講義レポート

感じかたも、伝えかたも、動きかたもひとつじゃない

「東北復興学」講義レポート

「モヤモヤは受け止めて、育てる、伝える」

(執筆: 受講生 大和久歩由さん)

やっと、東北復興学を受けました。東北や311のことを話題にできる仲間ができました。あの時どう感じたのか、今どう思っているのか、これから何をしていきたいのか。あの日から様々な“モヤモヤ”を抱えた、そしてこれからもそれを抱えて生きていくであろう私達にとって、大きな心の支えです。心強いことです。

今考えてみると、私がこの講義を受けた一番の理由って、ズバリまだまだ東北や311のことを誰かと喋りたい、そんな一点だった気がします。それは、あの日が自分の生き方や心の待ち方を考え直す大きなきっかけになったから。そのきっかけをこれからも大切に守り、育ててゆきたいから。私にとってそれは、決して一人ぽっちでは出来ないことです。仲間がいなかったら、心細くて不安で、諦めてしまいそうです。だから、受講生同士が仲間になってゆくための場、大きな意味での「教室」を作ってくれた教授の大内征さんとキュレーターの水澤充さん、ゲストや卒業生といったキーマン達に感謝です。

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私は人の本当の思いに触れていたい、人と面と向かって話がしたい。311を経て、そんな人との直接的な関わりに、大きな意味を見出しています。そしてそのための一つのツールとして、私は“手書き新聞”を作り続けていきたいと思います。デジタルな文字じゃなくって、手書きの上手とは言えない文字に自分の思いをのせて書くことで、東北や311への思いを人に見てもらいたい。そしてその代わりに相手の思いも私にちらっと見せてもらえたら、私はとても嬉しいです。そうやって、あの日を大切に思う人達との思いのやり取りによって、今目の前にある時間をもっと愛おしいものとして捉えることができるんじゃないかしら!というのが、今の私の考えです。

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自分には何ができるんだろうとか、東北に行かなきゃとか、そんな通称“モヤモヤ”は、ちゃんと自分で受け止めて、育てていくべきものだなと思います。みんなの“モヤモヤ”をたくさん寄せ集めて、丁寧に束ねていったら、それはそれは素敵な幸せな花束みたいなものが出来上がる気が、私はしています。

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「動けなくても、動いている。まとまらない想いを言葉にして。」

(執筆: 受講生 伏島広野さん)

震災後、しばらくの間、仕事で福島県の会津地方に通う機会がありました。当時、東京から通う私を楽しみに待っていてくれる優しい方たちがいて、そこで暮らすさまざまな思いや考えに触れました。ひとり貸切り状態の路線バスの運転手さんとの会話や、春夏秋冬を感じながら小さな駅で一時間に一本の電車を待っている時間は、ぜいたくなものだったと思います。その仕事も終えて、東京でのみの生活となり、アンテナが鈍ってきたことに、どこかで気づいていました。

ふりかえると、震災支援に少しかかわっていたとはいえ、津波によるがれきを見ていないし、仮設住宅を訪れてもいません。「震災のこと。ちゃんと向きあえていないのではないか」と、もやもやが増してきました。ちょうどそんな時期、東北復興学の募集を発見。阪神淡路大震災のメモリアルデーが重なっていたこともあり、久しぶりにアンテナにぴんときました。

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今回、ご縁のあった8期メンバーは全員東北以外の出身。受講のきっかけもさまざまです。卒業生のプロジェクト共有もあり、人となりに耳をかたむけた第1回講義でした。そして迎えた福島県いわき市のフィールドワーク。MUSUBUの宮本英実さんコーディネートの元、小名浜の海を眺め、子どものようにはしゃぎ、おいしいものに舌鼓を打ちました。いわき回廊美術館では、未来の万本桜を想像し、ほくほくのお芋をほおばってたちまち笑顔に。ツリーハウスからみた遠くまで広がる風景はこれからどのように変わっていくのでしょう…。現場で活動している方たちのお話もうかがうことができ、ただただ、味わいつくしました。

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テレビや文字から伝わるものだけではない「そこにいるからこそ感じること」これが東北復興学の要だと思います。想いは、まとまらなくても大丈夫。少しずつ言葉にすることで受け止めてもらえます。さらにメンバー発信の想いや考えを、自分の気づきにつなげていく貴重な経験もできました。そんな語りあえる場ができたことはとても嬉しいことです。

講義を終える頃には、向きあえていないという焦りは少しずつおさまり、何か別の形に変わったような気がします。それが何かは分からないけれど、きっと動けなくても動いている。これからも答えの出ない問いに向きあい続けていくのだと思います。

人が暮らすこと、人とのつながり、そして…。もしかしたら東北復興学は、地域復興学であり、絆復興学であり、ひいては、わたし復興学なのかもしれません。東北のこと、ちょっとだけ気になり始めたらそれがサイン。どうぞ扉をトントンと叩いてみてください。 iwaki06



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