講義レポート

西アフリカ•マリ〜時空を超えた永遠の聖地

コラム 「共生のシャーマニズム学」SUGEE教授

共生のシャーマニズム学

西アフリカにはグリオと呼ばれる世襲制のミュージシャンがいます

日本でいうと能や歌舞伎の家系のようなもので冠婚葬祭を全て音楽を奏で取り仕切る”シャーマン”的な存在です。

西アフリカの人達は文字を持たなかったので創世の神話も全て口伝で彼らが伝承します。

僕は2001年にマリ共和国のグリオの聖地ケラを訪れ、国民的シンガーだったシラモリ•ジャバテの娘であるビンタンからグリオの歌を習いママディ•ジャバテという名前を頂いてきました。

電気もガスも水道も整っていない環境の中で音楽と人間の原点にどっぷりと浸った数ヶ月は僕の宝物で、その体験があまりにも素晴らしすぎて2度とケラの地を踏めないままあっという間に20年が経ってしまいました。

ところがです。

やっと自分の中で「花神」という自分らしさを反映させたオリジナル曲が誕生し、故郷館林の神話に基づいたお祭りを復活させようと決意した瞬間に、またマリのファミリーに会えると思ったんですね。

地に足がついたと言うか、もしかしたらグリオの家族に僕自身を再び語れる瞬間がきたな、と。

というわけで23年ぶりに今年の2月にグリオの聖地であるケラに里帰りして来ました。

ケラに入ると僕の歌の母であるビンタンを始めとしたケラ村の人たちはまるで1月程の旅から戻って来たかのように、僕を歓迎の唄と共に優しく迎え入れてくれました。

お互い思い合っていれば距離も時間も関係なく、やはり僕らは家族なんだ。

改めてそう思いました。

音楽が全てを内包し優しく包み込むケラ村は僕が初めて訪れる前からずっと夢に出てきていて、それはもしかしたらこの村だけではなくて全ての人たちが持つ原風景のようなものだったのかもしれません。

初めてケラに入った日の夜に「ここはずっと夢に出て来てたんだよ。」と僕が伝えると彼らは「お前が好きな場所なんだから当たり前だろ。」と鼻で笑いすぐに次の話題に移ってしまったのを思い出します。

1人でも村の中で不機嫌そうな人がいれば誰かがすぐに声を掛けてもし翌日もその人が不機嫌な顔をしていようものなら村全体の問題になる。

僕が音楽家として誕生した西アフリカのグリオの聖地はそんな場所であり、全てはそれぞれの深いスピリチュアリティと愛によって成り立っているんですね。

奇跡のように残っている人間のありのままの原風景。

今回も最後の夜に開いてくれたお祭りの中で彼らと思い切り歌い笑い踊った瞬間は、間違いなく時空を超えた”永遠”だと思いました。

 

【影響を受けた本】

アルケミスト」パウロ・コエーリョ

このブラジル人作家の著作はほぼ全部好きなのですが、ロマンと鋭い洞察が同居しているので大好きです。

環境や未来への示唆にも富んでいます。

心からのお勧めです。

 

TEXT: 旅するシャーマン SUGEE

担当講義: 共生のシャーマニズム学 (受講生募集中!)



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