講義レポート

身近な人とのリレーションの先に生まれる未来

「コミュニティ・リレーション学」講義レポート

こんにちは、コミュニティリレーション学5期からキュレーターを務めることになりました、齋藤伊慈です。

ぼくとコミュニティリレーション学の関係は、「2期(2015年)に参加」→「3&4期キュレーター補佐」→「5期キュレーター」という流れで、2015年から定期的に顔を出し続け、気が付けば1年以上の関わりとなっています。今回は、初めて行ったキュレーターとしての「授業づくり」についてと、「実際に現場でどのようなことが行われていたのか」をレポートさせていただきます。

「コミュニティリレーション学ってどんな内容なの?」「どんな人がいるの?」そんなことが気になっている人の参考になれば嬉しいです。

 

・チャレンジ沢山の授業づくり

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今回、キュレーターを初めて務めるにあたって、本講義の教授である信岡さんとのミーティングで告げられたことは、「今回せっかく伊慈さんとやるのだから、一泊二日のキャンプで授業をつくれたら面白いなと思っています」ということでした。ぼくはRelaxcampという初心者向けのアウトドアの企画運営を行っています。その背景を踏まえての信岡さんの発言だったのですが、つまりそれは今までと授業のやり方を変えてもいいということでもありました。

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(2期の授業風景。1~4期までは、1.5時間×5回の通い形式で開催していました)

結果、キャンプは天候によって開催有無が左右されるという理由で開催には至りませんでしたが、一泊二日の合宿という形での開催に決まりました。今回は一泊二日という密度の高い時間を過ごせるということで講義の内容も参加者一人一人がより深く関わり合えるような講義内容に作り変えることにしました。

今回は講義内容の大幅なアップデートだけでなく当日の進行も半分程ぼくが担当させていただいました。これは運営としてもチャレンジングな取り組みで、信岡さんにとっては今まで自分主体で行っていた授業の手綱をゆるめるというチャレンジ、僕にとっては1~4期までとは違う環境での講義づくり&授業進行まで責任を持つというチャレンジと、合宿前の一週間は緊張で喉から胃が飛び出しそうでした…。

・講義レポート:オリエンテ―ション

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講義の第一回目は自由大学キャンパスのあるCOMMUNE246にて。コミュニティリレーションの基本的な考え方の共有と、一泊二日を共に過ごすメンバーの顔合わせ。今回は全9名の参加となりました。

参加者は「これから移住を考えている人」「既に二拠点生活を行っている人」「地域で起業を考えている人」「今までのコミュニティの関わりについて一度時間をとって考えたい人」と、年齢や職業はバラバラですが、「地域」「コミュニティ」「仕事」「暮らし」などのキーワードを持った人達が集いました。

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(第一回目の講義風景:コミュニティリレーション学は、教授である信岡さんの「どうしてみんな一生懸命働いているのに、未来は明るくならないのだろう?」という問いが根本にあります)

講義の第二~五回目は、小田原市で創業100年の老舗である日乃出旅館にて行いました。

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今回の合宿地である日乃出旅館は、地域コミュニティに根差して営業を続けてきたコミュニティリレーション学の先行事例とも言えます。

今回スタッフの方々にも、小田原というフィールドをどのように授業にリンクさせていくか?という部分で講義づくりから当日の進行までサポートしていただき、一緒に授業をつくっているような感覚で二日間を共に過ごさせていただきました。

 

・合宿一日目

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合宿一日目は、朝から晩御飯までの時間を使い、「自分自身について語ること」そして「メンバーのことを知ること」この2つをテーマに時間を過ごしました。

私たちは物事を進めていくときに、「何をするか」「どのように進めるか」「ゴールは何か」等、ついつい「やることありき」で話を進めていくことが多くなりがちですが、そもそもそこに居合わせたメンバーが一体どのような人で、どんなことを大切にしていて、どんなことに喜びや怒りを感じるのか、という「自分自身」について共有する時間はあまりありません。

