~新旅学とは~
日常に少し変化を持たせたくて、自由大学のホームページからいろいろな講義を眺めていたら、「新旅学のすすめ」という不思議な学問を見つけたのが受講のきっかけした。一体どんな内容なのかよく分からないけれど、旅行は好きだし、自分と同じように旅好きな人と出会えて情報交換できたら楽しそうだなという単純な思いから始まりました。
すると、1回目の講義で、ここで言う新旅学とは、一般的な旅(地理的な移動)のことではなく、自分にとっての幸せとは何かを意識して人生を歩んでいくための手段であり、とても壮大なテーマについての学びであることが分かりました。自分が想像していた内容とのギャップに一瞬苦笑い。しかし、日々の変わらぬ生活に飽き飽きしていた私は、もしかしたら現状に風穴を開ける何かをこの講義で見い出せるかもしれないという期待が一気に高まるのを感じました。
新旅は、日常の中でいつでもどこでも自由にでき、正真正銘、嘘のない自分自身と繋がり、感じ、そして、深く知るためのものです。講義では、メンバー全員が1日1枚、1週間撮ってきた写真について発表し、それに対して皆で話しながらその人の個性や関心を見つけていく作業もありました。これがとても面白くて、ただの写真が、撮った人の思いや考えを聞くことによって彩られ、意味のあるものになっていくのです。私の場合、新しいものよりも古いものに心惹かれることや、道端の花や建物など、色んな物を擬人化してしまう癖があることなど、今まで自分でも気付かなかったような内面が浮き彫りにされ、少し気恥ずかしさもありましたが、まずは自分の個性を知り、次に、その個性を意識して更に磨きをかけていくというプロセスを具体的に教えていただけたことは、今後様々な場面で応用できそうです。
また、年齢、性別、職業など様々で、普段では決して出会わないであろうメンバーと共に考え、それを言葉にしていく中で、キュレーターのお二人も含めて全員で「新旅学」という新たな学問をつくっていくような感覚があり、、毎回、今日はどんな化学反応が起こるだろうとワクワクする時間でした。
~受講後~
「新旅学のすすめ」では、ものづくりや街づくりの事例やアートについてのお話もあり、「クリエイティブ」という言葉がどうも私の抱いている閉塞感を打ち破るキーワードになってくれそうだという予感がありました。でも、あともう少しのところでどうしても自分のものとして消化しきれずにいる状態でした。そんな時、ちょうどよいタイミングで「CREATIVE CAMP in ポートランド」の募集があったので、このチャンスは逃してはいけないという思いで参加を決めました。
キャンプでは、「クリエイティブ」を切り口として、ナイキ本社のキャンパスから始まり、ポートランドの食をテーマに新たな仕掛けをしている方々、ホームレスの支援や有色人種の仕事の確保といった社会的問題解決の視点も持ちながら木工や版画などの作業場を運営されている方、温かみのあるグリーティングカードを少人数の職人さんたちでつくっている活版印刷の仕事場、行政に頼らずに多様性を優しく受容するまちづくりを進めるディベロッパーなど、今思い起こしても、たったの6日間でよくこれだけ回れたなというくらいバリエーションに富んだ場所を訪れ、貴重なお話を伺うことができました。
キャンプに参加するまでは、私自身は「クリエイティブ」とは真逆の人間だと思っていて、違う世界を覗いてみようという気持ちだったのですが、「クリエイティブ」について突き詰めて考えてみると、それは全く特別なことではなく、自身の選択の繰り返しで毎日をつくり、未来をつくり、人生をつくっていくという意味では、生きていること自体がクリエイティブと言えるのではないかという考えに至りました。そして、ポートランドで出会った皆さんに共通していた「自他の個性を大切にして認め合っていること」、そして、「未来や社会への理想に対して信念をもって積極的に働きかけていること」は、誰もが輝ける社会の基礎となるものであり、行政の仕事に携わっている者として大事な視点に改めて気付かせていただきました。
「クリエイティブ」を自分のこととして考えられるようになった今は、「新旅学のすすめ」で身につけた方法で自分の「好きなこと」に意識を向けて深めていく喜びを感じて生活できるようになり、仕事の面では、ポートランドでの多様性の学びから、これまでの狭い枠を取り払い、思考の幅がぐっと広がったように思います。
「クリエイティブ」が私を救ってくれるという直感は見事に当たり、それまでの行き詰まった感じから完全に抜け出すことができました。言わば、自由大学は私の命の恩人です。
もし以前の私のように、息苦しさを感じていたり、忙しさのあまり自分を見失いそうになっている方がいらっしゃれば、「新旅学のすすめ」は本当におすすめの講義です。少しだけ走るスピードを落として、仲間と一緒に周りの景色を楽しんでみると、きっとあなたにしか発見できない気付きがあるはずです!
第4期卒業生 Mariko.T