「おいしい写真を撮ろう」の第2・3回の講義の様子を、キュレーターの森田がレポートします。
第1回の講義で行った教授のデモンストレーションに刺激をもらい、今度は受講生のみなさん自身のインスピレーションを活かして、盛り付けにチャレンジしてもらいました。教室のテーブルには、きれいにパンとフルーツ、色とりどりの野菜、スモークサーモンとハーブが並べられています。
「これらの食材を使って、身近で大切な人にお出しする一皿を各自で盛り付けてみましょう。」
みんなに渡されたお皿は、シンプルな白い四角いプレート。そのまっさらなお皿をキャンパスに見立てて、絵を描くように、自由に気持ちのせて盛り付けてもらいます。
さて、どんな一皿たちが完成するのでしょうか・・・? ここで飯野教授からのアドバスが。
「お皿の余白を意識してみましょう。食材を引き立たせるためには、どう余白を空けるかということが、おいしく綺麗に魅せるカギなんです。」
なるほど。つい盛り付けとなると「盛り付ける=足し算」でどんどん加えるという考えに走りがちですが、実はお皿の余白も含め「足し算と引き算のバランス」をお皿全体で表現することがおいしい盛付のヒケツなのですね。色とりどりピックや、紙ナプキン、フレーバーオイル、小さなナイフなど自由に使って、思い思いに盛り付ける時間が始まりました。
その様子は、真剣かつ楽しそう。「ひさしぶりに学生にもどって美術の時間を体験している気分ですね。」同じ食材でも切り口を見せたり、オイルを垂らしたり、サーモンをクルリと巻いてみたり、飯野教授から少しずつ盛り付けのアドバイスをもらいながら、それぞれの個性を発揮していきます。「あ、いいこと思いついた!」とおしゃべりしながらも、手と頭はフル回転。時間いっぱいまで、みなさんのお皿の中では足し算と引き算が繰り広げられていました。
写真撮影のレクチャー担当の大平教授も、受講生に交じって盛り付けにチャレンジしていました。大平教授からは「盛り付けをしながら、主役を見つけてみましょう。おいしそうに見える正面を決めて盛り付けると、写真撮影もしやすいですよ。」とアドバイスが。
盛り付けが完成したら、撮影実習です。光を意識しながらそれぞれのマイカメラで撮ってみます。
今回はレフ板がある場合と無い場合を撮り比べして、その変化を体験してもらいました。
「カメラがスマートフォンであっても、一眼レフであっても、レフ板の効果は必ず出ます。ちょっとした白いナプキンだってレフ板の代りになるんですよ。」と大平教授。これなら普段にも取り入れられそうですね。
「全体を撮るだけでなく、お皿の一部を切り取るように撮ってみるのもいいですよ。」と大平教授。
「ついお皿全体がまんべんなく入るように撮ってしまいますが、それでは『ここを見てほしい』という意思が写真から伝わりにくいですね。主役を決めたら思い切って、周りは見切れるぐらい大胆に。主役に目がいくように、強弱をつけます。」と、写真でも足し算と引き算のバランスがカギになるようです。
自分で盛り付けたお皿には、工夫したポイントや想い入れがいっぱい詰まっています。そこを一度に全部入れようとぜす、ポイントを整理しながら撮影すると、よりおいしさや楽しさが引き立つ写真が出来上がるのですね。
最後にみんなで盛り付けたお皿を一斉に並べて、ひとりずつ工夫した点や感想を発表してもらいました。
「はじめてで上手く盛り付けができるか心配でしたが、アドバイスいただきながら、自分で考えて作ることが出来てとても楽しかった。」
「写真に撮ると盛り付けを客観視できて面白い。盛り付けの工夫に気をとられて、色合いやボリュームをもう少し工夫したら良かった事に気が付きました。」
「写真はカメラで変わるのかと思っていました。光や構図でもこんなに自分の写真が変わると思いませんでした。」
二人の教授からは、ひとりずつのプレートをみながら、アドバイスもありました。「さらにこんな風にしたらより一層良くなりますね。」という目線で語られるメッセージは個性を大切にする教授陣ならでは。
あっという間の実習は終了。みんなでそれぞれの盛り付けプレートを食べながら、最後に次回のみんなでつくる持ち寄りパーティに向けてのテーマづくりをしました。いろいろな案が出た結果、あえてパーティフードになりにくい和食を使って秋をテーマにパーティを作ることに決定。
テーマに合う、デザート、ごはん、サラダ、おかず係をざっくり決めて、次回に料理を持ち寄ります。どんな食べ物が集まるかは、当日のお楽しみ。手作りでもよし、お店屋さんのお惣菜でもよし、どんな盛り付けでパーティが出来上がるのか楽しみです。