講義レポート

カフェから生まれるコミュニティ

小さなカフェをつくる キュレーターコラム 藤田 操

はじめまして、藤田操(ふじたみさ)と申します。自由大学の理念に共感して、この冬からキュレーターとしてかかわらせていただくことになりました。

ふだん私は武蔵野プレイスという図書館に併設されたカフェのマネジメントをしています。お酒が飲めたりするような、ちょっとだけ常識をはみ出しているお店です。そこでフードコーディネートやシフト管理など、お店を支える業務をベースに活動しつつ、最近ではイベントを企画する機会が増えてきました。

なぜイベントを企画するのかというと、何かを学びたい人や探究したいと思う人に来てもらいたいから。それこそが、図書館カフェの存在意義だと考えます。そしてその人と人がつながり、ここからコミュニティを作りたいという強い思いがあるんです。

ところで、どうして人はカフェに来るんでしょう?

理由はそれぞれだと思いますが、2つの真反対のニーズがあると感じています。

ひとつは「カフェで1人の静かな時間を過ごしたい」ニーズ。仕事や家庭がしんどい時、どこかでひとり心を休めたい。そんなとき、カフェはやさしい存在になる。居心地のよいインテリアの中でおいしいお茶やケーキが運ばれてきたら、緊張や苦しみがほどけるように感じるでしょう。

もうひとつは「カフェで誰かと繋がりたい」ニーズ。友達とお茶をしたい時、カフェはちょうどいい場所になるでしょう。自分の家ではないけれど、くつろぎながらおしゃべりできる。好きな人と会う場所として、カフェは最適かもしれません。

そして私がいまカフェで取り組んでいるのは「知らない人同士がつながるしくみをつくること」です。その方法のひとつが、イベントの開催。イベントのテーマはさまざまで、カフェに来てくれるお客様の顔や雰囲気を見ながら、テーマを創造していきます。

イベントに参加した方々は、初めて会ったにも関わらず仲が良さそうに見えます。別れ際にラインを交換をする方もいます。そんな風に、一人一人の世界が広がっていくような場所(カフェ)が家の近くにあったら、とってもすてきな人生だと思うのです。その思いこそが、私を動かしてくれる原動力です。

カフェの可能性は無限大。多様性があり、ひとつとして同じカフェはありません(たとえチェーンのカフェであっても)。そして私たちはカフェの何に惹かれているのでしょう?素敵だなと感じるカフェには、どんな魅力があるのでしょう? それを探究する事で、私たちは何かを掴めるかもしれません。

 

【影響を受けた本】

『私の個人主義』夏目漱石

本人の講演を収録した短編集。以前、私は他人の目を気にしてばかりでいつも不安でした。でもこの本を読んで心に光が差しました。漱石は留学時代に『自分とは何か』という壁にぶつかりました。悩んだ果てに『私は初めて、概念を根本的に自力で作り上げるよりほかに、私を救う途はないのだと』と悟ります。個性を活かして幸せに生きるには、自分が意志を持って探究するほか道はない。図書館は全ての人にひらかれた知の扉です。そこで探究する人を私は応援していきます。

 

TEXT:キュレーター藤田 操

担当講義:小さなカフェをつくる



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