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すべては「面白がる」ことから。自分起点で動くことで得られるもの

FLY_ 70|酒井新悟さん/RIDE MEDIA&DESIGN代表

酒井新悟

今回お話を聞くのは、オウンドメディアメディア『haconiwa』などを運営するRIDE MEDIA&DESIGNの代表を務める酒井新悟さん。自由大学創立初期から、『キュレーション学』や『クリエイティブキャンプinポートランド』などを受講されています。2020年には、編集者と経営者のキャリアを活かした著書『ビジネスの課題は編集視点で見てみよう』を出版するなど「編集力」を大切にしている酒井さんの、学びと仕事を繋げていく考え方やモチベーションについて伺いました。


-自由大学との出会いを教えてください。

まだ自由大学が池尻にあった頃、『キュレーション学』に受講生として参加したのがきっかけです。当時私は現在社長を務めているRIDE MEDIA&DESIGNで、『haconiwa』というメディアを立ち上げて運営していました。『haconiwa』はキュレーターが見つけた商品やサービスなどを紹介するメディアです。当時まだキュレーションメディアという言葉が世に広まっていない中で知名度を持ち、ファンも獲得している状況でした。これからどうメディアとして成長させていくかを検討していた中で出会ったのが自由大学でした。「キュレーション」という言葉や概念もまだ一般的ではなかったので、自由大学の講義を見つけてピンときたんです。同期メンバーが10人ほどいましたが、興味関心の方向性が一緒でしたし、近い業界の方もいたので仕事を依頼するなど繋がりもできました。

 

-講義の中で印象に残っている内容はありますか?

キュレーターは情報をピックアップするだけの存在ではなく、発信する必要があるということでしょうか。今伝えるべき情報をわかりやすくまとめた上で、伝播させるのがキュレーターの役割だと思います。講義は一方的に話を聞くわけではなく、ワークショップやディスカッションを重ねて自分で思考する時間を持てたのがよかったです。座学だけではないところが自由大学の魅力だと思っています。学びの場は教えてもらうだけの、傍観者にならないことが自分にとっても重要で。その場にいて自分が楽しむ、そのために当事者意識を持つことが大切だと思います。

 

酒井新悟

 

-ポートランドでのクリエイティブキャンプにも参加されたそうですね。

今でこそポートランドはガイドブックが出るくらい人気ですが、当時はまだまだ知名度が低く、情報やネットワークが不充分でした。いち早くポートランドに注目していたのが自由大学で、ナイキやWieden+Kennedyなど自分で訪問できない企業や、出会えない人たちとの出会いがありました。現地集合現地解散だし、すべてお膳立てしてくれるツアーではない点も学びが多かったですね。

 

-酒井さんは自由大学以外でもレクチャーなどに参加していますか? 学び好きなのでしょうか?

特にカルチャースクール好きとか、習い事が好きというわけではないです。自由大学のコンセプトに惹かれて、ここで何かを得たいと思ったのが講義やポートランドツアーに参加した動機です。

私は向上心よりも好奇心で動く人間です。仕事でも趣味でも継続するモチベーションとなるのは「面白がる」こと。向上心だけでやっても続かなかったですね。自由大学の講義に参加したのも、ポートランドに行ったのもすべて好奇心からです。自由大学で出会った人たちも、楽しいから来たという人が多いように思います。好奇心があるところに飛び込んで学び、得たものを自分の糧にしていくようにしています。

 

-インプットしたことを自分の活動に活かしていくために必要な姿勢は?

主体性があることが重要だと思います。お客様ではなく、自分も考えて動いていく。「編集者出身で起業家」という私のキャリアからも思うことですが、考えたことやこういうことをしたいなど自分から発信することはとても大切です。主体的にならずに生きていくことは可能ですが、思考停止になってしまうと何事も面白くありません。自らが起点になる意気込みで、人に頼らない前提で発想していくと得られるものは大きいのではないでしょうか。

 

-先日『ビジネスの課題は編集視点で見てみよう』を出版されましたが、どのような経緯で書かれたのでしょうか?

もともとは雑誌『Web Designing』に連載していた記事で、それをまとめて一冊にしたものです。アウトプットして来たものをなんらかの形にしたいという気持ちがありました。編集者を経て会社経営をする中で、編集者的な考え方はビジネスにも活かせると思っていて、それをまとめました。私は作家ではないですが、こうやって本としてアウトプットすることは会社や自分自身の考えを知ってもらえる機会になりますし、本をきっかけにネットワークが広がったり、人と繋がれるので出版してよかったです。

 

酒井新悟

-最初に編集者という職業を選ばれた理由は? その後独立され、いち編集者ではなく会社経営に進まれたのはどんな思いがあったのでしょうか。

編集に興味を持ったきっかけは、1から10まですべてに携われるポジションだったことです。何でもやらなきゃいけない立場ですけど、今思えば経営者と同じですね。編集者とはどんな仕事かを一言で表現するのは難しいです。ライターやカメラマンのように明確なスキルがあるわけではないですし、「編集者になるためのステップ」も体系化するのは困難です。いいものを見つけて、形にして発信していくことはキュレーターと同じかもしれません。雑誌や書籍に限らず「編集者の目線」で捉えることは重要性が高まっていると感じますし、出版した本で伝えたいことでもあります。

独立してフリーランスの編集者になる道もありましたが、出版社の先輩と一緒に起業することにしました。個人でインパクトある仕事をおこなうのは限界があるので、チームを作るのが適していると考えたからです。チームの中で個をどうやって輝かせられるかを考えています。


-最後に、酒井さんにとって「自由」とはなんですか?

決められたことから解放されたいという「自由になりたい」自由と、何も制約なく「自由にしていい」自由があると思います。一言で言い表すのは難しいですが、自分の置かれた状況を楽しむことは大切だと考えています。どう進むか自己決定できることは自由な状態ではないでしょうか。

 

酒井新悟

お忙しい中、ありがとうございました。

<取材後記>
編集者、起業家、経営者として活躍している酒井さんの原動力「好奇心」と「受け身にならず自分から動く」姿勢は、自由大学が大切にしている価値観と共通しています。情報があふれ簡単に手に入る中で、有益そうなもの、価値がわかりやすいものに飛びつきがちです。主体的に学ぶことは自分の足腰を鍛え、より遠くに歩いていくために不可欠なものだと感じました。

(取材・文:むらかみみさと)



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