講義レポート

「おいしい」は世界を超える

sense of SAKE キュレーターコラム 森田真衣

「日本酒」と聞いて、みなさんはどんな印象を思い浮かべるのでしょうか。

ある人は「酔っ払う」、ある人は「近所にある酒蔵の印象」、またある人は「こむずかしそう」と思うかもしれません。

日本酒に出会いたての頃の私の日本酒の印象は「祭り」でした。

埼玉県川越市出身の私は、年に一度大きな祭りである「川越まつり」に毎年参加するほど家族揃ってのお祭り好き。そのお祭りには必ずお神酒として日本酒をお供えするのです。それも地元の日本酒がほとんど。

お祭りの夜には大人たちがその日本酒を傾けながら楽しく祭りの余韻に浸るわけですが、私はその様子が大好きでした。あの当時はその日本酒が私を世界へと連れて行ってくれるとも思っていませんでした。

私は日本酒のアンバサダーとして、世界各地で日本酒のPRを行わせていただきました。世界には宗教の違いや食文化の違いでお酒に対する距離感は様々なのですが、どの人類でも共通して「おいしい」という感覚は一緒。

以前ルワンダに遊びに行った際に「現地の人に飲んでもらいたい!」と思い日本酒を持って行ったことがあります。ルワンダ人からするとはじめて出会う「ニホンシュ」というもの。始めは恐る恐る飲んでいましたが、彼らからすると膨よかな甘みがありつつもこんなにスッキリとした後味になる日本酒はおどろくべき液体だったのです。

私には現地の言語はわからないのですが、「おいしい!」というのを伝えようとしているのはよくわかりました。

感覚的に日本酒を楽しむこと。「純米大吟醸」やら「生酛」やら「山廃」やらなんだか小難しい名称が並んでしまうことで妙にハードルが上がってきてしまっている日本酒。

でも全ては「米」と「水」がおりなす液体なのです。

「おいしい」の先にあるストーリーを少し細分化することでもっと感覚的に日本酒に出会い、その日本酒が多くの人との縁を繋げて行ってくれるのです。

日本酒は言葉を超えて「おいしい」で繋がれる魔法の液体なのです。

 

【影響を受けた本】

「夏子の酒」

ここはあえて漫画にしました。酒造関係者にはこの本に影響されて業界に入った方も少なくありません。30年も前に出版されたものですが、日本酒業界が抱える課題を浮き彫りにしており、未だに課題と感じるところも。

夏子ちゃんが奮起しながら業界を変えていこうとする姿に勇気をもらいます!

 

TEXT:キュレーター 森田真衣

担当講義:sense of SAKE



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