講義レポート

クラウドファンディングが“自分ごと”になった日

「クラウドファンディング学」講義レポート

私が「クラウドファンディング学」を受講したきっかけは、第5期を通してのゲスト、齋藤将宏さんからお誘いをいただいたことでした。

齋藤さんと私は、2016年秋に自由大学で開催された「自由大学クリエイティブ創業スクール ベーシックコース」のクラスメイト。齋藤さんは、乾漆という伝統工芸の技法を取り入れたデザイン漆器をつくりたい、という大志を抱いて、同講義の前から着々と準備を進めていらっしゃいました。最終プレゼンは、このプロジェクトが成功しないわけがない!と一同を唸らせるほどの完成度の高さ。その後、約30名の受講生の中からから代表に選ばれて、中小企業庁主催のビジネスプランコンテスト「第三回全国創業スクール選手権」にエントリー。みごと、セミファイナリストに残りました。

そんな経緯があったので、「クラウドファンディング学」を受講する前から、齋藤さんのプロジェクトには、伝統工芸や漆器について疎い私をも惹き込むほどの想いの強さを感じていました。とはいえ私を突き動かしたものは、齋藤さんを応援したい気持ちよりも、ひとつの商品が世の中に出ていくまでの過程を体験できることへの興味かもしれません。誰かのプロジェクトを応援したことも、ましてや自らやってみたいと思ったこともなかった私にとって、「クラウドファンディング学」の初回は、クラウドファンディングが自分ごとになった日でした。

第5期の「クラウドファンディング学」は実践型。初回に教授の大高さんからクラウドファンディングが生まれた背景や、社会的意義、実際の仕組み等の説明を受け、第2回からは、受講生同士が意見を出し合いながら、齋藤さんのプロジェクトの細部を練っていきます。情報の見せ方、ターゲットにする層、リターンの内容、プロモーションの方法――決めなければいけないことはいくらでもありました。

今だから言えることですが、このプロジェクトが最終回にはゴールにたどりつけるのか、かなり不安を感じていました。受講動機も職業も、趣味や興味もさまざまな私たち。受講生の中には知り合いの間柄も多少はあったものの、基本的には初対面。プロジェクトの中心となる齋藤さんとも、知り合ったばかりです。さらに言うなら、私たちはクラウドファンディング初体験。いくら教授の大高さんのサポートがあるにしても、たった5回、初回を除けば4回の講義で、果たしてプランをまとめるところまで行けるのでしょうか――。

結果的には、ゴールとまでは言えませんが、かなりいい線までプランのアイディアをまとめることができました。その勝因は「4回しかない」という危機感、そして積極的に意見を出す人が揃っていたことかなと思います。開講時期が年度はじめと重なっていたことや、受講生の年齢層が会社でそれなりの責任を負っている世代にはまっていたことなどから、実は全員が顔を揃えたのは初回だけ。私も、一番重要な回に出席することが叶いませんでした。だからこそでしょうか、回数を重ねるごとに出席したメンバー同士の結束が固くなり、講義が終わってからも自主的に残って撮影に協力したり、話し合ったりする空気が自然にできていきました。

みんなとの話し合いは、私にとってとても刺激的な時間でした。たとえば、リターン案。発表されたアイディアの中には、ビジュアル的なイメージが湧き、大胆で面白い発想のものがいっぱいありました。最終的には、経費やリスクとの兼ね合いから実現可能な案に収束していくのですが、意見を出し合っているときから小さくまとまっているようでは話し合いが盛り上がらないと思います。クラウドファンディングをやったことがないから、知らないから思いつくこと、気づくこともたくさんあるんですよね。異なるバックグランドを持つ者同士の集まりの底力を感じました。

また、受講を通してあらためて実感したのが、言葉を使った表現の難しさです。印象的だったのは、話し合いの中で出てきた「ていねいな暮らし」というキーワード。ふわっとした表現なので定義は人それぞれだろうと思い、具体例を挙げながらみんなですり合わせたつもりでしたが、最終回を迎えるにあたって齋藤さんと打ち合わせをしているとき、お互いの理解が食い違っていることに気づきました。

クラウドファンディングは他者の共感を呼んでこそ成立するもの。その手段として文章や写真を使うわけですが、そもそもプロジェクトを動かすメンバー間で認識がずれていたら、他者に伝わるわけがありません。別々の人間が同じ言葉を使ったら、互いの言葉の意味するところが違っていることもある。言葉の裏には、辞書どおりの意味以外にも、すくいあげなければいけないニュアンスが隠されている。私は仕事柄、言語表現には長けていると自負していましたが、あらためて言葉には敏感でありたいと襟を正す思いです。

第5期「クラウドファンディング学」の講義は終わりましたが、齋藤さんのプロジェクトはこれからが本番。いよいよ、クラウドファンディングを開始するところまで来ています。教授の大高さんが期せずして名づけ親となり、私たちがその瞬間に立ち会った、齋藤さんのデザイン漆器「FLOREPOLIE(フロールポリー)」。その誕生のときが、今から待ち遠しくてしかたがありません。

text: Mie Sasagawa
photo: Mai Mitsuzawa & FreedomUniv


自由大学のクリエイティブ創業スクールから事業プランが生まれ、クラウドファンディング学でプロジェクトを推進する仲間を見つけ、事業を育てています。學びや探求する想いが共感を呼び、想像もできなかったことを創造していきます。

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