講義レポート

【インタビュー】40歳の地点 – 田辺さんの場合

「魅力を引き出すインタビュー学」講義課題  第1期生 河村翔さん 

魅力を引き出すインタビュー学

魅力を引き出すインタビュー学」の卒業課題として、魅力的だと思う人にインタビューをおこなってもらいました。 受講生が作成したインタビュー記事を紹介します。 コーチングの仕事をしている翔さんによる記事。 ご自身と重ね合わせて「40歳」の転換点を軸とした点がユニークです。 取材対象者は長年の友人とのこと。改めてインタビューという形で向き合ってみると、新たな発見が生まれます。

インタビュアー:河村 翔|コーチ

前置き – みんなどう生きてるんだろう?
今年40歳になりました。が、不惑とは程遠い混乱の中にいます。これまでの自分でいられないのは分かっているけれど、とはいえ新しい方向は見えない…暗闇を手探りしているようです。わたしの40歳はこんな感じだけれど、ふと、他の人はどうなんだろう、と。ここまでどういう道のりを経て何を感じ、どこに向かおうとしているんだろう?自分の参照とするために、同じ40歳の地点を聞いてみようと、今回は20年来の友人で同い年である田辺さんにインタビューをしてみました。


インタビュー

ー あらためてお名前、年齢、いまの仕事について教えてください

田辺です。今年40歳になりました。仕事は訪問マッサージをやっていて、今年の6月に独立して3ヶ月経ちました。

 

ー 独立してみてどうですか?

営業が大変です。これまでは技術を披露して信頼してもらえたら仕事になってたけど、いまはその前に会話で信頼を勝ち取らなきゃいけない。(仕事をもらうという)自分の欲求のために相手の心理を誘導するようで…抵抗感、葛藤を感じてます。

 

ー 生活のほうはどうですか?

これまでは訪問して、マッサージして、お話しして家に帰って、と1日のルーティンが決まってました。仕事とプライベートがキッパリと分かれてた。それが1人になると全部自分で考えなきゃいけなくなって境が曖昧になって…。さっきの、営業に葛藤して動くのを躊躇しちゃって、だらだらする時間も多くなってます…。行動できてない分、かえってプライベートの遊びに制限をかけちゃったりしています。

 

ー 20年来の付き合いですが、いまから振り返るとこの20年どう感じますか?

あんまり成長してない気がします苦笑。

与えられたことしかやってこなくて、責任を抱えるのも嫌ってきて、下っ端根性でやってきてしまったと感じてます。でも1人になったいま、苦労してる。これまでも自分なりのあがきはしてきてたつもりだけど、やっぱり今はよりもがき苦しんでるタイミングだなと感じてます。

 

ー そういう期間が長かったわけですが、あえて独立を選んだ変化がなにかあったんですか?

もちろん下っ端だったわけだけど、(上司や社長など)上の人間にたいしてすごい不満を抱えてはいて、はいはいって愚痴を言いつつ自分では動こうとはしない、ってなってました。でもそれってなんかちょっと違うって違和感が強くなって…。

 

ー なにかきっかけがあったんですか?

前の会社の社長とものすごくそりがあわなかったんです。人間として好きじゃなくて。それで早いタイミングから転職は考えてました。でも、それまでも上への不平不満を溜めて辞めちゃって、これから先もこれを続けるのかなと考えるようになって…。

独立する選択もあるんだったら、それなら自分でできるか試してみて、できたらやればいいし、できないんだったら、それなら自分はできないんだって受け止められて割り切れるようになると思ったんです。

 

ー 不満を言い続けながら下っ端として働くのは違ったんですね?

それは…なんかカッコ悪いと思いました。他の人がやってたらカッコ悪いと思うことを、自分がやっちゃい続けるのは…カッコ悪い。それに、生きててメンタルヘルスが悪くなりそうで嫌だなと思ったのも根底にあるかもしれません。だからちゃんと飲み込むためにも、独立してやろうと思いました。

 

ー なるほど。それはなにを大切にしてるんでしょうか?

納得性、かな。納得できるかどうかって、下っ端云々の話ではあったけど、やっぱりずっと大事で変わらないことのような気がする。小さいことから、たぶん納得いかないことは納得いかない、って言っちゃうタイプの子だったし。

 

ー なにか印象深い思い出が?

小学校の音楽の時間で、怒られたんです。何で怒られたかは覚えてないんですけど…。それで、出て行けって言われたらほんとうに出て行ったんですよね。先生としては謝ることを期待してたんだろうけど、自分は怒られたことに全然納得してなかったから出て行ったんですよ。納得してるふりして謝ることにすごい違和感、不快感を感じたんですよね。

 

ー その精神は通底してるんですか?

たぶんそうだと思う。だから営業についても、自分のスキルが足りてないって認識なのに、自信をもって俺の技術で直しますって言えなくて…なのでこの状態で営業をかけてくってことに葛藤してるんだと思います。

 

ー 納得ですね…逆に、40歳にいたって変わってきたと感じることはありますか?

自分の幸せと他人の幸せに境界が見えるようになってきたかなぁ。ルービックキューブの面を、自分の幸せってなんだろうと、形を変えるのを繰り返しながら模索してきて、いま、自分の形に近づけられてきてる気がします。

 

ー たとえば、でなにかありますか?

たとえば…浮気についてとかかなぁ。前は、浮気は善いか悪いかの基準で話して、するのが悪いかで話してました。でもそうじゃなくって、自分がやってしまった場合に自分の気持ちが幸福かそうじゃないかの視点のほうが、大事だと思うようになりました。

仮に誰かと付き合って、お互い隠し通せばセーフ、とも考えられるけど、自分が幸せかどうかで言えば、たぶん罪悪感を感じてよくない。理屈よりも、自分の気持ちに従わないと死んじゃうな、って思ってます。

 

ー 自分の気持ちがどうか、が大事なんですね

世界が悪いと言っても、自分が納得をしていればそれはもうしょうがない。世界がいいよって言ってても、法律としては違反してないけど自分が納得できないんだったら、納得できない、ってなりますね。

 

ー 40歳の地点、って感じがしますね

自分が大事にしてるものはそこなんだ、って、磨きがかかってる気がします。

 

ー 最後に、この地点から先についてどう感じてますか?

この先どうしたいかって難しいよね苦笑。

できるだけ力を抜いて生きたいのが本心なんだけど、たぶんそれじゃダメだろうと思ってる自分もいて。さっき言ったとおり、カッコ悪い状態でいたくないと思ってます。納得できないので。これがある限り、たぶん、もうちょっとあがいて人生をよくしようとするんだと思います。

あがいて、しょうがないとなったら、あきらめて飲み込んで肩の力を抜いて流れるままにやっていける気もするし…納得できるまで、頑張りたくないけど、頑張らないといけないんだろうと思ってます。

 

ー ありがとうございました。

振り返ってみて
納得できるかがとても大切で、それを大事にしようとするからこそ葛藤があって…インタビューをしながら40歳のその生々しい葛藤に心動かされました。同じように違う形で惑っていることに安心感を共有しつつも、悩みながら進むそのリアリティに、人生のうつくしさを感じました。

 

ここまで読んでくださってありがとうございました!



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