講義レポート

熱海と東京を「循環」する生活、はじめました。

「都市型サーキュレーションライフ学」キュレーター 水野綾子

「大人になる」ってどういうことなんだろう?就職したら?結婚したら?子供を産んだら? いつからかは分からないが、私の中で「大人になる=住む場所を決める」ということだった。 大学で上京し、約12年間東京に住んだ。その間に就職して、結婚して、2人の子供に恵まれたが、東京で暮らし続けるということは決められずにいた。むしろ、子供が成長するにつれて「東京ではないな」という感覚が強くなっていった。

スタジオジブリ作品は何回も観たけれど、中でも『魔女の宅急便』が好きだ。主人公キキのすごいところは、「住む街」を自分で決めるところ。子供ながらに漠然と「何かすごいことをしている」と思っていたし、ある種の憧憬を抱いていた。気づいたらキキの年齢は越えていたが、その時の感覚が少なからず今に影響している気がする。 「住む場所を決める」ということは、その街やコミュニティに責任を持つということだ。今年4月に家族で「熱海」に移住した(きっかけや理由はいくつかあるがここでは割愛させていただく)。欲しい暮らしのためには、どんな街になって欲しくて、自分はここで何をしたらいいかに、いま絶賛対峙している。

ただ、時代は変化し続けていて、現代社会では「固定」することがリスクになる。私たちの親世代のように、いい大学を出ていい企業に入社すれば生涯安心。という方程式が全くもって成立しない時代になってしまった。 ひとつの収入源に頼って生きていたとして、それが何らかの理由で無くなってしまったら…という状態は想定しておいた方が良いし、無責任に自分の人生を会社や誰かに預けるべきではない。 自分が自由に暮らすためにも、仕事もコミュニティも、考え方もひとつに固定しないことが必要だと思う。

だからこそ、熱海に住みながら東京での仕事は続けたい(熱海は東京から新幹線で約40分と、それができる距離)。仕事が好きなのはもちろんだが、熱海だけで完結することが、自分にとっても街にとってもプラスに感じられないからだ。 熱海と東京を行き来して、「人」や「考え」が循環することで、今までとは違った視点や可能性が生まれる。それは結果として仕事にも、街にも、自分にも還元されると思う。循環から次の決意や動きが生まれてくるのだ。

現在募集中の「都市型サーキュレーションライフ学」の舞台は熱海だけれど、参加した方々が、結果、熱海以外を選んでも構わない(選んでくれたら嬉しいけれど!)。人によって肌が合う土地は違うし、こちらが押し付けるものでもない。 こういう暮らし方があるんだという”見方”が増えて、自分と向き合えるきっかけになってくれたら嬉しい。



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