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仲間を集めて大きなエネルギーに変えていく

FLY_056|小笠原真紀子さん/「乾物のある生活」キュレーター

自由大学の講義『乾物のある生活』のキュレーターでありながら、「自由大学出版」としてレーベル第一弾となる講義発の「乾物本」の出版に向けたプロジェクトを牽引する小笠原真紀子さん。なぜいま「乾物の本」を出版するのか、そして、多くの人を巻き込みながらプロジェクトを推進するために意識していること。食にまつわる買い方・選び方を独自の視点で繋いでいく現在の活動についても伺いました。


—現在「乾物のある生活」のキュレーターとしてご活躍されていますがもともとは受講生でした。講義を知ったきっかけは何だったのでしょうか

2013年に「乾物のある生活」の教授であるDRYandPEACEの2人が開催した乾物のイベントに行ったのがきっかけでした。乾物は「おばあちゃんの味」とか「醤油を使った和風の料理」みたいなイメージがあったのですが、そうじゃなかった。地元の山形でおせちの時くらいしか食べる機会のなかった豆が、このイベントで洋風にアレンジされた前菜として出てきたんです。こんな使い方もありなんだ!とびっくりしましたね。その時、教授2人が「乾物は未来食」と言っていたんです。実は非常食になったり、フードロスの軽減につながったり、軽いので買い物が楽になるとか。それでまたびっくりしちゃって。わたしの中で小さな革命が起きたんです。何か扉が開いた気がして。それくらい衝撃的な出会いでした。

実は5年前に体調を崩した際に、食に対しての意識ががらりと変わったんです。一番大きなターニングポイントでした。そこで、自分の身体は自分が食べた物でできているという当たり前のことにようやく気づいたわけです。それから食に関してアンテナを張るようになって。そういった中で出会ったのがその乾物のイベントで、もっと教授2人の考え方を知りたくて、その後に自由大学の講義「乾物のある生活」を受講しました。

 

—実際に講義を受講してから、何か変化はありましたか

行動パターンが変わりましたね。乾物って先人たちからの知恵が受け継がれてきたものだけど、今のライフスタイルにあわせてアレンジされている内容、未来や社会に繋がっていくという発想や視点がおもしろいと思ったんです。乾物を通して社会や未来を考えるという発想はなかったから、物事ってこういう発想をしていけば乾物だけじゃなくていろんなことが繋がるような気がしたんです。

よく「乾物が好きなの?」と聞かれますが、ちょっと違うんです。ただ好きというだけではなくて。乾物を学びたいというより「乾物から学べること」が面白くて。社会や未来に繋がることや新しい価値や可能性を見出すことなど。フードロスの話でいえば、これまで「心がけ」くらいで終わってしまっていたのが、講義を受けてから余った野菜は切って干したりしています。これだったらわたしにでもできる。小さい規模だけどフードロスの軽減やサステナブルな活動に参加できることを感じました。小さくてもアクションを起こすって大事だなって思いましたね。

 

—「自由大学出版」として出版レーベルをスタートすることになりました。第一弾として担当講義の「乾物のある生活」の本が出版されるプロジェクトが進んでいますが、始まったきっかけは何だったのですか

「乾物」というと料理に興味がある人がこれまで多かったのですが、そうじゃないアプローチで乾物を広めたいという話を教授2人としていて。それなら本かなと。

講義はすでに現在17期を開講中で、卒業生の数も180名を超えました。講義を通じて受講生の中に小さな変化が起き始め、講義が終わってもその想いが継続している。世の中を変えていきたいと思ってもひとりじゃできないけど、同じ想いの人が集まって発信すれば大きなエネルギーになるはず。みんなで動くことでムーブメントを起こしたいと思ったんです。

自由大学にはいろんなスペシャリストがいるから、そういう人にも協力して頂くことができたら、今までにない乾物の本ができるのではと思ったんですよね。自分たちが伝えたい価値は自分たちでDIYする、というのも自由大学らしいかなって。

 

乾物本で使われる写真の撮影現場にて。「乾物のある生活」の講義関係者だけでなく、自由大学に関わる様々な分野のプロフェッショナルの協力でプロジェクトは進んでいる。

—出版プロジェクトの中心メンバーとして、大人数を巻き込みむのはとても難しいことだと思います。進行するにあたり気をつけている点はありますか

今回の本づくりはチャレンジなんです。わたし自身は出版の経験やノウハウもないのに、全体の進行やコーディネートをすることになりました。今は「乾物は未来食」という発想を伝える本づくりの過程が楽しくてしょうがないんです。ただ経験がない分、周りに助けてもらっています。

