第一期「未来を創るための哲学」からこの講義を受講しています。
一方的に知識を与えられるだけの授業ではなく、一人一人が参加者となって行う「哲学対話」を通して、自分とは何か、社会とは何か、働くとは何か、生きるとは何か、といった、「今を生きる」ために避けては通れないテーマについて議論していきました。
なぜ、理系の私が、哲学を学んでこなかった私が、このような講義を二期連続で受講しているのか?もともと私は、こういう漠然としたテーマについて議論するのは好きではありませんでした。というか、受講している間もそう思う瞬間はありました。なぜなら、みんなで共有できる結論に至ることが極めて難しいから。
例えば同じ「仕事」という言葉を使っていても、その定義は人によって千差万別。かといって、唯一の正解があるようなものでもないから、議論はなかなかまとまりません。普通の話し合いの場では、「人それぞれだよね」という万能の言葉によって片付けられてしまうでしょう。
しかし、哲学対話では「人それぞれ」を禁止します。
誰かの意見に対して、「それってどういうこと?」と徹底的に掘り下げる。その人が使っている言葉の定義までさかのぼり、何を言おうとしているのかを引きずり出す。
それは相手を論破したり否定したりするためではなく、より良い主張、よりみんなが分かり合える主張にするための共同作業です。
そしてそれは、文系理系を問わず、誰かと関わりながら生きている私たちにとって必要不可欠な態度です。
誰も一人では生きていけないから。言葉を発することは、誰かと分かり合いたいと願うことだから。
分かり合うことは難しいです。しかし、だからこそ、自分が思ってもみなかった考え方に出会えたとき、物事の本質に迫るような議論ができたと思えたとき、この講義を受講して良かったなと思いました。
text&photo:橘高 達也