こんにちは、「入門日本酒学」キュレーターの小酒です。今期の日本酒学では同じ蔵のお酒を利き酒することが多く、同じ名前であっても造りの違いで味わいが変わっていくことを学んでいます。
第2回目で飲み比べたのは久保田酒造(神奈川県相模原市)の相模灘というお酒。写真の左から「相模灘 本醸造 しぼりたて 生原酒」「相模灘 特別純米 槽場詰め」「相模灘 純米吟醸 槽場詰め」。同じ名前で味が違うというのは日本酒をあまり飲まない人には難しいと感じられるかもしれません。「相模灘」の後についている、「本醸造」「特別純米」「純米吟醸」という言葉も耳慣れない言葉です。(ちなみに、残り2本は「純米酒 奈良萬」(福島県 夢心酒造)と「山の壽 純米吟醸 雄町 生原酒」(福岡県 山の壽酒造)です。)
ポイントの一つは「純米」というキーワード。「純米」とつけることができるのは、米と米麹だけで作られたお酒に限られます。純米とつかない「本醸造」には、醸造アルコールが添加されています。醸造アルコールを入れる理由は、いくつかあるようですが、ひとつは味わいをすっきりとさせること。そして香りを引き出す効果もあるようです。
そして第3回目で飲み比べたのは三芳菊酒造(徳島県三好市)のお酒。下の写真の右3本が三芳菊酒造のお酒です。このお酒はとても香りが豊かなので、講義ではワイングラスで楽しむことを提案しています。ワイングラスには、グラスの形状から香りを貯める効果があり、お猪口よりも香りを感じやすくなります。また足の部分を持つことでお酒を温めずに飲むことができるのです。
三芳菊の香りはまるで果実のようで、従来の日本酒のイメージを覆すような味わい。日本酒と言われないと分からない人もいそうなほどです。料理と酒の相性を学ぶこの講義では、この回は洋食を出し、和食と合わせるだけではない、日本酒の楽しみ方を紹介しています。
三芳菊さんのここにあるお酒はラベルのかわいさも特徴の一つ。これも日本酒のイメージにはないものかもしれません。そしてこのお酒は、米と米麹だけで作られているにも関わらず「純米」の文字がありません。このお酒に使われているのは「等外米」と言われるお米。兵庫県産山田錦を使っているのですが、粒を選り分ける際、小さかったりして、等級がつかなかったものを使用しています。そのため、「純米」とつけることができないんだそうです。それでも味は一級品。三芳菊さんでしか味わえないオリジナル感たっぷりなものなものになっています。
最初に紹介した相模灘がしっかりした味の料理にあうお酒なら、三芳菊はその逆。あまり濃い味の料理だと、三芳菊の香りを感じにくくなってしまいます。どちらが好みかは個人の嗜好や、飲まれるシーンによって違います。
日本酒学のゴールは自分好みの味わいの日本酒を見つけること。様々なベクトルのお酒を毎週飲み比べながら、最終回の発表に向けて自分の好みを探り、言葉にする作業が続きます。最終回ではそれまでの講義を受け、1人1本日本酒を持ち寄ります。どんなお酒が集まるか今週末の講義が楽しみです。