講義レポート

石巻カルタ、もうすぐ完成です

「東北復興学」卒業生プロジェクト

東北復興学」4期の浅野郁美さんから、卒業生による課外プロジェクト「石巻カルタ」の制作レポートが届きました。

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2013年6月に発足した「石巻カルタ」プロジェクト。今春の完成を目指し、いよいよ作業は大詰めです。

「おまえは橋の下で拾ってきたんだよ」という、親が子供に言う悪い冗談を一度は耳にしたことありませんか? しかし石巻では「魚の網に引っ掛かってたんだよ」というのが主流です。さらに、遠洋であったり、地引網であったり、マグロやカツオと一緒だったりと、各家庭ごとのオリジナリティ溢れるアレンジが加わり、海や漁業とは切っても切り離せない石巻らしい親のセンスが光ります。そんな石巻なら当たり前のこと、”あるある”を集めたカルタを作っています。

あの日から2年たった2013年の春、石巻出身の私は、震災後から抱えていたモヤモヤを解消するべく「東北復興学」の講義を受けることにしました。

震災以降、すっかり有名になってしまった「ISHINOMAKI」にずっと違和感を感じていたこと。私の知っている「いすのまぎ」は海のそばのどこにでもありそうな魚臭い田舎町だったということ。そこが私の故郷だったことを忘れたくないし、多くの人に忘れて欲しくないということ。そんな思いから講義の最終回に、群馬県の「上毛かるた」にヒントを得た、石巻「あるある」=いすのまぎ「んだんだ」を詰め込んだカルタを作りたいと発表したのが始まりです。

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仕事の合間をぬってあちこちから駆け付けてくれる、東北復興学の卒業生を中心としたプロジェクトのメンバーは、年齢も出身も、もちろん仕事も違います。職場の帰りにミーティングを重ね、家に集まって消しゴムハンコを彫り、和紙や糊付け方法についての研究、日帰り石巻調査ツアーも決行しました。この歳になって文化祭の前日の様なワクワクを感じられるとは思ってもみませんでした。半年間の活動の中で、メンバーがどんどん地元の人しか知らない様な石巻情報に詳しくなり、どんどん石巻弁の発音が上達しているのをみると、感謝の気持ちと同時に思わずニヤニヤしてしまいます。

このカルタは、ネイティブ石巻人が「んだ、んだ」と思えなければ意味がありません。そこで、あるあるネタの収集でお世話になったのが、東京のリトル石巻「石巻マルシェ・大森ウィロード店」です。石巻出身の奥様とそのだんな様が中心になり、石巻の特産品の販売や様々なイベントに取り組んでいます。東京にありながら懐かしい方言が飛び交う石巻出身者憩いの場です。こちらであるあるネタ収集の集いを開催していただいたところ、私も忘れていたようなネタが沢山集まりました。完成後のカルタ大会をマルシェで是非!とお願いしてもいます。

2013年夏、辛うじて建っていた私の実家は解体されて更地になりました。とたんに石巻に帰る回数が減り、そもそも帰るという表現が合っているのかすら分からなくなってしまいました。たとえ住めなくても、家があるという事で物理的に繋がっていた細い糸がついに切れてしまった、そんな気がしました。でも東北復興学の仲間たちと出会い、このプロジェクトを進めることで、私なりの「失われたふるさと」との関わり方を見出すことが出来た気がします。

石巻に住んでいる間は、わざわざ思い返すこともなかったような、たわいもない石巻についてのこと。津波とか被災地とかいう言葉の後ろに隠れた、こんなに面白い「いすのまぎ」を地元の方たちには誇りに思って欲しいと思うのです。そして完成したカルタを見て、石巻のおんちゃん、おばちゃんに、「おめだづ、ばがばがしものつぐったなや」と、少しでも笑ってもらえればそれもそれで嬉しいです。

石巻カルタが完成したら、あらためてレポートにて発表させていただきます。多くの人に、元来の「いすのまぎ」を知ってもらうきっかけになれば、これ以上の喜びはありません。



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