講義レポート

格子と穴、抜け方のワザ

穴学 (W)hol0logy 教授コラム Rodion TR(ロディオン)

 

新宿区に10年以上住んでいます。信じられないことにほとんど毎日、混んでいるホームで電車を立ったまま待たないといけないのです。
JRは工夫して乗客が並べるラインを作っています。かなり細かく、よく考えて作っています。合理的に考えれば役に立つものです。正直に言えば、そのラインで並べば確かにスムーズな乗り降りができると認めるしかないです。
しかし、信じられない程の理不尽さ、強い反抗を感じます。
なぜか?
その「線」に東京→日本→地球→宇宙→物理的世界のすべての制限を圧縮して表現されているように見えるからです。

でもNeo-Tokyoは、自分の精神的成長を確かめるための1つのツールとして使えます。
最初は「ソ連が崩壊して、物資が足りなかった時期に、パンを買うために2時間以上列に並んで待ったことが何回もある。もうラインに並べるのは勘弁して」というちょっとロマンチックで、ある程度かわいい、並びたくない言い訳をしていました。

「貴方は交通費を払わないといけない」から「貴方は死ぬ」まで、あらゆる決まりを代表しているそのホームの線と戦っていました。

時間が経って、今はその線との対話の発展に関して小さな本を書けると思います。

問題は格子です。
映画の『トロン』のように、人生というゲームのグリッド(格子)があります。その格子を乗り越えるのが無理ならば、どうやって抜ければいいのだろう?格子にしっかり入って、その中に穴を探すのはどうか。
私は運が良くて、日本に来る前に合気道を知り、すでに15年以上やっています。体、その硬さ、決まっているステップ/振る舞いという制限があります。制限を離れるのではなく、数えられないほど型を反復する。そして型の中に入ること、そのことによって、気が発生して、格子の穴を見付けて、抜けることができるのです。

しかし、武道という芸術だけではなく、美術全体がそうでしょう。額縁/フレームが決まっていても、アーティストはそこに「他の次元」に導く開きを創造できます。
瞑想においては痛みから逃げるのではなく、逆にそこへ入って、分断しながら溶かすという方向性があります。
テクノは極端な位置を取れる例だと思います。まるで、サイバーパンクの世界のように、格子を決めるのは電子機械ですね。人間はそのシステム自体を使いながら、穴を開いて、ダンスに導く気、エネルギーの噴火を引き起こすことができます。

ホームのラインに並んでいても、自由に感じるというのは誠の自由ではないですか。
出口は格子の中に。

 

text : Rodion TR(ロディオン)

担当講義: 穴学 (W)hol0logy



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