プロジェクトメンバーは各プロフェッショナルと卒業生で構成されていますが、プロジェクトが進む中で分からないことは躊躇なく周りに聞くようにしています。これって、会社員時代は立場とか今更聞けないという気持ちがあってなかなかできなかった部分なんです。多くの人が関わるプロジェクトだからこそ、とにかく抱えないように。忙しい中関わってくれているわけだから、効率的にコンパクトに、環境を整えてあげたい。試行錯誤しながらだけど、今ものすごい勢いで経験を積んでいて、それはすごくありがたいと思っています。そしてみんなが本当に向き合ってくれることに、感謝しかありません。いま挑戦しているクラウドファンディングも、想いを届けるために本を出版したいということで始めたけど、本づくりに関わってくれている人たちにも恩返しをしたい思いがものすごく大きくなっています。

 

—個人の活動としても、食にまつわるワークショップを主宰しているとのことですが、どのようなことを大切にしているのでしょうか

何かを教えるという立場ではなく、考えるきっかけや思いを馳せる場づくりをしたいと思っています。以前、山形から糀屋さんを東京に呼んで味噌作りをしました。その時に参加していた20人くらいが同じ材料で仕込んだ味噌を半年後に持ち寄る会を先日開催したんです。

味噌作りワークショップの場で、糀屋さん(作る人)と参加者(買う人)が出会い、そこから関係性がうまれる。結果的に「この人から買いたい」という想いもうまれる。こういったモノの選び方ってとても大切にしたいと思っています。食のおいしさってそういうことも含めてだと思っていて。だから「この人から買えば間違いない」という人の信頼関係を築きたい。そういう買い方や選び方ができたら、買う人も作る人も楽しいかなと思う。頭でっかちに安全性を知るということよりもまずは人を知る、そういう“お互い様”の関係がいいなって。

 

同じ条件で作った味噌を半年後に持ち寄ってみたら、色も味も全然違ったんです。作っておしまいじゃなくて、その後の変化も共有できたのが面白かったです(小笠原さん)

—食べ物を買う側から一歩踏み込んだ活動をされているのですね。今後の展望を教えてください

小さな規模で作り手と買い手を繋いでいく、プラットフォームになりたいんです。作る人がいるから買う人がいる、買う人がいるからまた農家さんが作ることができる。大きなマーケットにはならないけど、小さなコミュニティであればそれは成立するのではないかなと。

地元の山形にとってもおいしいりんごがあります。でも、見た目がイマイチだし小さいので売れない。とても育てるのが難しい品種だし、作っても市場に乗らないという理由で作る人が減っている。おいしいのにもったいないと思っていて。そういう隠れた可能性をもっとクローズアップして関わりたいなと。元々PRをやっていたこともあり、そんな欲求が湧いてくるんでしょうね。こういうのって大企業はできないけど個人ならできることだなと。どうして自分がやろうとしたかを自分のことばで語って伝えると、届くんですよね。こういった活動を拡げていくために、来年から新しいプロジェクトがスタートする予定です。

 

-最後に、小笠原さんにとっての「自由」とは、また、自由でいられるために心がけていることは何でしょうか

伝えたい想いがあって、それを伝える熱さがある状態なのかな。いま手がけている乾物本の出版プロジェクトは自発的にやっているし、想いの強さが誰よりもあると思っているんです。あとは、途中うまくいかない場面が出てきたときに弱みも含めて自分をさらけ出すこと。プロジェクトでも大変なことはたくさんあるけれど、でも自由だとも思っているんです。気持ちがシンプルに軽くなった気がしています。

 

プロフィール 小笠原真紀子/キュレーター

山形県山形市生まれ。大学卒業後、レコード会社に勤務し宣伝を担当。その後、イベント会社・製薬会社でPR・広報の業務を行う。5年前に食への意識が変わる出来事があり、2014年に自由大学「乾物のある生活」を受講。2015年4月からキュレーターに。今後ライフワークとして、東京と山形を基点に、食にまつわる作る人と買う人を繋ぐ活動を拡げる予定

 

 9月29日までクラウドファンディングに挑戦中。応援よろしくお願いします! /
乾物は未来食!フードロス問題を解決し、日々の暮らしを豊かにする、自由でPEACEな革命本を創りたい!

担当講義:『乾物のある生活』

取材と文・撮影:武谷朋子
編集:ORDINARY



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