導入:哲学って何だ?
哲学ってよく聞くけどそもそも何だかよくわからないという人は多いのではないでしょうか。初回は、哲学とは何か?そして哲学がなぜいま必要なのか?を考えます。そして「自由」をテーマに少しだけ哲学対話をしてみましょう。
「私たちって本当に自由なの?」「自由って本当にいいこと?」「表現の自由ってどこまで?」「他者の自由と自分の自由が衝突したとき、どっちを優先すべきなの?」
対話で見つけるもっと自由な世界
友達と食事をした帰り道。久しぶりに気の置けない仲間と盛り上がり、あなたはいい気分で一人、家路を歩いている。ふと前を見ると、煙があがるアパートが。「火事だ!」と叫んだが、あなたの辺りに人の気配はない。消防車を呼ぼうと焦っていると、アパートの中から人の声がする。急いで向かうと、脚の悪いおばあさんが逃げようと必死にもがいているのが見える。火はどんどん強くなるが、おばあさんを助けなきゃと勢いよくアパートに入るあなた。
おばあさんを無事に助け、手を引いて避難を急いでいると、隣の部屋から泣き叫ぶ子供たちの声が聞こえる。なんと、3人の子供が動けなくなっているではないか!
どうにかこの子たちを助けたいが、脚の悪いおばあさんの手を引いて助けにはいけない。置き去りにして3人のもとへ行くと、おばあさんは確実に火に飲まれてしまう……
「最初のおばあさんだけ助け、3人を諦めるべきなのでは?」
「より多くの、未来ある子どもたちを助けるべきじゃないの?」
「え、でも人を助けるために誰かを殺すことって本当に許されるの?」
「おばあさんを置き去りにしたら私は殺人者?」
「人数によって正義って変化しちゃうの?」
「ちょっと待って、どちらも見捨てれば何の責任を負わなくて済むのでは?」
ぐるぐる考えても、どの考えが正しいのか、なにがより善い答えなのか、すぐにはわからないものです。ふと立ち止まってみると、わたしたちの人生、答えがわからないことばかり。みんなが違う考えを持っていて、わかり合える気配すら感じないことも。
古代ギリシャのアテネ。哲学者ソクラテスは毎日のように街の広場(アゴラ)に足を運び、市民との対話を重ねます。「正義とは何か?」「知とは?」「国家とは?」「愛とは?」。対話こそが、哲学の始まりでした。
時は流れ、2017年。誰もが生きづらさを抱える困難な時代。「多様な人間がどのように共存できるか?」「そもそも人はわかりあえるのか?」ということが、いま世界で問われています。この状況で一番必要なこと、それは「他者との対話」です。
いまを生きるため、そして未来を創るためには、既存の答えや常識、社会通念に従うのではなく、自ら思考し、よりよい答えを探究する必要があります。そして、多様な価値観や意見を尊重し、考えを深めるためには、一人で考えるだけではなく、ともにこの世界をつくっている他者とのコミュニケーションが不可欠なのです。
この講義では5回に渡り、普段はあまり考えない重要なテーマ「自由」「正義」「感性」「愛」を掘り下げます。 受講生のみなさんが主役です。自分で考え、自分の言葉で話すことが何よりも大事。みなさんにも“哲学者”として参加していただき、自由に語り合う時間を設けた“対話”型の講義にします。
事前に哲学の知識は全く必要ありません。答えは、本や偉人たちの頭の中にあるものではなく、私たちが一緒につくるものです。一方的に知識を与える日本の旧来の教育システムでは、考える力は伸びません。絶対正しい答えが存在しないのに、教えることは誰にもできないからです。
哲学的な対話は、相手を論破し、勝敗を決めるディベートとは異なります。すぐにひとつの答えは出ません。しかし「人それぞれ」でも、安易な共感を求めるものでもありません。すぐにはわかり合えない多様な人たちと、とことん問い合い、わかり合うことを目指しながら一緒に考える“協働”こそが、いまの社会を生き抜き、未来を築くために最も大切なことなのです。
講義では担当キュレーターがファシリテーションをしながら対話に参加し、哲学のガイドをします。さらに毎回講義の最後に対話中に出た論点を整理し、哲学史を踏まえながらその回に関する哲学者の理論や学説も紹介します。
他者との対話であなたが変わる、他者が変わる、コミュニケーションが変わる。
そして、世界が変わる。
“自由”を目指し、これからの未来を一緒に創っていきましょう!
・哲学的な思考やコミュニケーションが学べる
・今まで気付けなかった自分の“問題”を発見し“深い考え方”ができるようになる
・多様な価値観に触れることで、広い視野を手に入れられる
・普段は話しづらいテーマをじっくり深められる
哲学は理由を探す旅だと思います。何となく分かったつもりになっていることや、疑うことなくずっと信じてきたことが私たちにはたくさんあります。この世界に自分しかいなければそれでも困ることはないけれど、他者の存在は私たちの「当たり前」を揺さぶるでしょう。違和感、困惑、驚き、不安、怒り…ここから哲学が始まります。それは、自分が何となく引き受けてきたこと、ただ信じてきたことに理由を探し、他者に理由を問い、そして共有できる理由を共に探究していく旅です。目的地の「真理」は陽炎のようで、なかなかたどり着けないかもしれませんが、旅の道程を一緒に楽しみましょう。
(第4期募集開始:2017年11月13日)
第1回
哲学ってよく聞くけどそもそも何だかよくわからないという人は多いのではないでしょうか。初回は、哲学とは何か?そして哲学がなぜいま必要なのか?を考えます。そして「自由」をテーマに少しだけ哲学対話をしてみましょう。
「私たちって本当に自由なの?」「自由って本当にいいこと?」「表現の自由ってどこまで?」「他者の自由と自分の自由が衝突したとき、どっちを優先すべきなの?」
第2回
誰かを助けるために他の人を犠牲にすることって許されるのか?これは、いま世界で起きている様々な問題を考える上で避けられないシビアな問題です。この倫理的な問題を「トロッコ問題」を使って考えます。
「絶対的な正義はあるの?」「相手や人数によって正義は変わるの?」「正義のためならなにをしてもいいの?」「決断を支える理由の正当性ってどこから出てくるの?」
第3回
3回目は「感性」や「感情」がテーマ。理由は言えないけどいいな、美しいな、好きだなという感情は誰もが持つでしょう。なんとなく惹かれるもの、魅力を放つものは論理以上の力を発揮することも。でも「理由を説明できない」ということは不安なことでもあります。感性と理性の関係をめぐって、言論とアートの役割を考えてみませんか?
「理性は感性に勝てるのか?」「正しさより美しさの方に説得力があるのか?」「いいと思うものは人と共有できるの?」「どうして美しいものを誰かと共有したくなるのか?」
第4回
人類愛、隣人愛、自己愛、家族愛、恋愛。愛は、哲学においても、私たちが日々生きる上でもとても大事なテーマです。
「自己愛って悪いもの?」「人を好きになるってどういうこと?」「愛と恋ってどう違うの?」「人類愛って本当に可能なの?」「愛があれば何をしても許されるの?」「愛は共有できるの?」
第5回
これまでの講義を振り返りながら、受講生から「問い」を出してもらい、その問いをみんなで考えます。