講義レポート

『怪談』は東北を知る近道

キャンプ in 仙台 活動レポート

こんにちは、自由大学キャンプin仙台・プロジェクトリーダーの大内征です。
12月初旬、仙台荒浜にある遠藤農園の一角で、野菜の収穫を行ってくる予定です。これらの野菜は、9月に実施した学びと復興支援『キャンプin仙台』シーズン2の参加者を中心に一人ひとりが植えたもの。今から出来具合が楽しみです。
さて、そのシーズン2からずいぶんと時間が経ってしまいましたが、雑誌『仙台学』編集長の千葉さんによる講義の様子をレポートします。
お彼岸という時期に行ったこの支援キャンプは『祈り』をテーマとし、鎮魂の姿勢と地域理解への道筋のひとつとして、神話や怪談といった地域伝承を取り上げた地域講座を行いました。折しも台風の直後で、荒浜の多くの農地が数日間冠水した状態。そんな中、遠藤農園の近所ではそれを免れた鳥居と祠があり、これから学ぶ地域伝承との、何らかの”つながり”を想像せずにはいられませんでした。
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講師は、雑誌『仙台学』の編集長・千葉由香さん。7月のサマーキャンプの講義でも大変好評だった千葉さんの地域講座。その優しい語り口から紡ぎだされる”怪談”は、いわゆる”怖い話”とは一味違う、東北各地に古くから根付く不思議で意味深い文化・風習といったことから、東北そのものについて理解するための、道標のようなお話でした。
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昨年は柳田国男の『遠野物語』からちょうど100年 ということで、『仙台学vol.10』ではみちのく怪談を特集し、大きな反響を呼んだそうです。その際に東北各地で行った取材経験からも、やはり“東北”への理解を深めるには、こうした地域伝承やその土地で語り継がれる物語に触れることが一番の近道になる-そう話してくれた千葉さん。
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例えば、東北が持つ独特の『死生観』は、その地域に独特の文化を生み出し、ある種変わった風習となって今日に伝わっています。そのひとつが、『むかさり絵馬』という風習でしょう。
みなさん、『冥婚』という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
たとえば山形県村山地方に伝わる『むかさり絵馬』は、さまざまな理由で結婚できずに亡くなった子のため、家族が絵馬にあの世での結婚式の様子を描き、供養するというもの。
こうした風習には、生きている人にとって”自分の気持ちを静める”といった側面もあるようです。家族の気持ちとしては、生きていればそういう年頃になるわが子に、せめて来世では独りではなく家族をつくって幸せになってほしいと願わずにはいられないのだと思います。
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単に東北の文化や地理、歴史を学ぶということではなく、こうした独自の視点から東北を知ろうとするのが、自由大学らしいところです。キャンプ参加者も熱心に耳を傾け、バックナンバーを含めた『仙台学』や関連書籍を手にしていました。
物事を学ぶ際、新しいことや技術的なことばかりに注目するのではなく、それに関する歴史的な経緯や先人の足跡を丁寧に辿るという行為が、実はとても大切なことだと考えています。
この支援キャンプの参加者の多くが、ここ仙台をはじめ東北との縁が浅いということもあり、まずは仙台を含めた”道の奥”について少しでも関心をもってもらおうと選択した題材が”怪談”だったわけですが、結果的には、東北の歴史等にも言及していただけて、充実の講義となりました。講師を受けてくださった千葉さんの表情が、すべてを物語っているように思います。
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とはいえ、実は僕自身、この『むかさり絵馬』をはじめ、千葉さんのお話のほとんどを知りませんでした…。仙台出身で、地元を走る仙山線(仙台と山形を結ぶ地域路線)で何度も山形に訪れているにも関わらず。そんな訳で、僕自身が一番勉強させていただいたのかもしれません…。



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