時代の変化に合わせた変幻自在で自由な働き方を創っていく『アメーバワークスタイル』。前回に続いて受講生の垂井美穂さんが講義の様子をレポートしてくださいました。(前回のレポートはこちら)
第4回講義。ゲストは、IDEE(イデー)の創設者で、自由大学の創立者でもある、黒崎輝男さん。今回は、一期生も参加しての賑やかな合同授業です。数々のデザインプロジェクトやファーマーズマーケットなど、常にあたらしい文化を創ってきたデザイン界のパイオニア、黒崎さんとアメーバワークスタイルについて考えていきます。
授業の始めに、アメーバのようなイラストが描かれたプリントが配られ「これは、アメーバにも見えるけど、ショウガにも見えるね」と黒崎さん。ショウガは、生命力が強く、根を切られても、また次の根が生えてきて、根の形を変えながら生きている、まさにアメーバ的植物。“アメーバスタイルは、強い”という例がここにも。人間も本来はアメーバのように、しぶといしたたかな生命力をもっているのだとか。
見えるものに価値があるというのが、今までの日本の社会の価値観でした。学校では、枠の中で1つの事を集中的に勉強させる事に特化し、早く正確に問題を解けることが優秀だと教えられます。(逆に海外では、しぶとく深く、物事を考えられるのが優秀なのだそうですが。。)
また仕事=お金が入るリソースの素、という考え方も私達に染み込んでいて、会社名や職種が、個人のアイデンティティーのように語られたり商品のシェアや売り上げといった数字が仕事の中でとても重要視されてきました。数字やカテゴリー分けは、一つの手段。本質はその裏に隠れた見えない部分にある。その事に少しずつ世の中が気づき始めてきた、今は価値観の過渡期なのかもしれません。
そんな時代に、自分の頭で考えることのできる人材をつくりたい、と黒崎さんは自由大学を創ります。自発的に集まり、自身で考え、それを他者と共有することによって、自分の中の新たな価値観を発見する。そんな個人がかけ算で組み合わさり、輪が広がっていく。学びの場で柔軟なアメーバ的つながりを作ろうとしています。
お話を伺っていると黒崎さんの生き方自体が非常にアメーバ的だと感じました。興味がある事を核にし、それをより深くする為に、異なる要素をどんどん掛け合わせていくと、好きなことはいろんな方向に伸びていき無限化していきます。
黒崎さんの場合は、まず『生活の探求』という目的があり、それからインテリア、料理、出版などに派生していき、結果として様々なプロジェクトが生まれ、それぞれが互いに結びついていて、核にフィードバックされる、そんな働き方をずっと前から実践されています。何が失敗か成功かは、途中ではまだわからない。本業とは関係ないと思った事が後から生きてくることもある。まずは、自分の“皿”を回し始めること。すべては、そこから始まる。「失敗はなくて、なんでも成功」という言葉がとてもおおらかで勇気づけられました。
なにかを始めたいと思っても、やりたい事は、なかなか自分ではっきりとはわからないもの。逆にやりたくない事は、自分でよくわかるものです。やりたくない事になるべく近寄らずに、自分の興味のあることを探求していくと自然とやりたい事、自分の価値観が見えてくるようです。
黒崎さんの興味の範囲は、生活の探求から派生して、人間の探求に向かっているようにも見えます。例えば宗教に関して。どの宗教も“世界を良くしたい”という思いが根幹にあるのは同じで、社会に対するアプローチが違うだけなのに、どうして対立するのか?に関心があったり、年々需要が減っている新聞メディアに関して、すべての新聞を読み比べて正確な情報を伝えるメディアがつくれないだろうか?と考えたり。
分野が多岐に渡っても、共通しているのは「その根本にある問題はなんだろう?」と本質から考え、自分の中の疑問に誠実だということ。
授業の最後に、2ヶ月前に卒業した第1期生の自己紹介と近況報告。印象的だったのは、みんなそれぞれの場所で“皿”を回し始めているんだな~ということ。前に勤めていた会社を辞めた人、新しいプロジェクトを始めた人、会社の中で仲間とユニットを作って活動し始めた人…。これから、各々回したお皿がまた誰かのお皿と交わって、もっと大きな渦になっていったら面白い事になりそうです。