講義レポート

本来の自分を自由に解き放つための”制約”

「生き方デザイン学」講義レポート

こんにちは。キャンパスライフ探究家の鈴木麻里子です。結婚×出産×仕事の自分らしいカタチをつくる「生き方デザイン学」第3期のレポートをお届けします。

自分の理想の人生を思い描くとき、女性なら誰でも必ず意識するライフイベント「結婚」「妊娠」「出産」そして「子育て」。カラダそのものや生活圏、時間の配分などがガラリと変化する女性とって、ライフイベントは楽しみでもあり、制約を与えるものという認識も少なくありません。

なぜ「仕事も結婚も出産も」ではなく「仕事か、結婚か」「仕事か、子供か」と天秤にかけられがちなのか。そのひとつの理由に「自分と重ね合わせられる身近なロールモデルがおらず、具体的なイメージが出来ない」ことがあげられるのではないでしょうか。現在の日本では、ライフイベントで女性の7割が退職、中小企業に至っては、産休から職場復帰する女性はたったの5%。まだまだ社会で働き続ける女性は少ないというのが現実なのです。
そんな漠然とした不安や理想を見える化する「生き方デザイン学」。テーマは「可能性を広げて自由になる」こと。ライフイベントを経て、今なお社会の中で自分らしく活躍する女性をゲスト4名の”生き方”をうかがい、その上でサンプルを集めて自分だけのロールモデルを描いていきます。
1回目は、自己紹介とイントロダクション。「子育てや介護等に左右されずに働くことができる社会」を創るべく、NPO法人Arrow Arrowを立ち上げた教授の堀江由香里さん。就職活動の時、ご自身の親友が「ここでは結婚・出産を視野に入れた時、働き続けられないから」と第一志望の企業を蹴ってしまう姿に「わからない未来のためになぜ今をあきらめるのか。そうさせる社会の仕組みはおかしいのでは。」という憤りが現在の活動の源泉となっているそう。受講生、皆それぞれ悩みや迷いを抱えていますが、ポジティブにそれを突破していこうとする心意気を持っていて、初回から終始アットホームで本音をさらけ出せる女子会のような雰囲気でした。
2回目は、黒木瑛子さんをゲストにお迎えしました。現在は一般社団法人ドゥーラ協会の理事を務める黒木さんには「そのとき自分に合わせて職場・繋がる人を柔軟に変える生き方」をテーマにお話を頂きました。ステージごとに形を変える価値観を素直に受け入れ楽しむこと、そしてそこで感じた「やりたい」と思うことの芽をつまず、行動し続けた結果が今の活動に繋がっているという説得力のあるお話でした。細かな計画ではなく、その時々の自分の声に正直に、人生の中の揺るぎない優先順位を見つけた黒木さんはとてもさわやかで軽やかな印象を受けました。
3回目のゲストは、加藤沙絵子さん社内で前例がないなか、産休→職場復帰の第1号になった加藤さん。前例がないから、このまま働き続けるのは難しいから、とライフイベントのために予防転職を行うという考えを打破してくれるお話でした。働くことが大好きな加藤さん。復帰後さまざまな葛藤があったすえ、その都度、人の話に耳を傾け「今の自分にフィットする言葉」を得て「自らの満足できるライン」を確立していった加藤さんは、テレビや雑誌のランキングやネットの情報ではなく、身近な人のアドバイスを選んで取り入れ、人と比べない自分を手に入れていったそうです。

4回目のゲストは、飯野登起子さん。デザイナーとして活躍後、いったん専業主婦となり、その創作の対象ををお皿の上に移し、”盛り付けデザイナー”として新たな道を見つけた飯野さん。社会と繋がる方法はけっして「仕事」だけではなく「母」という役割や、家の中にも存在するという新たな視点をいただきました。どう働くかと同じくらい、どういう暮らしをしたいのかイメージすることも重要だと痛感しました。また息子さんのファーストシューズや育児日記なども見せていただき、愛おしい気持ちになりました。「母」となる貴重な体験は大変だけれど楽しそうだな、と受講生一同、笑顔の耐えない時間でした。
最終回のゲスト、市川望美さんは、育児をきっかけに離職した女性が働く拠点として、コワーキングスペース「cocoti」の運営をされています。もともとバリバリのキャリア一直線だった市川さんですが、母になったことで人と触れ、抑えきれない感情を味わい価値観が刷新。働く量と質をもっと柔軟に選べる環境を自ら切り開く「ないなら自分で作ってしまえばいいんだ」という考えは大変刺激を受けました。「何かを我慢したり差し出す働き方、子育て期の働き方にイノベーションを起こしたい」と、当事者でありながらも、未来に生きる自分の子供達の時代の当たり前を作っていきたい、そのミッションのために働くという姿は凛としていらっしゃいました。
受講生にとって、心に刺さる部分や共感できるゲストはそれぞれ違います。
しかし、それに対して自分の心がどう反応するか、それをひとつひとつ丁寧に観察していく貴重な5週間でした。印象的だったのは、人生の新たな展開をここで迎えた受講生が非常に多かったということ。結婚や母になることに興味が無かった人が初めて婦人科へいったり、仕事を辞めた人、引っ越しをした人、今の彼と別れを決意した人、など、驚きの連続でした。
それは、毎週出される課題のアウトプットを通し、今まで漠然とした不安や理想が明確に言語化されたことが、具体的な一歩へ繋がったのだと思います。最終回の課題では、X軸とY軸の2本の「自分の人生でこれだけは外せない」軸を発表しました。人生の中で大切にしたいことは、挙げればキリがありません。しかし、究極の2つをここで掘り下げ、何があれば満たされるのか自分自身で把握することで、人生はシンプルで豊かになります。実は「制約」とは、自由を奪うものではなく、制約があるからこそ望みが明確になり、本来の自分を自由に解き放つ手助けになってくれるものなのではないでしょうか。

「こうあるべき」「これは無理だ」と感じることは、身近な人とは共有できても、少し離れた環境にいる人とは話が通じない、という経験は誰もがしたことがあると思います。
結局のところ、自分の周りには、似たような価値観やフェーズにいる人が多く、なかなか視野を広げる程の話を伺うのは日常の中では難しいものなのです。このような、自分ではあえて選ばないような人生、価値観との出逢いの中に、可能性は眠っているのです。「生き方デザイン学」は新たな生き方のエッセンスと出逢い、私らしい生き方を共に突破していく仲間と出逢い、本来の自分と出逢える、そんな沢山の可能性との出逢いが詰まった講義でした。



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