講義レポート

自分で創るという劇薬

フリースタイル家具学 第一回レポート(河村泰介)

あなたの家に、いまある家具を1つ1つ、見渡してみてほしい。

そのどれもに心の底から愛着を感じ、いい机だなあ、いい椅子だなあと惚れ惚れするか。もし、答えがNoだったら、ちょっとこのDIYは劇薬になるかもしれません。

今回は、新講義「フリースタイル家具学」の初回講義の様子をレポートします。

最初は参加者の自己紹介から。
「コンパクトな部屋にフィットする家具が既製品だとなかなか見つからなくて」
「特に作りたいものは決まっていないけれど、気軽にDIYをやってみたくて」
「趣味でDIYのワークショップなどもやっていて、本格的にやってみたくなって」

など様々なモチベーションで参加されていて、DIYの経験に乏しい私も一安心。

教授の三輪ノブヨシさん、ゲストでプロダクトデザイナー、そしてクリエイティブユニットTENT代表の青木亮作さんによるイントロダクションが始まった。

 

 

スクリーンに映し出される洗練されたプロダクトたちを見ると、とても自分みたいな素人には手も足も出ないのではないか、とたじろいでしまったが、次のスライドでそのプロトタイプを見て驚いた。

なんと、段ボールでできていたのだ。

しかも、細部まで製品版に近い形で再現されており、サイズ感や機能イメージも持てるような作りになっている。
あの商品も、最初は段ボールから。そう思うと、少しだけ自分にもできそうな気がしてきた。でも、一体何を作ればいいのか。

アイデアがない。そう思っていると、青木さんからプロダクトのアイデアを出す極意のレクチャーが。

普段の生活で「なんか嫌だな」と思ったことをひたすらカードに書いて、それをタネにしてみんなでアイデアを膨らませていくワークだ。

カードに書くことで、自分や誰かのモヤモヤやその解決策がどんどん可視化されて、頭が活性化し、議論も活発になっていく過程が面白い。私が書いた「充電ケーブルだらけで部屋が不格好」という小さなモヤモヤも、参加者たちが取り上げてくれてアイデアがたくさんあがり、結局自分ではなく他の人の創作のタネになった。そうか、モヤモヤは創作のタネなのか。

きっと三輪さんも青木さんも、普段からこんな感じで自分の感じた気持ちを出発点にして、「こんなものがあったら」から着想しているから、どんどん斬新な発想が生まれ、どんどん楽しくなって、つぎつぎと画期的でユニークな作品を生み出し続けられるのだろう。

 

各自で取り組むイメージが固まったら、いよいよ段ボールを使ったプロトタイプ作り。ポイントは、原寸大で作って大きさを肌で実感できるようにすること。家具なのでそれなりに大きなサイズになり、各自大きな段ボールを相手に試行錯誤が始まった。

私も本棚作りにトライしたが、大きな段ボールにカッターを入れたり、ガムテープでくっつけたり、人生初のグルーガンに挑戦したりして、手を動かせば動かすほど夢中になり、どんどん改善点も見えてくる。

なかなか思い通りにはいかないけれど、段ボールだから、やり直しも簡単なのがいい。そうしてあっという間に創作時間が終わって、最後はみんなが作った作品の紹介タイム。

どの作品にも工夫の跡が見られて、これがDIYならではの味になるんだろうなと未来の完成形が待ち遠しくなった。そうして今後段ボールがべニア板になり、苦労しながら自分の手で製品化していくことで、きっと一生使い続けたくなるような「愛着の湧く家具」に育っていくのだろう。

もちろん、三輪さんのように家中のすべてをいきなりDIYするのはハードルが高いだろう。それでも、この講義を受けて、少しでも自分の手で作り始めることで、世の中の既製品に対する見方や感じ方も変わってくる。「こんな安っぽい素材か」「この独特な形はかっこいいな」「ここにこんな機能があったらいいのに」と、既製品に対する審美眼が磨かれ、そして次のDIYへのヒントとなっていくのだ。

一度このDIYを知ってしまったら、すべてが創作の始まりとなり、既製品では飽き足らなくなってしまうかもしれない。そんな“劇薬”を、皆さんも段ボールから始めませんか。

フリースタイル家具学 第一回レポート TEXT:河村泰介



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