講義レポート

星を投げる人が社会を変える

学長コラム 深井次郎

深井次郎コラム

頑張っても頑張っても、結果がついてこない。投げ出しそうになる時は、どうしたらいいのでしょうか?

「世界を変えたい」大きな夢を掲げて、スタートしたばかりの20代の若者がやって来ました。政治家を目指す彼ですが、いっこうに自分のメッセージが広がらず。「フォロワーも増えない」とうなだれていました。賛同者を呼びかけていましたが、集まるのは毎回せいぜい一人二人です。
世界を変えたいのに、こんな状況では活動を続けている意味があるのだろうか。何年もこのペースでは、一生かかっても理想には届かないじゃないか。
同じように途方に暮れている方に会うたび、伝えている話があります。作家ローレン・アイズリーの「星を投げる人」という有名なエッセイです。
《ある朝、海岸を散歩していると、ひとりの老人が海に向かって何かを投げていました。
「何をしてるんですか?」
「ヒトデを投げているんだよ」
見ると、見渡す限り、無数のヒトデが砂浜に打ち上げられているではありませんか。
やがて、干からびて死んでしまうでしょう。
「こんなにたくさんいるのに、何の足しにもならないですよ」
老人は、ヒトデをもうひとつ拾いあげた。
「そうかもしれないね。でも… このヒトデは助かったよ」
そう微笑んで、ヒトデを海に向かって投げた。》
たしかに世界は変わらないけど、そのヒトデの人生は大きく変わりました。学生時代にこの話を読んで、ずっと胸の奥にあります。その後、社会人になり、本を書いたり、人前でお話をしたり。何かを伝えることで社会に貢献できたらと思っていますが、いたずらに数を追うことなく、目の前の一人ひとりと向き合うことができました。もし異常に数字に執着するようなら、本質から外れた「承認欲、名誉欲」かもしれないと疑っています。
そういえば前に、けっこう時間をかけて撮影したYOUTUBE動画を投稿しましたが、再生回数が6回でした。「自由とは何か?」というお話です。相談をいただいたので答える形で「会社を辞めるだけが自由ではないかも」と伝えたくて録画しました。
数人しか観てなくても、ひとりだけ熱烈な感想を送ってくれた方がおりまして。じゅうぶん意味があったと、じんわり満たされました。「私が主宰する集まりでも話していただきたいのですが」と頼まれました。
さて、さっきのヒトデの話には続きがあって。老人がヒトデを救っている姿を見て、「自分もやろう」と続く人が次々と出てきます。ムーブメントとなり、多くのヒトデが助かりましたとさ、めでたし、めでたし。これは勝手に想像したハッピーエンドですが、現実ではよく起こります。
世界を変えるのも、ひとりの笑顔も、どちらも尊いです。自由大学の講義はどれも少人数。目の前のひとりひとりの人生と向き合っています。
TEXT:自由大学学長・「自分の本をつくる方法」 教授 深井次郎

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