クリエイティブリユースとは何か?
(全体講義のアウトラインや参加メンバー紹介。)・クリエイティブリユースの考え方についての概要、なぜこの講座が始まったかの経緯など
新講義
廃材をステキに再循環させるモノづくり
私たちはすでにモノを持っている。大量生産・消費・廃棄に流されないクリエイティブ思考力と実践力をつけよう
「捨てるのがもったいない、これ何かに使えないかな」
「これは本当にゴミなのだろうか」
一度でもそう考えたことがある方は、センスがあります。
資本主義世界の指標になる「経済成長」は、景気を左右する最も大きな要素。
今の社会に流されると、日々私たちは「消費」のプレッシャーに包まれています。
・消費を活性化させるための大量生産
・購買を刺激するための広告物
・製品寿命を短命にしたことによる廃棄率の高さ
こうした大量生産、大量消費、大量廃棄に慣れてしまっている社会でいいのでしょうか。
私たちは毎日、何気なく過ごしていると約1キログラムのゴミを地球に出している状況です。※1日1人あたりのごみ排出量は、920グラム(2019年3月26日、環境省発表)
資本主義社会の中で「経済成長=消費」に流されてしまっている私たち個人個人の思考停止が、地球環境を悪くしている。これでは、ほんとうに求めている幸せから離されていると思いませんか?
自らの創造性で生活をコントロールする楽しい学びが、クリエイティブリユース学です。モノを捨てることなく、人間の創造性をもって新しいかたちで活用する力を目覚めさせましょう。
クリエイティブリユースは、従来の「リサイクル」「リユース」と何が違うのか?
ゴミを減らす活動として、よく知られるのは「リサイクル」、「リユース」。
それらは特にデザインやアート性に着目することなく、ペットボトルをフリースの原料として使ったり、ビール瓶を回収・洗浄して再使用するなどが一般的です。
今回ここで取り上げる「クリエイティブリユース」は、企業や家庭の廃棄物を集め選別、整理しデザインやアートの素材として再利用を促進している活動です。有名なものを2つご紹介しましょう。
REMIDA – THE CREATIVE RECYCLING CENTRE
1991年アメリカの『ニューズ・ウィーク』誌に「最も革新的な幼児教育」として紹介されたイタリア、レッジョ・エミリア市のアプローチ。その一つを支える創造的リサイクルセンター・レミダ(REMIDA)は、1996年に市と多目的企業 ENIAによる共同プロジェクトとして作られました。子どもたちの表現活動に使われる素材を市と協力して企業から集め、保管し、乳幼児施設に無料で提供しています。市内200社と提携し、紙・金属・プラスチィック・布・機材など未使用の素材が集められ、今では世界20カ国以上に存在しています。
SCRAP
1998年にポートランドの公立学校の先生たちが、「学校教材の使い残しがもったいない」と教師の部屋の一つに廃品を集めたのがきっかけで作られました。上記のREMIDAとの違いは、個人からの廃材の持ち込みが7割です。2015年においては140 トン以上の廃材が再流通しています。ポートランドはSCRAPの旗艦店ですが、アメリカでは 他に5店舗展開しています。
また、「クリエイティブリユース」の同義としてよく話される「アップサイクル 」。モノを再資源化してリユースする従来のダウンサイクルではなく価値をあげるアップサイクル は、モノを捨てることなく、価値を増したプロダクト開発、アート作品で魅力を再定義(デザイン)した楽しいムーブメントです。
アップサイクル の先駆けとしては、1993年にスイスで創業したバッグ開発で有名なFREITAG(フライターグ)があります。トラックの幌、シートベルト、自転車のタイヤチューブなどを再利用し、メッセンジャーバッグなどを制作。今では世界展開しています。
日本では、若者のファッション文化を引率してきたビームスが、2017年デッドストック品を新たな1着へと蘇らせるアップサイクルブランドとして ビームス クチュール(BEAMS COUTURE) を展開して注目されています。
消費生活からコントロールする力を取り戻そう
この講義の目的は2つあります。
