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音楽はスタート地点。そこから人生の幅を広げて欲しい

「DIYミュージック」「DIY音楽研究室」教授 / サウンドアーティスト sawakoさん

もし自分の手で音楽がつくれたら、どんなに日常が楽しくなるでしょう。聴くだけだった頃の何倍も世界が広がっていくようです。今回登場するのは、「DIYミュージック」「DIY音楽研究室」教授、「未来を耕すダブルローカルライフ」でキュレーターを務めるsawakoさん。「音と暮らしとテクノロジー」をキーワードに人気講義を展開しているその裏側をお話しいただきました。

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ほんわかとした印象のsawakoさん。奏でる音楽はどこか、あたたかくて、ちょっとだけ切なくて、それでいて落ち着きます。

はじめに。講義を始められたきっかけを教えてください。

今はジャンルの垣根無しにいろんなことができる時代になってきました。映像にしても、アートにしても。それなのに未だに、「音楽は特別な人のもの」という意識の人が多く、もったいないように感じます。だからもっと音楽の垣根を低くして、みんなで楽しくできたらいいなと思っていました。そんなタイミングで自由大学に通っていたのが、講義を始めたきっかけですね。私は、サウンドアーティストとして15年くらいテクノロジーを使った音楽を作っていたので、「音や音楽」をキーワードに何か面白い出会いの場が作れるのではないかと思って。

 

教授になる前、もともとは受講生だったのですね。

そう、私自身2014年に自由大学の「クリエイティブ創業スクール – 女性起業家コース」を受けていました。電子音楽の業界は男性が多いですし、6年くらいニューヨークに住んでいたこともあって、日本の女性がどんなことを考えているのかが気になっていたので。一緒に講義を受けていたみなさんの影響もあって、講義化にまで発展しました。

 

「DIYミュージック」では具体的にどんなことをするのですか?

例えば、フィールドレコーディング。町の音や机を叩く音など、いろんな音を集めて曲を作ったりします。現代はもうiPhoneの録音機能だけで、普段音楽に触れない人でも簡単に曲を作れるんですよ。あとは、セッションしたり、最終回ではみなさんが作った音楽を発表してもらう場をもうけています。

 

初心者の方でもついていけますか? いきなりセッションは難しそうですが…

はい、もちろんウェルカムです。毎回、半分くらいの方が初心者なので、心配ないですよ。初めての方にセッションは、たしかに無茶ぶりだと思いますよね(笑)。でも、簡単なセッションなら5分くらいでできてしまいます。

セッションをすると自分のクセがわかったり、気づきがたくさんあるものです。ミュージシャンの方は技術や経験があるので、次はこんな音がくるなとか、その人がどんな音楽をしてきたかとか、歴史がわかるのですが、初心者の方はそこの歴史がないので、その人の良さがそのまま滲み出てきてしまうんですよね。逆に、その人が隠そうとしていることや本質も出てしまう。それが本当に面白いですね。

 

音楽だけじゃなく、自分を深めたい人にも合ってそうですね。

そう、私は「音楽を伝えたい」というより、「音楽をスタートポイントにして、最終的にはそれぞれの生活や興味の幅が広がったらいいな」と考えているんです。

例えば「DIY音楽研究室」では、ネイチャーサウンドウォークといって、自然の中で音を集めたり、耳を澄ませたり、音に集中するということもしています。実は耳って自分の興味のある音にフォーカスしてるので、意識的にそのフォーカスをずらしたり、広げたりする耳の訓練ですね。ちょっとフォーカスをずらすことで、世界に広がりが出てきたり、生活がもっと豊かになるのではと思っています。

 

「DIYミュージック」と「DIY音楽研究室」はどう違うのですか?

「DIYミュージック」では、毎回いろんな音楽の視点や要素に触れ合えるような講義になっているのですが、そこからもっと深めたいという声がありました。それに応えるかたちで「DIY音楽研究室」では、1つのテーマを深めていくような、音の世界を探求する内容になっています(違いについてはこちらのレポートを)。

これら自由大学の講義は、音楽がキーワードでいろんな人が集まるコミュニティーだと思っているんですよね。そこからプロジェクトが生まれたら楽しいなって。だから、あえて様々なテーマや視点を盛り込むように意識しながら、講義をつくっています。

 

ゲスト教授も毎回、多様なジャンルの方ですね。

はい! ゲストの方は、もちろん音楽をやられている方なのですが、「音楽+α」と音楽以外にも活動をされているパラレルな方をお呼びすることが多いです。例えば「コーヒーと音楽」とか「チョークアートと音楽」とか。

