講義レポート

クリエイティブなことに自信を持つ環境とは何か?

クリエイティブリユース学 教授コラム 小島幸代

今、ポートランドにいます。今回で3回目。
泊まっているAirbnbでふと日本の曲を聴きたくなり、たまたま流れたMISIAの曲にじんわりしています。

”誰も皆 満たされぬ時代の中で 特別な出会いがいくつあるだろう 時に羽 空に青 僕に勇気を そして命を 感じるように

明日が見えなくて 一人で過ごせないよ もがくほど 心焦るけど 音もなく 朝が来て 今日がまた始まる 君を守りたい” 出典: つつみ込むように…作詞/作曲:島野聡

昨年、私は世界課題を解決するスタートアップの創業・成長支援する Mistletoeで人事の仕事をしていました。

世の中が大きく変化する現在において思考停止しないで働き方を見つめようというきっかけ作り、普通の会社の社長だったらこんなメンドクサイ事しないなって、一人一人の働き方の未来について、一緒に考えるって大変ですが、創業者の孫泰蔵さんはむしろやってやろうと意気込み満タン。そんな意気込みに押されて未来に対してポジティブになれるスタッフとの対話の機会を沢山作りました。やがて職場であるオフィスをなくし、雇用形態の在り方も正社員から業務委託、独立する人も増えて変わりました。「自立した個人の自律的な集まり」を創るミッションの元、イノベイティブな人事改革が落ち着いた時「何をやってもいい、でも《絶対やりたい》っていう仕事はなに?」と私にも順番が回ってきました。もう既に自分で会社を持ち嫌な仕事はしていないのに「絶対やりたい」と問われると、なんだろうと深く考えるようになりました。

「誰しもがクリエイティブなことに自信を持ってもらったり、発想が生まれたりする新たな環境づくり」が私のやりたいことかもしれない。
クリエイティブに特化した15年間の人事・採用業務、自分の深いところにあったあたりまえの原動力をそれまで言葉にしたことはありませんでした。

そして「(個人の自律を後押しする)クリエイティブなことに自信を持つ環境とは何か?」この問いの答えを探すなか、ふと飛び込んだ米国ポートランドで「クリエイティブ・リユース」に出会いました。

友人と訪問した SCRAP PDXは家庭や企業の廃品寄付をベースとしたクリエイティブ・リユースストアです。友人はシングルマザーで9歳になる娘さんを連れていました。娘さんは日本では学校嫌いの不登校、モノづくりが大好き、そんな女の子でした。そこで彼女がお店に入って開口1番「宝の山だー!」と叫んだことでハッとしたんです。

ノリがない!ホッチキスが壊れた!絵の具が欲しい!毎日、母親にねだっていた彼女は小さい頃の私にそっくり。そのフラストレーションの解決がココでできている!
家庭で集めた廃品をクリエイティブ素材として楽しく安く買えるお店として成り立たせ、それで多くの子供やモノを作りたいという人たちの想像力を後押しする共助のシステム。

子どもからお爺ちゃん、お婆ちゃんまで利用できる身近なものづくりの環境の実現はここにあったのかと。そしてそれはモノを廃棄することなく「Re- Creation(再創造・気晴らし)」価値を見出す行為によって、人間の想像力を喜び、笑顔がたくさん生まれ、混じり、さらに良い世界になるんじゃないかと感じました。

「これは日本でも必要だから作りたい」の一心で動いています。応援してくれる人たち、メンバーとの特別な出会いが、まだよくわからない未来を開いていく勇気です。私たちが作るお店はきっと愛情深いお店になると思います。

【影響を受けた本】

クリエイティブリユース―廃材と循環するモノ・コト・ヒト
大月 ヒロ子 (著), 中台 澄之 (著), 田中 浩也 (著), 山崎 亮 (著), 伏見 唯 (著)


本から言葉を借りると
『クリエイティブリユースには、廃材の調査→収集→分類・整理→開発→制作→流通・販売→啓発という大きな循環があり、そこに関わる人同士のコミュニケーションを活発にする』 というのをここ数ヶ月ですごく身近に感じるようになりました。それは、廃材の活用には子供からお年寄り、そしてアーティストやデザイナー、社会的弱者、大学の研究者など、様々な立場の人が関わることが可能で、あまり難しいこと抜きに誰しも「良いこと」と感じられるからです。

 

text:教授   小島幸代

担当講義: クリエイティブリユース学



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