講義レポート

仕事のつくりかたを発明する

「地域とつながる仕事」3期第1回レポート

誰かの夢に相乗りする

「地域とつながる仕事」という名のこの講義には、「誰かの夢に相乗りして地域を盛り上げて行くという選択」というコンセプトがある。そして、私はこの「誰かの夢に相乗りする」という言葉がとても好きだ。

第一回は友廣さんの体験を聞き。自分の興味関心や「自分にできること」を掘り下げて行きます。

世間では、好きなことを仕事にしている人にスポットライトが当たることがほとんどだ。「好きなことを仕事にする」は、ストーリーがわかりやすくて、結果メディアにも取り上げられやすい。そうしてメディアに載った「好きな仕事をする人が発する言葉」に感化されて、「私も何か見つけないと!」と焦ってくる。でも結局、明確な答えが見つからない…と、もやもやしている人は結構たくさんいる気がする。

この講義を担当している友廣裕一さんは、昔から自分の中に「これがやりたい!」というエンジンがなく、自分の道が見えている人をうらやましく思うことが多かったそうだ。大学卒業後、「地域に関わる仕事がしたい」という思いだけで、家を引き払った敷金だけを元手にヒッチハイクで全国を旅した。その道の途中、地域で出会う人の中にすごい能力や知識を持っていてもそれが活かされていない人がいることを知った。お互い話しているうちに熱が上がってきて、結果一緒にやることになっていったことが多いと。

この一連の体験をきっかけに、友廣さんは「誰かの夢に相乗りする」ことを仕事にしている。自分の中にエンジンがないからこそ、誰かの有り余っているエンジンをもらって一緒に伴走する。好きなことを仕事にするという役割もあれば、誰かのやりたいことを一緒にやってみるという役割もある。

スポットライトは当たりづらいけれど、いろんな人の夢に関われる、すごく素敵な仕事だと思う。「誰かの夢に伴走するの、すごく楽しいよ」という人がたくさんいる社会は、おおらかで居心地が良さそうだ。

どうして居心地がいいのかといえば、それはたぶん無理に「自分の好きなことを仕事にしないと!」とがむしゃらに自己分析をするのではなく、まずは誰かの夢に相乗りして、役割をもらえるからだと思う。「ああ、こういう生き方も大アリだな」と思う人が、少なくないと感じるんです。

自分の役割を探して

もう一つ、友廣さんのお話で印象的だったことがある。就職活動のときに、(当たり前だけど)若くて元気な人=自分と同じような人は、都会に山ほどいることに気づいたという話。会社勤めで自分が会社を辞めても、また別の誰かに役割が渡るだけで特に大きな問題は起こらない。ビジネスをする上でのリスクを考えたら、誰かだけに任せられる仕事は極力ない方が良い。

でもそれは、どこか寂しさを抱えた状態だと思う。自分の代わりなんていくらでもいることくらい理解できるけれど、でもできれば「あなたがいい」と言われたい。人は「役割」を探しているいきものだ。

一方、都会から離れて地方に行ってみると、おばあちゃんの重い荷物を持っただけで「助かった〜!」と喜ばれる(友廣さんの実体験)。もちろん若くて元気な人は誰だって荷物が持てるのだけれど、前者の状態とは何かが違う。

大きな歯車の見えない関係性の中で働くのと、目の前のおばあちゃんと一対一の関係性で手を貸すのとの違いだと思う。手を貸す人の立場によって、その都度コミュニケーションが変わる。相手が自分である必然性が、自然に作り出せているのだ。

地域とは、都会にありあまっているもの・ひと・ことが足りない場所であることが多い。余白たっぷりで、まだまだ入って行ける場所がある。

「誰かの夢に相乗りする精神」と「もの・ひと・ことの余白が大きい場所」が合わさったら、仕事の可能性がどんどん広がるのではないか。

そんなおおらかな未来をつくるための第一歩として、この授業がある。と考えた、第一回でした。

サポートスタッフ・山口祐加



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