講義レポート

事業計画よりも大切なこと

「ゲストハウスをつくろう」 講義レポート

旅人同士の交流や、泊る土地とのつながりを伴う新たな旅・宿泊のスタイルとして、じわじわと注目が高まる”ゲストハウス”。そんなゲストハウスに「泊まってみよう」、ではなく、「つくっちゃおう!」というのがこの講座です。しかもその第一期。講義内容はもちろんですが、一体どんなに個性的で、野心あふれるメンバーに出会えるんだろう。胸躍らせながら初日を迎えました。期待以上の、充実した5日間でした。

 

講義内容は、座学と、都内のゲストハウス3軒への訪問です。

 

初回は、ゲストハウス紹介サイトFootPrints編集長の前田有佳利さん(ダリさん)から、現在全国に600軒にまで増えているという、ゲストハウスの「今」についてレクチャーを受けました。

多くは、素泊まり2,000〜3,000円代とリーズナブルですが、最近は、安かろう悪かろうなんかではないのです!その地ならではのオプションツアーや、現地の人との交流を楽しめる宿、ジブリ作品に出て来そうなレトロ宿、洗練されたデザイン物件、人が集うカフェバーやシェアアトリエなどを併設しているハイブリット型、古き良き建物のリノベーション物件などなど…。人との出会いはもちろんのこと、享受できる体験や付加価値が、とっても多様化していることを改めて学びました。また、受講生たちの宿泊体験談を聞きあうことが、とても興味深かったです。

 

その後の3回は、いずれも違った個性と想いを持ったゲストハウス3軒に訪問。今だから笑って話せる立ち上げ期の苦労話や、改装、採用、広報、さらに突っ込んだお金や法律まわりのことなどなど。文字通り、根掘り葉掘りに聞かせて頂きました。ふだんの一宿泊客としてはとても聞けないような色々が伺えるのも、こうした機会だからこそ。訪問先の皆様も、受講生からほとばしる熱量の分だけ、色々なことを真摯に打ち返してくださいました。

 

3つの素敵な個性を持ったゲストハウスのみなさん、貴重なお話をどうもありがとうございました!

  • KAISU hostel ※残念ながら私は欠席
  • 東京ひかりゲストハウス
  • IRORI Nihonbashi Hostel and Kitchen

 

講座を通じて特に感じたことが、2つあります。

ひとつは、ゲストハウスの魅力は、その人・その場所・そのタイミング、というとこからにじみ出る個性=面白さであり、ハマっていく要因なのだなぁということ。

そしてもうひとつは、ゲストハウスづくりって、まさに”総合格闘技”だなぁということ。土地、建物といったハードの部分と、ブランディング、おもてなし、地域とのコネクションづくりといった、ソフトの部分。理想と現実に折り合いをつけるビジネス感覚、時代や客のニーズを読み解くセンス、終わりのないサービスのカイゼン活動、不動産・建物・保健衛生等の法律の知識・・・等々。決して収益効率が高くはない小規模ビジネスだけど、考えたりやったり決めたりしなければいけないことは盛りだくさん。

 

そんな中、受講生の多彩なバックグラウンドはとても心強く、ひとつのチームのような感覚を覚えました。(建築、不動産、広告、観光、IT、私の場合は地域PR…)私自身、自分のプロジェクトについての強力なアドバイザーを何人も見つけることができましたし、その後もちょこちょこ相談させてもらっています。

最終日の「マイプラン発表」の頃には、お互いのバックグラウンドが分かっていたので、ああ、このプラン、この人らしくて好きだなぁ、とか、こんな発想もあるのか!と、インプットしたことを深めることができました。

 

ゲストハウスという”場”作りにかける想いや、考え方の軸足、携わり方は、皆ぞれぞれ違っていて、とても一口では語れません。でも、シンプルに旅が好きだったり、心地のいい時間を多くの人とシェアしたいという気持ちだったり、あるいは、世の中に対してピクッと触覚が動いたポイントだったり。共通する部分が所々あるなと感じました。

これからはゲストハウスも淘汰される時代と言われながらも、理想の空間づくりにチャレンジしたいと考える仲間達と、実地に赴き、宿経営のリアルなお話の数々を伺い、酒を呑みながら意見を交わす日々は、自分にとって新たなモチベーションとなりました。

講義のサブタイトルにある、“事業計画よりも大切なこと”を、想像していた以上に得ることができました。すべてのキッカケを作ってくれたキュレーターの西村さん、快く迎えてくださった訪問先のみなさん、自由大学スタッフのみなさん、どうもありがとうございました。

(text by 第一期卒業生 大塚拓)

ゲストハウスをつくろう



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