する、という課題があります。なかなか大変ですが、以下の工夫により、前期は全員が達成しました。

1)実現プロセスを細分化し、毎回のワークで実行
2)ハードルを下げる
3)実行を後押しする様々な仕掛け
4)講師からのフィードバック

実践を確実にする、それぞれの仕組みの詳細をお伝えします。

 

実現プロセスを細分化し、毎回のワークで実行

コミュニティや集まりを形にするには、核となる要素を具体化・整合させる必要があります。

・参加者はどんな人か
・何のために参加するのか
・何を、どのように提供するのか
・主催者の原動力や目的は何か、など

当人は分かっているつもりでも、言葉にしてみると、案外曖昧だったり筋が通らなかったりで、人にも伝わらず、何より自分の心も動きません。この講座では、これら核となる要素を具体化・整合させるプロセスを、誰でもできるくらいに細分化した、実践的な方法論をお伝えします。

また、そのステップは毎回のワークに落とし込まれ、初心者でも着実に企画を形にできますし、「締切効果」も実行の後押しとなります。

 

ハードルを下げる

一歩ふみ出せなくなる要因に、「内容や運営をきちんとしなければ」、「人を集めなければ」と、無意識に高いハードルを課すことがあります。コミュニティ立ち上げの実際は、核となる要素が整合するまでは仮説検証の連続です。よって、最初は小さく簡素な試行で構わないし、方向転換も問題ないとハードルを下げる方がいいのです。

また、意志力に頼らず試行を継続することも重要で、極力負荷を下げる仕組みが欠かせません。こういった、発展段階を踏まえた継続の考え方を理解することで、適切に一歩をふみ出し、持続可能性を高められるのです。

 

実行を後押しする様々な仕掛け

実行を孤独にやると、最初は特に心折れがちなので、以下のような、互いにサポートする仕組みを導入しています。

チーム制:受講生3〜4人で実践をサポートするチームを組み、自主ワークや相互フィードバックをします
オンライン・グループ:受講生と運営メンバーによるFacebookグループで、クラス以外の時間でも質問やフィードバックができます
修了生アシスタント:同じ道を通ってきた修了生が、相談相手として、どこでどうつまづくかも踏まえたフォローをします

「やるのは自分」が前提ですが、これらの仕組みにより、実現可能性は高まるでしょう。

 

教授キュレーターからのフィードバック

ワークを効果的にするのは、以下のサイクルを回すことです。

・自分の言葉にする
・他の人に伝える
・フィードバックを受ける
・ブラッシュアップする

事前に提出された課題に対して、講師は必ず、迅速かつ具体的なフィードバックをします。課題だけでなく、個別具体の質問にも、他の人にも学びとなる実践的な回答を返します。質問が多いほどクラス全体の学びが増えるので、ディスカッションも回を進めるごとに活発になっていきます。

 

初心者でも3週間でイベントを実施できる仕掛け

「場の主催学」の特徴に、第3回と第4回の間に、コミュニティ化を見据えた集まりを試行する、というものがあります。講義は毎週あるので、初回の翌々週には実施が確定している、というペースで、けっこう時間がありません。そんな大変なことを、なぜ敢えてやるか。

それは、以下のような学びの効果があるためです。

1)核となる要素の解像度が上がる
2)自信とやりがいを得られる
3)学びが自分ごと化する

それぞれについて、簡潔に説明します。

 

小さな試みでOK

「なぜ」の前に、どんな集まりかのイメージを合わせておきましょう。集まりといっても、目的は仮説検証で、大々的にやる必要はありません。規模は数人程度で、内容も絞り、運営も簡素でよく、特にオンラインなら、お金もかけず、一人で運営できるので、予算やスタッフの手配も不要です。集客も、人づてで確実に関心を持ってくれる人を集めればOKです。

多くの人は、無意識の内に、ちゃんとした、大々的なものをやらねば、と考え、一歩ふみ出せなくなりがちですが、こう考えると、気軽に実践できると思います。

 

核となる要素の解像度が上がる

場の主催学では「どんな場をつくるのか」の核となる以下の要素を、ワークを重ねて言葉に落とし込んでいきます。

・自分の原動力
・対象とニーズ
・コンテンツとその価値

これはこれで欠かせないステップなのですが、とはいえ、頭で考えたことに過ぎません。なので、実践が必要なのです。実際に体を動かせば、何に心動くか感じます。実際の参加者を相手にすれば、どんな人が、何を求めているかも見えてきます。案内文やコンテンツの、どこがどう響いたのかも分かるでしょう。これらは、やってみないと分かりません。

 

自信と励みになる

最初は、「誰か来てくれるだろうか」「これで満足してもらえるだろうか」などと心配になるでしょう。それを乗り越え、企画を実現できれば、次はもっと気軽にできるでしょう。

また、質素なイベントでも、一生懸命やれば、たいていは感謝してもらえるもの。参加者の喜ぶ顔や感謝の言葉は、大きな励みになります。自信や励みは、自分で場づくりを進めていく原動力となります。

 

学びが自分ごとになる

最も効果的な学習方法は、実践することと、人に教えることであると、古くから言われ、学術的にも証明されています。自分の企画を1ヶ月ほどで実施する前提でレクチャーやワークに臨めば、自ずと、実際どうやるか考えながら取り組むようになります。

さらに、講座の参加者は、同じタイミングで同じ課題に取り組むので、お互いにフィードバックし合えます。他人の改善点はよく分かるもので、他のメンバーからは効果的な意見をもらえますし、他メンバーにフィードバックしながら、自分の同じ間違いにも気づけるようにもなります。

 

様々な工夫で、全員達成

このように、学びの密度を上げる様々な効果を意図して、「第3回のクラス後に試行イベントを実施する」という、ちょっと挑戦的な課題を設けているのです。最初は大変に感じるかもしれませんが、実践を確実にする様々な工夫もあります。前回受講生は全員達成し、皆さんいずれも、大きな学びと達成感を得られています。

人生をより面白くしたいあなた、一緒にチャレンジしてみませんか。

 

「場の主催学」の詳細・お申込はこちら
https://freedom-univ.com/lecture/organize.html/

 



関連する講義


関連するレポート