講義レポート

ポートランドで同じ窯のピザを食う

CREATIVE CAMP in ポートランド2019 キュレーターコラム  奥野 剛史

ガイドブック『TRUE PORTLAND』2020年版の取材で、6月下旬からアメリカ・オレゴン州のポートランドへ行ってきた。黒崎さんやメディアサーフのメンバーが入れ替わり立ち替わりで、ともに約2週間。

ポートランドにいる間はいつも、普段以上にクラフトビールを飲み、アイスクリームやドーナツなどの甘いものも食べている。「昨日もケーキ食べてましたよね?」みたいな(正確にはソルテッド・ハニーパイ)。近隣で豊富にとれる野菜を始め、地元の新鮮な食材を使った料理を食べていると、それだけでも元気になってくる。

ポートランドのスモールビジネスやショップは、やっている人の顔が立っているところが多い。今回初めて行った Yonder もそう。去年まではポップアップのみでの営業で人気となり、今年の春にオープンしたフライドチキンのレストラン。
ノースカロライナ州出身の オーナーシェフ Maya さんにとって、おばあちゃんのところに遊びに行った時にいつも作ってくれて楽しみにしていた南部料理が原点だという。おばあちゃん譲りのフライドチキン。 Maya さんのおおらかなキャラクターが、お店の雰囲気やそこで働く人たちにも出ているように感じた。

ノースイーストにある Pip’s Originals のドーナツとチャイも、ポートランドに行く時には食べたくなるもののひとつ。7月初めに行った時は朝から親子連れも多く、子供の誕生日を祝っているテーブルもあった(誕生日のお客さんには、お店からドーナツ1ダースをプレゼント!)。ローカル感のあるアットホームな空間で、スパイスの効いた自家製ブレンドのチャイをすすりながら、たこ焼きくらいのサイズのドーナツをのんびり味わうのがいい。

Pip’s は「Community Not Competition」というモットーを掲げている。競争じゃなくてコミュニティー。オーナーの Nate さんは、ポートランドの他のドーナツ店を訪ねてインスタグラムでおすすめしていることもある。
ブリュワリーでも、お客さんに「次はここのブリュワリーに行くといいよ」と教えてあげて、お互いにお客さんを送りあったりしていると聞いた。自分たちだけが一人勝ちしようというのではなく、同業者みんなで盛り上げて、コミュニティーを楽しくしていこうという考えがある。

9月16日から今年も開催される 自由大学の CREATIVE CAMP in ポートランドは、ガチガチにスケジュールされた訪問先をただ足早に周るのではなく、そこはポートランド流に。集まった人の好奇心に応じて、インタラクティブに動いていく。
洋服屋の奥、こんなところにあるんだという、角打ちスタイルのナチュラルワインバー Ardor にもフラッと立ち寄って、グラスを片手にお店の人も一緒に話したり。そこにも、こういう仕事のやり方もありなんだ、という発見がある。

夜には窯で焼かれたピザをシェアして食べたりしながら、ポートランドで見たこと、聞いたこと、感じたことをいろいろ話す。季節は夏の終わりで、まだ雨が多くなり始める前の時期。カラッと開放的な空気の中、動き出したくなる、新しい思いが生まれてくるはずだ。

text : キュレーター  奥野 剛史

担当講義:  CREATIVE CAMP in ポートランド2019



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