講義レポート

縁側をつくる

教授コラム  ナリワイをつくる 伊藤洋志教授

ナリワイ 伊藤洋志氏 コラム

私は、ナリワイを作る活動をしている。生活探求の延長で様々な新種の生業(なりわい)を考案する活動である。
さて、時事に合わせた話をするなら2020年の新型感染症のSARS CoV-2について話になる。わたくしは複数の仕事をしているので停止する仕事、影響が小さい仕事に分かれた。複数の仕事といってもただ複数あればいいのではなく、性質も分散させておくのが良い。これは、自分の心身の健康にもつながる。日に当たらない場所にいる仕事だけをしていると体に悪い。
複数の手札を持っていれば、停止した仕事で空いた時間を使うことができる。今回、そのうちの一つが、縁側をつくるという自分のための仕事だった。自分のための仕事は品質の度合いも決められて話が早い。縁側づくりは今の家に引っ越してからいつかやりたいと思って1年間も放置していたプロジェクトであった。しかし、やってみると簡単だった。何事もきっかけづくりが大事だと感じる。

縁側づくりは、まずコの字形の脚をいくつかつくる。次にそれらを等間隔に立てて側面に板固定して一体化する。土台ができれば床板を足に固定して完成だ。材料は、以前棚をつくって余っていた木材を利用した。
幅0.5mぐらいの小さな縁側だが、ちょうど天気がいい時期になったので日光浴に良い。ところで、近代に入っても人類はビタミンD欠乏に悩まされている。ビタミンDは、日照時間が短いイギリスにおいて発見された。骨格生育が不良になる「くる病」の研究の中で発見されたのである。
ビタミンDは血中のコレステロールが紫外線により変化して生成され、免疫機能にも寄与していると言われている。このことからステイホームは確かに必要だが、ビタミンD欠乏になると身体の感染症への対応力は落ちると予想される。
縁側ひとつとっても小さくても手間をかけて自分で何かをつくること。この効用は、物事への理解を深める過程にあるのではないかと思う。

▼影響を受けた本

「HOT ZONE」リチャード・プレストン

1995年に刊行されたエボラ出血熱に関するジャーナリストによるドキュメント本である。バイオセーフティレベル4など、高校生が盛り上がりそうな用語などが出てきつつも、当時の最前線の現場の様子が描かれている。
高校生の頃は、なんとなく無公害の自動車をつくりたいなどとぼんやりと考えていたのだが、この本に出会ったため、ウイルスの研究をしたいと進路変更した。サイエンス最前線の進路には進まなかったが、興味は持続している。

TEXT: 教授  伊藤洋志

担当講義:   ナリワイをつくる 【入門編/オンライン】



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