講義レポート

あり様を道しるべに山を登れば、見える関係性がそこにあった

「コミュニティ・リレーション学」講義レポート

「コミュニティリレーション学(都市農村関係学)。」パッと聞くと地域活性や地方移住といったテーマの講義なのかと感じられます。私自身、地方への移住に興味があり、そこでの関係性をより円滑に進められればと思い今回参加することにしました。実際に、受講してみて感じることは、この講義は単に都市と地方の関係性をといった地域活性の話ではなく、その根底にある人と人との人間性から生まれる関係性の講義であり、地域活性や地方移住に興味のない人にとっても価値ある講義なのではないかと私は感じました。

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この講義で繰り返し行われたことは「人のあり様に触れる」ということです。講義の初日、1限目に教授である信岡さんが「エコロジーとエコノミー」についてお話しくださいました。エコロジーはよく生態や自然環境運動などに訳され、エコノミーは経済や社会を動かす仕組みなどの意味に読み取られますが、語源をたどると、エコロジーは成り立ちやあり様、エコノミーは運営方法または解決方法になるそうです。そして、現在では一般的に、エコノミー社会ばかりが関心を持たれますが、尊重すべきはエコロジーであり、成り立ちやあり様(エコロジー)があってその運営方法(エコノミー)が生まれるのが本来の形であるということを説明してくださいました。初めて聞いた話ではありましたが、私も移住を考える理由の1つとして、自分の心を大切に生活をしていきたいという想いがあり、この考えはすうっと体の中に入ってくる感覚がありました。

2限目以降は場所を移し、神奈川県小田原市にある「日の出旅館」で行いました。日の出旅館は小田原に100年以上続く老舗旅館をリノベーションして再オープンした旅館で、縁側やお庭など古き良きが残る空間もあれば、ひとたび現代に引き戻してくれるモダンなバーがあるなど宿全体が心休まる心地の良い空間でした。自分と向き合い、参加者メンバーと生まれ出てくるような純粋な言葉を交わすにはぴったりの空間でした。

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この2日間で私が一番印象に残っているのは、夜に行ったグループワークです。その課題は「各人が提案するやりたいこと案を1つの新しいテーマにリフレームする」というものです。それまでの日中の時間では、ひたすら人のあり様(エコロジー)に触れるワークをしていました。それは「きく」ことを通して話し手のあり様に触れるワークでしたが、この夜の部では人のあり様を「きく」だけでなく、チームメンバーの共通するゴールを導かなければなりません。言い換えるとエコロジーからエコノミーを見つけるワークなのですが、私は正直どのような時間になるのかわからず不安でいっぱいでした。これまでの「きく」ことはどこに行くかわからない道を話し手に寄り添って進むだけでよかったのですが、今回はその先に重なるゴールがなくてはなりません。実際に出てくる案も多様なものです。ワークが始まってからも私の不安が晴れることはありませんでした。しかし、お互いがやりたいこと案を元に気持ちや想いを話していく内にどこか繋がる部分が見えてきます。それはそれぞれのあり様を道しるべに山を登って頂上に到達すると他のルートから登ってくるメンバーが見えるように、さぁーっと全体が見えてきます。ワークの終盤ではメンバーそれぞれが気持ちを高ぶらせながら新たなテーマについて話していました。エコロジーからエコノミーを考えることで感じる高揚感を私はこの時初めて感じることができました。

異なるあり様(エコロジー)でも探っていけば繋がる関係性はきっと見つかります。それは今回のように異なる考えを持つ人とでも、あるいは、都市と農村でもきっとそうなんだろうとこの講義で私は感じました。来年からの私の新たな生活ではどんな関係性が築けるのだろうか、今から楽しみでいっぱいです。

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(text:第5期卒業生 岡崎匠)



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