「DIYミュージック」が目指しているのは、「プロの音楽家になろう」ではなく、「自分の好きなこと+音楽でなにか面白いことができるんじゃない? 」というところなんです。例えば、音楽を突き詰めていったら、その他の好きなことも仕事になったり、いい形で融合していくのではと思っているのです。

 

卒業生も増えてきましたね。これからの変化も楽しみです。

もう80名以上いますね。卒業された後も、つくった音楽をシェアしあったり、情報交換をしたり、いいコミュニティーですよ。受講してから1年間毎日音楽を作っている熱心な方もいますし、音楽と自分のやっていることを繋げる方も多いので嬉しいですね。例えば、映像をやられていて、その映像に自分の作った曲を重ねている方もいます。実は、彼女にはアシスタントをやってもらっているんです。ちょうど今月も、音楽の発表を中心に40人近くの卒業生が集まった同窓会が開かれたばかりです。音楽の発表以外にも、それぞれの特技を生かした発表や、物販をしたり、持ち味を持ち寄った同窓会で盛り上がりましたよ。

 

sawakoさんご自身は、講義をすることで何か変化はありましたか?

講義中は、いつも刺激を受けています。私は経験がある分、考えて作ってしまったり、自分のクセが出てしまうので、受講生の作品に「すごいな、こんな音出せない!」って驚かされることもありますね。あとやっぱり1人1人好きな音楽も音との関係も全然違うので、毎回新しい発見があって有意義です。

 

sawakoさんはどのような音楽活動をされているのですか?音楽との出会いなど、バックグラウンドを教えてください。

私は、大学生の頃からテクノロジーと音楽を専攻していました。卒業後にはニューヨークの大学院でメディアアートを勉強していたり、その後も4年間ニューヨークでアート活動をしていました。アメリカはunique(ユニーク)であることを大事にする空気があるので、小さなアート活動でも「面白いね」とお金を出して応援してくれる人がいるんですよ。ご縁があって、初めてアルバムを出させていただいたのも、アメリカのレーベルでした。

最近は、ストーリーミングサービスなどで気軽に音楽が手に入る時代になり、すごいスピードで音楽業界も変わっている、不思議な転換期だなと感じます。変化も激しいけれど、それに一番フィットする方法を探しながら波乗りするのは刺激的ですね。

今は、来年発売予定のアルバムの製作中です。前のアルバムは夜がテーマだったので、今回は昼間とか光とかもうちょっとコントラストな暖かさやひだまりをテーマにしてます。ここ、gift_lab GARAGE(取材場所)にも置かせてもらっているんですよ。

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sawakoさんの音楽はこちらから視聴できます。 http://ototabi.tumblr.com/music

「未来を耕すダブルローカルライフ」のキュレーターもされていますよね。きっかけはなんですか?

今日、取材をさせてもらっている、gift_lab GARAGEも実は「未来を耕すダブルローカルライフ」教授の後藤夫妻のお店なんです。アルバムを置かせていただいたり、イベントをさせてもらったり、前から関係があったんです。

去年の夏に行われた「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ」の時に、山ノ家(後藤夫婦が経営されている新潟県十日町のカフェ&ドミトリー)でライブをしたことがあるんですが、その時に、後藤さんたちと話していた中でこの講義が生まれました。山ノ家は、立ち上げ時から過程を見てきたこともあって、教授のお2人の”自分の好きなことを暮らしにしていく”という想いに共感したのがキュレーターを始めたきっかけです。

 

最後に。自由大学で今後どのようなことに挑戦していきたいですか?

自由大学は集まってくる人が面白くて、背景も様々なので、もうちょっと卒業生が集まったら、小さなレーベルを作るのも面白いなぁと思ってます。今の時代は「選ばれた人だけが音楽を発表し世界に発信していく」というより、「みんなが自由に音楽を発信して世界とつながっていく」というベクトルになっているのではないかと。音楽はもうちょっとコミュニケーションに近くなるような気がしているんです。

この「DIYミュージック」や「DIY音楽研究室」は、いい曲を作るというより、その人なりに何か発見があればいいな、という願いがあります。経験者の方にも、未経験者の方にも、それぞれの気づきや学びがある講義を目指しています。経験者は新しい角度から自分の音楽を作る方法やきっかけになったり、未経験者は自分自身の発見だったり、ちょっと生活が豊かになったり、多様性に気づくきっかけになる人もいて、やっぱり面白いですよね。

テキスト&写真:ORDINARY 石川妙子



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