講義レポート

運も実力のうちに“できる”

「地域とつながる仕事」3期5回目講義レポート

最終回には、弁護士から転職して島根県雲南市でチャレンジする人をサポートする「幸雲南塾」を運営する小俣健三郎さんと、ベトナム在住で現地企業の人材育成の仕事をする川村泰裕さん(オンライン参加)がゲストで登場した。

東京で働いていた頃と雲南市での働き方を比較しながら話してくれた小俣健三郎さん

小俣さんの、世間的に花形とされる弁護士という仕事を辞めて、島根県の中山間地域で人材育成を行うNPO法人の事務局長へという異色なキャリアチェンジの裏側の話はとても興味深かったのだけど、ここでは川村さんと友廣さんの掛け合いの中で、印象的なお話があったので紹介したい。

川村さんが新卒で働いた会社をリストラされて次の仕事を探していた頃、まずは人とたくさん会うことから始めようと1週間に会う人の数を増やして行ったそうだ。そして、例えば10人会って2人が自分を応援してくれたら、今度はその2人と会う頻度を高めていく。それを続けていくうちに相手に巻き込まれて、自分の状況を好転させる流れを作れたそうだ。

例えば「いまの自分を変えるために転職する」と心に決めたとして、転職サイトに登録したり、リクルートイベントに行ったりしたとしてもすぐに自分にフィットした仕事が見つかるわけではないと思う。川村さんのように「1週間に会う人の人数を増やす」という小さいアクションを続けて行くことで、思わぬ出会いが生まれ、運を実力にできるのではないかと感じた。マニュアル的な転職ではなく人に会うというシンプルな方法論は、自分にフィットした仕事を手にする近道かもしれない。

仕事未満の仕事
それからお二人の話で「役目、役割は誰かとの掛け合わせでしか生まれない」という言葉も印象的だった。転職サイトに掲載される仕事は、仕事内容・勤務形態・給与がはっきりしているものしか載らない。けれど仕事は需要と供給が合えば「生み出せる」ものだと思う。「この難しいエクセルだれか作ってくれないかな……」と思っているところに「エクセル、得意です!」と楽しそうな人が現れたらもう仕事は成立する。自分が頭を抱えながらやるよりも、楽しそうな人に任せたほうが圧倒的に健康でもある。

話を戻すと、転職サイトに掲載されている需要がはっきりした仕事以外に、「こんなことで困っている」というまだ仕事の輪郭がない需要(あるいは困りごと)はかなりたくさんあるのではないか。特に地域においては仕事未満の仕事がたくさんありそうだ。

それぞれの道へ
この授業では「仕事未満の仕事」をどう発見して、仕事を作っていくかについて多様なゲストに学び考えた。たった一ヶ月だったが、受ける前と後では見える世界が変わって見える貴重な体験だった。

この授業の参加者(3期生)は
・青年海外協力隊の派遣員になろうと思っている人
・大分県の地域おこし協力隊として移住する人
・仕事を辞めて信越地方に移住しようと検討している人
・いまの仕事は変えず時間外で自分にできる役割を探している人
など様々だ。置かれている状況は各々違うが、「地域とつながる仕事」というキーワードに惹かれて集まってきた人たちとのディスカッションは本当に刺激的だった。
そして偶然にも、私はこの授業が開かれていた3月に仕事を辞めた。授業を通じて得た学びをもとに、自分のできる・やりたいことと社会の需要の接点をじっくり探していきたいと思う。

この授業を受けた一人ひとりの人生がどんな風に転がっていくのか、今はそれが楽しみで仕方ない。では皆さん、またすぐに会いましょう!

サポートスタッフ・山口祐加



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