「この前提で生き続けていいのか」地球にも人間にも限界がある
「実践!アーバンパーマカルチャー」には、
いわゆる「自然が好きな人」だけが集まっているわけではありません。
昨年度の参加者には、編集者やライター、不動産やリノベーションの仕事に関わる人、福祉職、環境NGOなど、さまざまなバックグラウンドのメンバーたちそろいました。共通していたのは、都市で暮らし、都市で働きながら、どこかで「このままでいいのだろうか」という違和感を抱えていたことです。
「自然のある暮らしは、郊外に行かないとできないと思っていた」
「ガーデニングをやってみたいけれど、土や植物の来歴を考えると踏み出せなかった」
「環境や循環のことを取材してきたけれど、話を聞くだけでは足りなくなった」
そんな思いが、参加の動機として語られていました。

ソーヤー海さん(教授)と深井次郎さん(自由大学学長)
石田紀佳さん(教授)。自分自身のからだがひとつの地球(生態系)なのです

土に触れると、「考える癖」が止まる。身体が答えを導いてくれる

知識として「知る」ことと、
身体で「関わる」ことのあいだには、深い溝があった。
この講義の特徴は、「都市でパーマカルチャーを実践する」という点。
パーマカルチャーとは、自然の仕組みをヒントにしながら、持続可能な暮らしや社会のシステムをデザインしていくための考え方です。そこに「アーバン(都市)」が加わることで、屋上やベランダ、都市の隙間といった場所が、すべて実践のフィールドになるのですね。
「自然がない」と思い込んでいた都市も、実は自然の一部なのだと観察する目が育っていきます。
講義では、土に触れ、植物を観察し、実際に手を動かしながら学んでいきます。最初は戸惑いながら作業していた参加者も、回を重ねるごとに、少しずつ感覚が変わっていく様子が印象的でした。
「何が正解か」をすぐに決めなくてもいい。
効率や成果を急がなくてもいい。
都市の真ん中で、そうした時間を過ごすこと自体が、メンバーにとって新鮮だったように思います。
太陽の熱で野菜や肉も焼ける。ソーラークッカー
育てたハーブをブレンドして、ハーブティーに。自然を学びながら、都市の見え方が変わっていく

世界との関係をどう結び直すか、という問い
講義の軸になっているのが、ソーヤー海さんの著書
『都会からはじまる新しい生き方のデザイン
URBAN PERMACULTURE GUIDE』です。
この本は、パーマカルチャーの理論や具体的な方法を紹介するだけでなく、「自分と、都市と、世界との関係をどうデザインし直すか」という問いを投げかけています。
講義では、この本の世界観を実際に体験していくような時間が流れていました。
・食べられる植物を育てること。
・消費する側から、つくる側に回ること。
・境界をひらき、人が集まれる場をつくること。
・お金だけに頼らない関係性を考えること。
・そして、ときには立ち止まり、自分との関係を見直すこと。
こうしたテーマは、座学として説明されるというより、実践のなかで少しずつ結びついていきます。もちろん、講義以外のそれぞれの生活の中で、マイプロジェクトを進めていく。それぞれの実践の試行錯誤を共有することで、メンバー内の学びが加速していく様子が見られました。
プロジェクトに多くの人が関わる時は、人間関係のデザインも重要。誰かの問いが、自分の問いにもなっていく
都市の幸。永田町の自由大学周辺にも銀杏がたくさん落ちています。
都市にだって、食べられるものはたくさんあるし、育てることもできる。立場や職業を超えて、輪になって実践します。
「自由」とは、選択肢が増えることではなく、前提を疑えること。

完成させるより、循環に参加する感覚のほうが大事だった。
印象的だったのは、「完成させること」よりも、「循環に関わること」を大切にしていた点です。
完璧な菜園をつくることや、すぐに成果(収穫高や美観など)を出すことが目的ではありません。都市の中で、どのように自然や人との関係を編み直していけるか。そのプロセスそのものが学びになっていました。
講義が終わったあとも、参加者それぞれの暮らしの中で実験は続いています。屋上やベランダで小さな緑を育てたり、地域の人と場を共有する構想を練ったり。多くの人が描いているのは、大きな転身というよりも、都市の中に少しずつ循環を戻していくような未来です。
千葉県いすみ市の「パーマカルチャーと平和道場」でのフィールドワークも

自然に近づけば、自分に戻れる

夕日、毎日見てますか? 自然のリズムで生きる

年間を通しての深い実践。講義が終わっても、実験は終わらない。
「実践!アーバンパーマカルチャー」は、単に技術を学ぶ講義ではありません。
都市で生きる感覚を一度立ち止まって見直し、自分なりの暮らし(人生と言ってもいいかもしれない)のデザインを考え直すための、時間をかけた学びの場です。
受講料や期間だけを見ると、決して気軽な講義ではないかもしれません。
けれど、その分、関わりの深さと、学びの密度があります。
自然に近づくことが、結果として「自分自身に戻ること」につながっていく。
この講義は、そんな感覚を確かめたい人に向けて開かれています。
⚫︎2026年度も募集を開始しました
実践!アーバンパーマカルチャー
都市を耕し消費者から創造者へ。地球で豊かに暮らすデザインを学ぶ9ヶ月の冒険
https://freedom-univ.com/lecture/urbanparmaculture.html/
