こんにちは、学長の和泉里佳です。日本全国に点在するワイナリーを産地ごとに、まるで旅するように学んでいく『日本ワイン学』。今回は北海道ワインの旅をレポートします。
講義では、ブドウ畑やワイナリーの写真を見ながら、日本ワインを取り巻くいろいろな状況について考え、わいわい話し合いながら、味わい、ワイン好きもワインを学ぶのが初めての人も一緒に楽しく学んでいます。
日本ワインの新天地、北海道
広大な土地、梅雨や台風がなく寒冷で降雨量も少なめの気候の北海道。農業、酪農、漁業など、「食」に関する産業が盛んな北海道は、ワインづくりでもまた大きな存在感を誇っている場所。ドイツ系品種をはじめ、ヨーロッパ系ブドウが多く栽培されています。
これまで日本ワインの歴史そのものの山梨や高い品質を誇る長野でのワインづくりを見てきましたが、それは古くからの日本の気候や農業、ライフスタイルに密着したワインづくりの道でした。一方北海道のワインづくりは明治時代の北海道開拓使庁が直営で始めたもの。
外国品種の試験栽培から始まり、途中何度も挫折を繰り返しながら、その気候風土もマッチして今では、リースリング、ケルナー、ツヴァイゲルトレーベ、ミュラー・トゥルガウなどのヨーロッパ系品種が多く栽培されています。また古来から野山に自生している山ブドウもワインづくりに用いられ、ヨーロッパ系ブドウと山ブドウとの交配品種も開発されています。ヨーロッパから来たブドウと日本の野生の山ブドウが一緒に美味しいワインを作っているなんて、少しロマンチックですね。
第二次世界大戦中はワインが軍事用に!?
戦争中もワインづくりが盛んに行われたというお話がありました。優雅にワイン?ではありません。実はワインには酒石酸という成分が含まれていて、その酒石酸は潜水艦のソナーの材料として必要な物質だったそうです。そのため戦争中にもワインづくりは奨励されていたというエピソードもありました。
そんな日本ワインの新天地、北海道がテーマの第4回は、こんなワインを試飲しました。
・北海道 ミュラートゥルガウ 北海道ワイン/2010 ミュラートゥルガウ
・ヨイチ ノボリ ナカイブラン ドメーヌ タカヒコ/2010 ケルナー
・グランポレール北海道 ツヴァイゲルトレーベ サッポロワイン/2009 ツヴァイゲルトレーベ
今回は全てヨーロッパ系品種のワインが揃いました。大手が出している1000円くらいでコストパフォーマンスの良いワインから、つくり手が全て自分の手で少量ながらもこだわって醸造しているワインまで、様々なものに触れました。有名なつくり手や個性的なワイナリーが注目されがちな日本ワインですが、安定した品質のワインを安価で大量に提供している大手企業の存在が日本ワイン全体の市場を支えていることも事実です。いろいろな視点をもつことでより楽しみが広がりますね。