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【vol.5 求ム!逆境】花村えみ

解像度を上げるWHY

自由大学READY STUDY GO

東京は日本で一番お金で買えるものが多い街だ。もしかしたら世界で一番かもしれない。インターネットでの買い物を含めると、史上最強。そんな中で、「これが私の世界観だ!」という表現と、それを作り上げる最新のテクノロジーとのバランスは案外難しいことになっている。

DIYミュージックのゲストで登壇した音楽家の宮谷大輔さん。ギターをベースにフィールドレコーディングから得た自然の音を取り入れ、耳触りのいい音色を作る。自然派というだけでなく、しっかりと「グリッチ・エレクトロニカ等からの流れを感じる大胆な作風」でアーティストからの評価が高い。1stアルバムはドイツのレーベルからリリースし、デビューした。音楽業界では他国のレコード会社からリリースすることは珍しい話ではないらしい。とはいえ彼がその時いたのは、生まれ育った淡路島だった。しかも彼が使う機材は90年代モデルのものだったりする。(デザインも気に入っているのですと笑って話す)

東京に住んでいるという物理的な利便性や、お金をかけて最新の機材を買うということが、表現の場でどれだけ役に立つのだろう。もちろんインターネットがあるからこそ、どこにいても情報にアクセスできることで物理的な制約はかなりなくなっている。あとは、自分自身の中にある、田舎にいるという精神的な出遅れている感を自分が拭えるか、ただそれだけかもしれない。

毎年自由大学で行っているCreative Camp in ポートランド でNIKEの本社を訪問した際、デザイナーの一人が「制限があることはクリエイティビティを生み出すいい要素だよね」と語る。

物理的制約はむしろ自分の世界観を発酵させる、いいぬか床だ。逆境ととるか、個性を培養するぬか床と捉えられるかは自分次第。最新の機材を使って “時代が求めるもの”を作っていると、消費されてしまう。人とは違う規定で自分のやり方を培養した個性は「おや?」と目をひく。今の時代、もしかしたら物理的・金銭的な逆境こそが必要かもしれないとさえ思ってしまうのだ。

 

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