「クリエイティブリユースの可能性を学ぶ」
「アップサイクルプロダクトをつくる」
私たちがまず、一番大事にしたいのは共感からうまれるコミュニティビルディングです。
誰しも記憶にあり、すこし心残りを感じながら捨ててしまうもの。
・一度読んだだけのフリーペーパー。
・イベントで一時的に使った演出道具、装飾品、チラシ。
・子供の頃に最後まで使わなかったクレヨン・クレパス。
いつか使えるんじゃないかと、もったいなくて捨てられずにためているもの。
・誕生日プレゼントにもらった外国製の水性色鉛筆セット
・キャラクター消しゴム、キーホルダー、ステッカー。
・大量のブランド物の紙袋、包装紙、箱、缶、瓶、リボン。
・服を購入した時についてくる付属のハギレ、ボタン。
これらの捨ててしまうモノ、家庭で溜めているモノ。それは誰かが買おうと考えている必要なものかもしれません。家にあって使わないものは、近所の子供たちにとって宝物になるかもしれません。
クリエイティブリユースはそんな「使わないモノ」を周囲から集めることにより、「共助による創造的生活」を活性化します。それは新しいものをどんどん生産して消費し廃棄する資本主義から比べれば逆の発想、私たち自身が消費生活をコントロールする行動です。
すでに私たちが持つもので、なにをシェアすべき? 活かせるか? といった価値を考える機会は、共感する人同士の対話、まずは共感コミュニティを作るところからスタートします。
講座では、そのハブになることを第一の目的にします。世界的な実例を共に学び、継続できる楽しいアクションへと導ける思考力をつけ、コミニティビルディングのリーダーになる実践力をつけます。
みんなが笑顔になる、アップサイクルプロダクトをつくろう
価値がないと思うから、ゴミになってしまう。
何にでも価値を見いだし、さらに価値を増したプロダクト開発、アート作品を生み出すには、固定概念を捨てた創造的思考力が必要です。
たとえば子供は固定観念なくユニークな発想で廃材をアートに変えてしまう力がありますよね。私たちもそんな子供ゴゴロを持って、廃材を見つめ直し、再利用方法を研究し、商品プロデュースできる力を養いましょう。
【参考事例】本講座のキュレーター陣(RINNE)で開発した、端材でできるワークショップ
project_001 端材を使ったワークショップ
家や家具をつくる時にどうしても出てしまう半端な木材・木っ端から、誰でも工夫してできる愛らしい人形へ。
project_002 端革を使ったワークショップ
製品にならない端革や傷革、獣害として駆除された鹿の革など、捨てられてしまうかもしれなかった革素材を使った素敵なキーホルダー。
project_003 プラ材を使ったワークショップ
poRiff(ポリフ)の主な材料は、買い物をしたときにもらうレジ袋。一見捨ててしまうようなレジ袋をコラージュし、熱で圧着してカラフルなシートにしました。お好きな部分を切り取って、まあるくつなげてアクセサリーに。
講義の流れ
(1) 消費社会に対してアンラーンする(Unlearn:学習棄却する)
このまま私たちが何も考えず、大量生産・消費・廃棄の流れに乗ってしまう思考停止状態を見つめ直します。
(2) クリエイティブリユース/アップサイクルの潮流を知る
捨ててしまうものから新しいクリエイティブな価値を見出す「クリエイティブリユース/アップサイクル」について、世界における活動やプロダクトなどの最新動向を知る機会。
(3) クリエイティブリユース/アップサイクルの実践とフィードバック
廃材からのモノづくりを実践、学び気づいたことを参加者同士が共有する機会。
修了後に得られるもの
「廃材をステキに再循環させる、新しいクリエイティブ思考」
このテーマで本気で学びたいと集まったメンバーが、具体的なアクションにつながるようサポートします。
・講座を通して消費社会に甘んじることなく自ら創造的な生活を考える仲間をもつ
・廃材を通した地域の活性化、コミュニティビルディングのリーダーシップをもつ
・モノの価値を違った視点で考えられるようになり、発想が豊かになる
・廃材を研究し、活かすという知識と観点を得る
(ポートランドのSCRAP にて。左から2番目が小島さん)
