世の中にはクライアントワークという仕事とセルフワークという二つの仕事があるようです。前者は自分以外の他人からの依頼や指示を的確にまた時間内に完遂することで、その対価をいただく仕事です。自由はあまりないですが、安定した依頼主との間との契約が長期化すれば安定を勝ち取れるケースがあります。
一方後者のセルフワークとは、仕事の主人はあくまで自分です。自分の想いに寄りかかりながら構想を練り、必要なリソースを集めて必要な価値を提供していく。希少性の高いサービスや製品を提供できればたくさんの共感者が増えていくものです。コミュニティともいえるその輪を広げることが安定につながります。後者は圧倒的に自由があるとしましょう。自由とはこの場合、自分に由る、寄りかかるとしましょう。
前者と後者を両立させる生き方もよくおこります。ライスワークとライフワークという方々もいて、一週間の稼働の中で○○%のリソースをライスワークに注ぐなどと表現します。フリーランスや個人エージェントの総数は増加傾向にある中で経済的な価値は希少性です。クライアントワークであれ、セルフワークであれ、無駄のように見える行為もオリジナリティが高まるプロセスになる場合もあります。
カンボジアで小規模で始まったラム酒の商売はこの場合セルフワークといえます。中米からやってきた2人の起業家はカンボジア内で地産されるサトウキビに注目し、自分たちに鹿できない希少性としてラム酒の販売を企みます。さらに、カンボジア国内で活躍するクリエイティブクラスにターゲットを絞り、週に一回工場を解放し、独自のコミュニティを作り盛り上げます。様々なトレンドや文化を分かち合うコミュニティメンバーの会話を促すラム酒は飛ぶように売れます。あくまでセルフオーナーシップにこだわった彼らは数々の投資を断り続けながら、独自性を極める道を歩みます。三種類のラム酒がある一定のレベルに達した時、生産体制を大幅に拡大する必要に迫られます。忠誠を払ってきたコミュニティからの要望=需要の高まりともいえます。そこでかれらは投資を受ける道を歩みます。カンボジア産のラム酒が日本の街中で晩酌できるようになる日もそう遠くないでしょう。
彼らのストーリーをサクセスストーリーとして捉えることもできなくはありませんが、私たちはそれよりも、彼らがむやみやたらに拡大拡張をしたり、マーケティングなどの科学を使い込まなかった部分に着目しています。もう少しかいえば、彼らにしかできないプロセスにこそ希少価値は宿るのだ考えています。こういったセルフワークを創造するためのセルフワークローンチを促すプログラムを開発してみようと思います。 自由で飽きのこないシゴトにこそ自分の想いや生き様が宿ります。自分に由るともいえますが、私たちは新講義「Culture Entrepreneur」においてもこういったコンセプトで臨んでいきたいと思っています。
(text:キュレーター 本村拓人)