講義レポート

器が割れる前よりも、より美しく、より大事に

「器を継ぐ」講義レポート

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こんにちは、「器を継ぐ」キュレーターの小柴です。
なぜ今「金継ぎ」の講義を自由大学で行うのか。理由は2つあります。

1つは、大量生産大量消費から、少々値が張ってもストーリー性のある気に入ったものを大事に使うという考え方がここ数年、特に大震災後急速に広がっていること。その思考の中で、壊れてもまた修復して使うということが欲求として出てくる。「あー割れてしまった、直して使おう」と。直せばなおさら愛着もわく。これが自分で出来たり、友人の割れてしまった器をさっと直せるなんで素敵ではないかという理由。

そして、数十年も修行を積んできた金継ぎ職人ではないのだからこそ、デザインにこだわってもいいし、型にはまらないあなたの金継ぎにもチャレンジできると思っている。

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2つ目は、金継ぎの思想が好きだから。壊れたものを漆と金で継ぐことで割れる前よりも価値が高まるという、侘び寂びの思想。この考えからは震災後の復興のあり方としてもリンクするように思う。

実際の講義は、目の前にある持参していただいた割れてしまった器がどういう思い出があるものなのかが、自己紹介代わりになってスタートする。骨董市でビビッときて購入した器、両親が大切にしていた器、日常生活で欠かせない器など、それぞれ想いがある。

それらをただただ使えるように直すのではなく、美しく修復する。アドレナリンが出る作業。ちょっとでも汚いと伊藤教授からやり直しのかけ声がかかる。やるからには美しくが教授のポリシー。

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一度基本が分かれば、あとは自由演技。職人でないからこそできることもある。ネイルアートが好きな方はとても細やかな絵を継ぎ目に描き始めた。たった1本の線が足跡になった。別の方は、継ぎ目の線が花びらに変わった。

日本独自の金継ぎ思想の上に、自由な発想で器が金や銀で継がれていくのはとてもワクワクする時間だ。そして、それらの器を割れる前よりも大事に日常で使っていることを想像すると、なんとも言えない安らかな気持ちにもなる。

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