講義レポート

これから東北とどう向き合うかを考え、実際に行動する「東北復興学」。4期受講生の廣野真理さんがレポートを書いてくださいました。

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もうすぐ夏ですね。こんにちは。「東北復興学」4期卒業生の廣野です。

震災から2年経った2013年3月。テレビやネットから流れてくる被災地の現状を見ながら、私は心のつかえを感じていました。震災4カ月後に一度だけ行った石巻へのボランティア。けれどその時は、現実にどのような気持ちで対処したらいいのか分からず、ただもくもくと溝をさらっていました。問題の大きさに圧倒されていたのかもしれません。その後、私は具体的に行動を起こすことが出来ませんでした。

東京在住の私は、正直に言うと、東北のことを考えなくても日々普通に暮らすことが出来ます。でも、東北のことを忘れてはいけないと思う。東北に対して何かしたい気持ちはあるけれど、いったい自分に何が出来るのか。なかなか動き出せず、気持ちがスッキリしないそんな時に「モヤモヤから、一歩踏み出す」と書かれた「東北復興学」を知りました。

東北復興学」は、参加者が、なぜこの講義に参加したのかを話すことからスタートします。自分の現状や考えていること、感じたこと、モヤモヤしていること。「東北復興」という共通のワードはあるけれど、考えているポイントは人それぞれ。

それまで、そのようなことを一度も口にしたことのなかった私にとっては、まずそれが東北復興に関するスタートにもなりました。その後の講義では、とにかく「東北復興に関わっている方の話を聞く。」「フィールドワークで今の被災地の姿を見る。」「現地の方の話を聞く。」そして、それを「みんなで話す」ということが続きます。

参加者同士でとにかく話をすること。そこには教授の大内さんを中心に、4期メンバーのほか、ゲストや東北復興学OBなど、東北出身者もそうでない人も、すでに復興にかかわる活動をしている人もそうでない人も、年齢もバラバラなバラエティに富んだメンバーが参加します。

「始めはボランティアで行った偶然の土地だったけれど、一度行くと地元に知り合いが出来て、どんどん人の繋がりが広がっていって、その場所が好きになっちゃったんですよね。」
「不思議な縁でなぜかどんどん人が集まって、どんどん活動が広がりました。」
「この活動が何を生みだすのか、この場所がどうなっていくのか、とても面白いと思ってやっている。面白くなければ続かないです。」
「自分たちが経済的に自立していないと、復興支援なんてできません。」
「自分たちの活動を面白がってくれる人が必要です。」

いろいろな立場から発せられる言葉が、その時々でぐっと沁み入ってくる瞬間があります。出身でないのになぜその土地で活動しようと決めることができたのか、どんな気持ちで活動をしたらいいのか、東京で出来ることはあるのか。そんな私の数々のモヤモヤに対して、そのものズバリの答えではないけれど、いくつものヒントがそこにはありました。

そして実感したのは、東北復興といっても、つまりは「ひと」が「ひと」に対して出来ることを考え、実行するという、シンプルな活動なのだということ。地元の「ひと」の力、復興に関わる「ひと」の力、そしてその「ひと」同士の繋がりの力が、何かを生み出していくのだということ。もちろん、大きな規模での復興活動は存在します。

が、まずは「ひと」を好きになり、その繋がりを大事にしながら、自分の出来ることを出来る範囲で楽しくやることからスタートできる支援もある。ひとりでは出来ないことでも、それぞれの得意分野を持ち寄って成り立つ支援もある。何かしなければ…、と気持ちばかり焦っていた私にとって、人それぞれ、自分の支援の仕方を見つければいいんだと思えたことが、何よりも心の支えになりました。

東北復興学」は、なにかのやり方を教えてもらう講義ではありません。実際に見たり聞いたりし、東北について、素直に自分が思うところを話すことが出来る場、話すことが出来る仲間がいる場、それが「東北復興学」なのではないかと思います。色んな人が集まってワイワイ話すその場は、フレンドリー、かつオープンで真剣です。この講義を通して、私も魅力的なひとに沢山お会いすることができ、その縁が不思議とどんどん広がりました。

仕事をしているだけでは繋がることのできないそんなひと達との縁を大事にし、これから少しずつでも自分で面白いと思えることに取り組んでいきたい。今はそう考えています。

実際に第4期からも新しいプロジェクトがスタートしました。メンバーの一人の最終講義発表がきっかけとなった「石巻出身者が自分の育った故郷とつながる」ための「石巻(いすのまぎ)カルタ」作り。いま、そこからも「ひと」がどんどん繋がっています。「東北復興学」には、「ひと」が集まる場があります。ぜひ参加してみてください。



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