講義レポート

料理の衣装をつくる

教授コラム 感じるうつわ学 檀上尚亮

料理の衣装をつくる 檀上尚亮

食器は料理の着物だ。と言ったのは昭和時代に活躍した陶芸家北大路魯山人です。アラフォー世代以降には漫画「美味しんぼ」に登場する美食家で陶芸家である海原雄山のモデルになった人物として有名かも知れません。
さて、皆さんは普段からどんな服を買い求め、お洒落を楽しんでいるのでしょう?
リラックスする時に着る普段着。デートや観劇に出かける時のお洒落を楽しむ洋服。仕事に出かける時、運動をする時、季節に合わせた洋服を選ぶのも楽しいですね。それに比べて家に有る食器はどんな物をお使いですか?お皿、ボウル、丼、カップ、、形や大きさが違うだけで有る程度の種類はあってもいつも同じ物を使い回していませんか?
器の種類が増えればそれに合わせてお料理のレパートリーもきっと増えていきます。特別難しい事ではありません。得意料理に合わせたお気に入りをうつわを用意すれば良いのです。それだけで料理の腕がどんどん上がり、家族や友人に振る舞う機会も増えて、食事それ自体がが愛しくて大切で充実した時間に育っていく事でしょう。さあ、あなたも手始めに料理に合わせて一つうつわを加えてみましょう!

令和時代では、多くの陶芸家や工芸家が活躍しています。たくさんのファッションブランドが有るのと同じ様に、シンプルなものから模様が入ったカラフルなもの、形や素材が個性的なものなど、お気に入りの洋服を探す様に色々なデザインの器が選べるのです。
日本中の焼物の産地には、江戸時代から今日まで受け継いでいる伝統的で多様な高い技術の蓄積がベースにあります。諸外国には無い日本の自由な陶芸デザインの基礎がここにあります。街に出ていろいろな食器を探してみるのも良いでしょう。きっとお気に入りの作家が見つかると思います。
でも、もしもお気に入りの器が見つからなかったら、思い切って魯山人の様に自分の好みにあった器を自分で作ってみましょう。画一的な工業製品が一巡し、人々が新たな価値観で行動しはじめている昨今、自らの手で粘土をこねて器を作るという陶芸が、世界中で大変ブームになっているのも頷けます。世界でたった一つ、自分で器を作る喜びと、それを自ら使う幸せ。自作の器で手料理を頂くという陶芸の楽しみ方はとても大きな価値があることだと思っています。

【私が影響を受けた本】

「原色陶器大辞典」加藤唐九郎著

この本は、加藤唐九郎が長年の陶磁器研究の集大成として1972年に発刊した陶芸家のバイブルとも言える辞典です。中には陶芸技法や陶芸の史実、鑑賞などあらゆる陶芸に関わるあらゆる分野について書かれています。例えば、最近贋作では無いかと陶芸界隈で話題になった天目茶碗について、ここでは日本に6碗存在しているが、そのうち4碗(国宝3碗含む)は名品で残り2碗はこれに劣る。と記載されています。果たして真偽のほどは如何に?

TEXT:教授   檀上尚亮

担当講義:  感じるうつわ学



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