講義レポート

いつの間にか、閉塞感が希望へと、じわじわ変わっていった

「コミュニティ・リレーション学」講義レポート

「コミュニティリレーション学」ってなんだろう。パッと見た時、よくわかりませんでした。教授の信岡さん曰く、よりわかりやすい言葉にすると「都市農村学」という名前になるそうです。どんな講義かというと、「本当は繋がっている都市と農村の関係を立ち止まって、あらためて見直してみる」ような時間。

そういうテーマだからか、都市側に住んでいるけど農村側のくらしに興味のある人や、農村側への移住を決めている人、既に農村側へ住んでいる人など、様々な年代や様々な職業の人たちが「都市と農村」をキーワードに集まっていました。全5回の講義では、全15人の参加者で3チームを作り、講義終了後にチームでアウトプットをすることを前提に話し合いを重ねていきました。

community11

この講義では、「エコノミー」と「エコロジー」という言葉が何度も登場しました。わかりやすくいうと、「エコノミー」というのは、「組織の運営方法」。「エコロジー」というのは、「組織の中の人たちのそれぞれの想いや、組織で大切にしたい想い」。この講義ではこの「運営方法」と「それぞれの気持ちや想い」を何度も行き来します。

普段の何気ない会話で、ぼくたちはすぐにエコノミー側、つまり「どういうふうに運営するか?」というやり方の話をしてしまいがち。そういう外側の話をする前に一度立ち止まってエコロジー側、例えば「今、どんな気持ち? 自分はどういうことを感じている? 何を大切にしたい? 」という、自分の内側の話を共有していくことって大事なんじゃないか?時間はかかるけど、エコロジーを大切にしていくことで、エコノミー(進め方)も変わって来るんじゃないか?と、そんなことを信岡さんはおっしゃっていました。

community12

実際に、それぞれの内側の話を共有していくことで、話し合いの進め方も随分とかわりました。ここにいる人達は一体どういう人達で、どんなことを大切にしてきて、どんな方向性を持っているのか。今思うと、ここを共有せずに話を進めていっても、きっと気持ち悪さや違和感を引きづりながら進んでいくことになったんだろうなと思います。

信岡さんは、時折話が「エコノミー」寄りになってきたとき、そっと、チームの足並みがそろうような投げかけをしてくれます。「今の話し合いのペースが早いと思っている人いますか?」「今チームの中で、一番マイクがわたってない人の声をきいてみませんか?」いま思うと、あれもそれぞれのエコロジーをすり合わせていくプロセスだったんだろうなあ。

community13

ぼくは、千葉県の田舎に住んでいて、いわゆる田園風景や里山に囲まれて普段生活しています。ぼくは、この講義に参加するまで、都心に出ることはあまり好ましくないと思っていました。都心に出るだけで往復3000円もかかるし、都心で買い物をしても自分の地元の経済にはさっぱり貢献できないし、人ごみの中にいくと疲れて帰るとへとへとになってしまう。だからなるべくなるべく地元で全てを完結させようとしていました。人とのつながりも、買い物も、娯楽も、仕事も。

そういう視点で地元を眺めてみると、結構面白いもので、今まで見えてなかったけど実は前からそこにあった面白いお店や、面白い人達ともつながることができました。地元にちゃんと目を向けようと思って行動したことの一つの収穫です。でも、いつからか、だんだん得体のしれない閉塞感が出てくるようになりました。その閉塞感は、ぼくの気力を徐々に奪っていきました。そんなときに、友人の紹介でコミュニティリレーション学を進められ、参加したのでした。

この講義では、そのもんもんと抱えていた「閉塞感」がパカッと開けたような感じがありました。確か第一回目の講義で信岡さんはこんなことを言っていました。「都市と農村というのは、どちらか片方だけで成り立っているんじゃなくて、稼ぎ頭のお父さんと家を支えるお母さんのようなもので、お互いに補完しあうことで上手く回っていく」この言葉をきいて衝撃を受けました。今までぼくの中では「都市」と「農村」はぱっくり二つに分かれていて、そして対立していた。自分の住んでいる「農村」を肯定したくて、都市を否定的にみていたというか。

でも、この言葉をきいてから、この二つが繋がったのです。この変化たるや、もの凄い衝撃で、それからぼくは頻繁に都市にいくようになりました。田舎に住んでいるぼくが都市にいくこと。きっとそれ自体が自分の住んでいる農村に新しい風を吹き込むための大切なきっかけになるんだという自覚が生まれました。一時期は、一か月に一回も地元から出ない、という時期もありましたが、今ではむしろ地元よりも都市に出る機会の方が多いです。でも、その変化がきっかけで、自分の住んでいる農村にも光が見えてきました。あのころの閉塞感は今は希望にかわりました。

この講義がどんな講義か? というと、ぼくがあまりに受け取ったものが多すぎて、大きすぎて、どれを伝えれば良いのか悩ましいのですが、とにかく、すごい講義だと思います。たった1.5時間×5回の講義で、その後の生き方が変わってしまうような、そんな講義だと思います。大袈裟かもしれないけれど、ぼくはそのくらい感動しています。あの場で出会えた人や、あの場を紹介してくれた友人皆に感謝します。本当に良い講義でした。

もし、このレポートを見ている人で、少しでもコミュニティリレーション学に興味のある人がいるなら、ぜひ足を運んでみて下さい。きっと、自分にとっての宝箱に出会えるんじゃないかと思います。

(text:受講生 齋藤伊慈さん)



関連する講義


関連するレポート