教授 小島幸代さんよりメッセージ
「地球に良いムーブメントを創造的に楽しもう」
私の経歴はちょっと変わっているかもしれませんが、大学ではデザインを学び、クリエイティブな人事業務として15年の経歴を持ちます。このような経験から、クリエイティブなことに自信を持ってもらったり、発想が生まれたりする新たな環境づくりとは何だろうという「問い」がずっとありました。
あるきっかけで昨年ポートランドに訪問しましたが、その環境にあった Upcycling/Creative Reuse。家庭に眠っている文具や手芸用品、梱包材などをシェアリングエコノミーにすると、新たに素材を買う必要がなくなるわけです。それは誰もがクリエイティブに(何か創ろうとすることに)手が届きやすい環境が作れる。今まで考えてきたクリエイティブなことに自信を持つ人たちを増やせるんじゃないかなと、「問い」に対する大きなヒントを得ることになりました。
「クリエイティブリユース」には、廃材の調査→収集→分類・整理→修繕・開発→制作→流通・販売→啓発 という大きな循環があり、そこに関わる人同士のコミュニケーションを活発にします。それは、廃材の活用には老若男女、大学教授といった専門家からアーティストといったさまざまな立場の人が関わることが可能で、あまり難しいこと抜きに誰しも「良いこと」と感じられるムーブメントです。
この講義ではすでにプロジェクトとして動いているRINNE というクリエイティブリユースを推進するプロフェッショナルチームで教授・キュレーターを構成しています。プロジェクトのリアルな活動を実感していただき、共に楽しんで学べていけたらと思っています。
(第1期募集開始 2019年9月9日)
第1回
第2回
日本の江戸時代は循環型社会として、衣食住のあらゆ る場面でリサイクル・リユースが行われる機能が働いていたと言われます。その後の工業化、大量生産化の近代流れで失われてしまったものを振り返ります。そして、軽量で安価なプラスチック製品の拡大による地球環境汚染の現状、国内外の環境教育について知るとともに、解決策に向けた世界的ムーブメントについてここではお話しします。
また、世界における「クリエイティブリユース」施設(一例:Materials for the Arts 、SCRAP、REmida など)についても触れていきます。
第3回
ソーシャルインクルージョンは、「全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合う」という理念で、近年の社会福祉政策の課題となっています。実際、手間がかかる廃材の加工、手工芸作業は福祉施設に集まりやすい現状があります。そのような状況の中で、デザイン × 福祉のさらなる可能性を探るデザイナーから魅力や課題について共有です。
参考:のぞみ福祉作業所(南三陸)http://www.nozomipaperfactory.com/
「牛乳パック」「古新聞」を手漉き再生紙として製品化しています。
その製品NOZOMI PAPER®はJaGra作品展2017で厚生労働大臣賞を受賞。
障害のある人との協働から生まれているしごと・はたらき方を対象した Good Job! Awardで入選したり、take paper show2018でクリエイターの作品に使われたりと、高い評価を受けるようになりました。
第4回
実際に身近なクリエイティブリユースを集めてお持ちいただきます。
素材を知り、実際に加工する楽しみをワークショップ形式で実施します。
廃材を使ったワークショップキットを選んでいただき実際にお持ちいただいたものと組み合わせ、クリエイティブリユースを体験します。
(簡単な工具類などはお貸しします)
第5回
これまで学んだことから廃棄物から利用できる素材について持ち寄り、具体的に利用方法についての総集編、プレゼンテーションの回です。また、これまでの振り返り、これからのアクションについて話し合う懇親会を予定します。消費社会に我々はいて、モノを捨てるという行為自体はなくならない現状、それに面白さを見出し、活かすというという考えをどうやったら広められるのか?共に学び合った仲間と考える機会になればと思います。