哲学って何だ?
哲学ってよく聞くけどそもそも何だかよくわからないという人は多いのではないでしょうか。初回は、哲学とは何か?そして哲学がなぜいま必要なのか?を考えます。そして「自由」をテーマに少しだけ哲学対話をしてみましょう。
「私たちって本当に自由なの?」「自由って本当にいいこと?」「表現の自由ってどこまで?」「他者の自由と自分の自由が衝突したとき、どっちを優先すべきなの?」
対話で見つけるもっと自由な世界
昔、ギリシャにテセウスという英雄がいた。ギリシャ人たちは彼を尊敬し、彼が仲間と共に国に帰還した船を大切に保管する。しかし時が経つにつれて、当然船は朽ちていった。そのたびにギリシャ人たちは、大切な船を修理し続けた。朽ちた木をはがして新しい木で補強し、壊れた櫂を新しいものに取り替える。ギリシャ人たちは丁寧に仕事をしたので見た目には何の変化もなかったが、とうとう全ての部品が置き換えられてしまった。
さて、ここで疑問が。
「すべての部品が置き換えられた船は本当にテセウスの船?」
「そうだとしたら、そもそもテセウスの船とはなんだったの?」
「そうでないなら、いつまでテセウスの船だったの?」
「取り替えられた古い部品を集めて別の船を組み立てたら、そっちがテセウスの船?」
では、これが船ではなく“私”の話だったら?
私は私。全ての細胞が入れ替わっても記憶がある。意志があり、自分を自分だと認識し続けている。船とは違う、と思う。でも、たとえ自我の有無によって「船と私は違う」と言えても、周りの人にとってもそうだろうか。私は、自分が変わっていないことをどう伝えられるのだろう…。
ぐるぐる考えても、どの考えが正しいのか、なにがより善い答えなのか、すぐにはわからないものです。ふと立ち止まってみると、わたしたちの人生は答えがわからないことばかり。みんなが違う考えを持っていて、わかり合える気配すら感じないことも。
古代ギリシャのアテネ。哲学者ソクラテスは毎日のように街の広場(アゴラ)に足を運び、市民との対話を重ねます。「正義とは何か?」「知とは?」「国家とは?」「愛とは?」。対話こそが、哲学の始まりでした。
時は流れ、2017年。誰もが生きづらさを抱える困難な時代。「多様な人間がどのように共存できるか?」「そもそも人はわかりあえるのか?」ということが、いま世界で問われています。この状況で一番必要なこと、それは「他者との対話」です。
今を生きるため、そして、そこから未来を創るためには、既存の答えや常識、社会通念に従うのではなく、自ら思考し、よりよい答えを探究する必要があります。そして、多様な価値観や意見を尊重し、考えを深めるためには、一人で考えるだけではなく、ともにこの世界をつくっている他者とのコミュニケーションが不可欠なのです。
この講義では5回に渡って、あまりに身近すぎて普段考えないテーマ、「自由」「自分」「社会」「働くこと」「生きること」を掘り下げます。
受講生のみなさんが主役です。自分で考え、自分の言葉で話すことが何よりも大事。みなさんにも“哲学者”として参加していただき、自由に語り合う時間を設けた“対話”型の講義にします。
事前に哲学の知識は全く必要ありません。答えは、本や偉人たちの頭の中にあるものではなく、私たちが一緒につくるものです。一方的に知識を与える日本の旧来の教育システムでは、考える力は伸びません。“絶対正しい答え”が存在しないのに、教えることは誰にもできないからです。
哲学的な対話は、相手を論破し、勝敗を決めるディベートとは異なります。すぐにひとつの答えは出ません。しかし「人それぞれ」でも、安易な共感を求めるものでもありません。すぐにはわかり合えない多様な人たちと、とことん問い合い、わかり合うことを目指しながら一緒に考える“協働”こそが、いまの社会を生き抜き、未来を築くために最も大切なことなのです。
講義では担当キュレーターがファシリテーションをしながら対話に参加し、哲学のガイドをします。さらに毎回講義の最後に対話中に出た論点を整理し、哲学史を踏まえながらその回に関する哲学者の理論や学説も紹介します。
他者との対話であなたが変わる、他者が変わる、コミュニケーションが変わる。
そして、世界が変わる。
“自由”を目指し、これからの未来を一緒に創っていきましょう!
・哲学的な思考やコミュニケーションが学べる
・今まで気付けなかった自分の“問題”を発見し“深い考え方”ができるようになる
・多様な価値観に触れることで、広い視野を手に入れられる
・普段は話しづらいテーマをじっくり深められる
哲学は理由を探す旅だと思います。何となく分かったつもりになっていることや、疑うことなくずっと信じてきたことが私たちにはたくさんあります。この世界に自分しかいなければそれでも困ることはないけれど、他者の存在は私たちの「当たり前」を揺さぶるでしょう。違和感、困惑、驚き、不安、怒り…ここから哲学が始まります。それは、自分が何となく引き受けてきたこと、ただ信じてきたことに理由を探し、他者に理由を問い、そして共有できる理由を共に探究していく旅です。目的地の「真理」は陽炎のようで、なかなかたどり着けないかもしれませんが、旅の道程を一緒に楽しみましょう。
(第2期募集開始:2017年7月3日)
第1回
哲学ってよく聞くけどそもそも何だかよくわからないという人は多いのではないでしょうか。初回は、哲学とは何か?そして哲学がなぜいま必要なのか?を考えます。そして「自由」をテーマに少しだけ哲学対話をしてみましょう。
「私たちって本当に自由なの?」「自由って本当にいいこと?」「表現の自由ってどこまで?」「他者の自由と自分の自由が衝突したとき、どっちを優先すべきなの?」
第2回
第二回目は、あまりに身近な「自分」がテーマ。“私”から問いが生まれ、“私”が考えるからには、その自己について考えずに哲学は始まりません。
「アイデンティティってなに?」「私ってどこまで?」「なぜ私は私なの?」「記憶が入れ替わっても私?」「整形手術をしても私?」「私が消えても世界は存在する?」「自己愛ってなに?」
第3回
私たちは他者と関わりながら社会の中で生きています。哲学史を見てもずっと「人間は社会的動物である」という考えは主流でした。でも、社会って一体なんでしょうか。
「どこから社会?」「社会なんて本当にあるの?」「“社会の常識”って何?」「社会人って何?」「社会と私はどう関係しているの?」「個人は社会に対して何ができるの?」「社会を変えるって何?」「パブリックって何?」「他者ってなに?」
第4回
赤ちゃんは寝ることが仕事、子供は学校行くことが仕事、大人は働くことが仕事? 仕事、働くこと、お金等を巡って、人間の活動について考えてみませんか。
「人はなんのために働くの?」「1億円あっても働く?」「仕事するって偉いこと?」「ボランティアは仕事?」「人工知能のせいで本当に仕事はなくなる?」「趣味を仕事にできる?」
第5回
ソクラテスは「単に生きることではなく、善く生きることが大事だ」と主張します。“ちゃんと生きること”は、簡単なようで実は難しく、時に人生から逃げたくなることも。しかし「生きること」について真剣に考えることで、私たちは生きやすくなるかもしれません。
「いい人生って何?」「よく生きる意味はあるの?」「そもそも生きる意味はあるの?」「”生きる意味”を問題にする意味あるの?」「生まれたからって生きなきゃいけないの?」「自分の人生は自分のもの?」