講義レポート

暮らしと仕事と稼ぎのバランスを探求する島起業ワークスタイル

「アメーバワークスタイル」講義レポート

時代の変化に合わせた変幻自在で自由な働き方を創っていく『アメーバワークスタイル』。受講生の大河原貴さんが講義の様子をレポートしてくださいました。

アメーバワークスタイルの第4回目はゲストに阿部裕志さんをお迎えしてお話を伺いました。
阿部さんは島根県の隠岐諸島にある海士町で株式会社巡の環という会社を経営されており、都市と農村の交流のためのイベント企画、企業や学校、行政とタイアップしての地元資源を活用した教育研修事業、地元特産品のネット通販やWeb制作等、多彩な事業を営まれています。

海士町に移住するきっかけ
阿部さんは海士町の出身ではありません。大学院で材料工学を学び、トヨタ自動車に就職。生産技術部門で自動車生産ラインの設計、立ち上げを担当されていましたが、資本主義の限界や持続可能な社会づくりを模索する中で海士町を訪問。島を良くするために真剣に取り組む住民の姿に惹かれていきました。

起業に当たって
持続可能な地域を作るためには地元での雇用の確保が必要であり、地域の人に楽しいことや儲けになることを提供して事業に参加してもらうことを意識している。単純にお金になればいいのではなく、地域の誇りを高めるビジネスを実現するために安全圏からではなく「人生実験」として企業を志した。地元の方の「人生思い出づくり」という言葉のとおり、経験や人の繋がりといったものは必ず何か残るし、失敗しようが何しようがなんとかなる!と思って飛び込んで行くことが大切。

巡の環の事業
ご年配の方と若者、都市と地方、生産者と消費者という対立軸の関係で捉えられやすいものの間で相互理解を深めること、少子高齢化など50年先の日本の問題が既に到来している島の社会から新しい社会のあり方を学ぶことを目的としています。
例えば、企業の労働組合とタイアップした研修事業では、巡の環が地元の資源を参加者に提供することにより新しい価値観を提供すること、地域住民と巡の環の間で相互信頼関係を深めていくこと、日常生活のバックグラウンドが異なる参加者と地域住民が相互に学び合う、それぞれの立場でメリットの有る仕組みづくりを進められています。

海士で見つけた生き方
阿部さんは、人の生活の3つの側面として、暮らしを自分の手の中に収めて自活できる力を持つための「くらし」と、地域社会を維持し将来にわたって発展させ相互信頼を得るための「しごと」と、自分がやりたいことで周りの人を喜ばせて必要な金銭的報酬を得る「かせぎ」を挙げられていました。
トヨタで働いていた頃は、平日の生活が「かせぎ」に休日の生活が「くらし」にそれぞれ力点が置かれていて「しごと」の部分がほとんどなく、「くらし」と「かせぎ」を使い分けることに矛盾を感じていましたが、海士町に来てから社会が小さいこともあってこれらが分立せず、ありのままの自分でいることができるようになってきたとのことです。

感想
阿部さんの人間好きというかオープンな雰囲気が端々から伝わってきて、ついつい話に惹き込まれてしまいました。大企業と田舎ベンチャー、都会生活と離島生活のそれぞれの経験から、一旦は枠の外に出てみないとある対象を客観視することが出来ないという言葉にも強く共感しました。職場などのフォーマルな場所から離れて色々な人と語り合いながら働き方を掘り下げていくのはそのような意味でも貴重な機会だと思います。



関連する講義


関連するレポート