この時間では、まずお互いのことを知ることから始めていきます。グループで価値観について話し合ったり、ペアで相手の話を伺ったりしながら、徐々にそれぞれの心の距離が近づいていく様子が印象的でした。

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(ペアインタビューの時間の様子)

そして一日目の夜の時間は、3人グループになってそれぞれのやってみたいことについて話し合いました。この時間はメンバーの話をききながらグループでよりその問を深めていくような時間でした。

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自分と価値観の異なる人を理解し合おうとする土壌があると、無理に自分自身のことを持ち出そうとしなくても、話し手の言葉は自然と深いレベルで語られるようになります。

また、初めて出会う人に質問されるのと、親しい友人に質問されるのとは、質問の質が違います。

午前午後とお互いのことを知る時間があったからこそ生まれる一段階深い質問が交わされ、それぞれが抱える問をグループで深めたり広げたりしながら一日目は終了しました。

 

・合宿二日目

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一日目は「メンバーを知る」ということに時間を使いましたが、二日目は「自分の大切にしたいことをベースにして、他人を巻き込みながらやってみたいこと」をテーマに話し合う時間をつくりました。

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教授の信岡さんから、OST(オープンスペーステクノロジー)という時間の使い方が提案されました。OST(オープンスペーステクノロジー)とは、予め話し合うテーマが準備されているのではなく、話し合いたいテーマを持っている人が、一緒にそのテーマについて話したい人を募り、時間を決めて話し合うという時間の使い方の提案です。違う言葉で表すと、”自分たち”で授業をつくり、”自分たち”でテーマ設定をし、”自分たち”でそのテーマについて話し合う時間。また、同時進行で複数のテーマで場が生まれていて、場への参加も移動も自由です。

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(ここからは運営の介入はありません。受講生の方々が自発的に動き、問いを深め、それぞれのテーマを形にしていく時間となりました)

 

▼話し合われたテーマ

①何故移住に惹かれるのか?

②あなたの欲しい理想の暮らし

③皆でプレゼンテーション

④人が出会い気づきを得る場をつくる

⑤お金について話す、考える

⑥日常と非日常について

⑦心地良い空間ってどんな空間?

 

この二日間の集大成がこの時間で、「やることありき」ではなく「いる人ありき」での運営を、実際に自分たちで場を運営しながら体験してみる。普段はミーティングで物事を進めていくとき、ゴールを事前に想定しながら話合うことはありますが、そうではなく大切にしたいことや譲れない価値観など、お互いのあり様を重ね合わせていくうちに、自然にゴールにたどり着くような感覚・自然にプロジェクトが立ち上がってくるような感覚が味わってもらえたらと思い講義設計をしていきました。そしてそれこそがコミュニティリレーション学で学べる人との関係のつくり方なのだと思います。

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普段すぐそばにいる人たちや、身近にいる人たちと丁寧にリレーションを築くことで、身の周りの環境は少しづつ、でも確実に変わっていくと思います。また、普段と異なる地域に入ったとき、まずは自分がどのような人なのか、そしてそこに住まう人たちが普段どのような目線で生活しているのか、そういう部分から共有し合い、お互いの理解を深めていくことは何よりも大切なことだと思います。

「やることありき」から「いる人ありき」へと、目線をシフトさせてみる。すると、今までとは違う景色が目の前に立ちあがってきます。なにか物事を動かそうと思ったときも、そのときに見えている景色はきっと大きな手掛かりになるのではないでしょうか。

初めてのキュレーター、初めての授業づくり、初めての講義の進行と初めてづくしでしたが、とても楽しくあの場に居させてもらえました。教授の信岡さん、今回サポートで入ってくれた前キュレーターの長谷川さん、日乃出旅館の寺田さん・高村さん、そして受講生のみなさん、それぞれのかけがえのなさが詰まった、良い時間でした。ありがとうございました!

コミュニティ・リレーション学 キュレーター 齋藤伊慈



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